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ハズレスキル【フライドチキン】で脳汁無双 〜追放された治癒師、揚げた鳥がうますぎて冒険者ギルドに囲われる〜  作者: あゆと


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《暁の牙》の六人目

「その前に、テオの条件を飲むのか答えてやれ」


 ギルドマスターに言われ、グレンさんが僕へ向き直った。


「もちろん飲むぞ!」


 グレンさんは、改めて手を差し出した。


「店を続ける準備が整うまで、長い遠征には連れていかん。保存技術にも、新しい店にも、俺たちが協力する」

「本当に、それでいいんですか?」

「自分の大事なものを捨てて来る奴など、仲間にしたくない!」


 グレンさんが力強く笑った。


「店主のまま来い、テオ。今日からお前は、《暁の牙》の六人目だ!」

「……はい!」


 今度こそ、その手を強く握った。


「歓迎するわ、テオ。一緒に遠征へ出る日が楽しみね」


 魔法使いの《眠り姫》ヴィオラさんが笑った。


「《暁の牙》に条件を出して入った奴は、お前が初めてだ」


 レンジャーの《天眼》レオンさんも手を差し出す。


「魔物は俺が押さえる。安心して料理しろ」


 盾騎士の《不落》ドーガさんに肩を叩かれ、体が大きく揺れた。


「怪我をしたら、すぐに私を呼んでくださいね」


 治癒術師の《白耀》セシルさんまで、僕を六人目として迎えてくれた。


「よろしくお願いします!」


 子どもの頃から憧れていた五人の中に、僕がいる。


「テオさん……おめでとうございます」


 コレットが僕の服をつかんだ。


「ありがとう、コレット」

「まだ……ちょっとだけ、複雑です」


 コレットは涙をこぼしながら笑った。


「でも、《暁の牙》の六人目なんて、本当にすごいです!」

「うん。僕もまだ信じられないよ」

「遠征に行く時は、ちゃんと先に教えてくださいね」

「もちろん」


「うちの店主が、《暁の牙》の六人目ですか!」


 リリカさんは僕と五人を交互に見た。


「一晩で、とんでもない店になりましたね!」

「僕は昨日までと同じですよ」

「同じなわけないでしょう! 今日から《暁の牙》の六人目が揚げるフライドチキンですよ!」


「帝王おおおおおお!」


 店の外から、突然叫び声が響いた。


 扉を開けると、大柄な冒険者たちが拳を突き上げていた。


「決まったぞ!」

「帝王テオが《暁の牙》の六人目だ!」

「帝王! 帝王! 帝王!」

「どうしてもう知ってるんですか!?」

「昨日、グレンが大声で勧誘してただろ!」

「朝からずっと返事を待ってたんだ!」

「開店前の店を囲まないでください!」


「テオおおおお!」


 今度は聞き慣れた声が飛んできた。


 ガイが人混みをかき分け、その後ろからセラ、ルッツ、フィオもやって来る。


「お前、本当に《暁の牙》に入ったのか!?」

「本当だよ」

「すげええええ! 俺の幼なじみがSランクパーティ入りだ!」

「ガイ、テオ本人より騒がないの」


 セラがガイの頭を叩いた。


「おめでとう、テオ」

「やったな」


 ルッツとフィオも笑っていた。


「ありがとう、みんな」


「……グレンさん」


 騒ぎの外から、低い声がした。


 冒険者たちが道を空ける。


 立っていたのは、Aランク冒険者、《影縫い》のロイドさんだった。


 その手には、大きく動く袋がある。


 クルルルルッ!


「金羽キジ!?」


「今朝、俺が捕獲を許可した」


 ギルドマスターが先に説明した。


「ロイドが、お前の加入祝いに一羽捕まえたいと言ってきてな」

「ロイドさんが……?」


 ロイドさんはグレンさんの前まで来ると、おずおずと袋を差し出した。


「《暁の牙》への加入祝いです。グレンさん、受け取ってください」

「ああ! 確かに受け取った!」


 グレンさんは袋を受け取り、僕の前へ持ってきた。


「最高の祝いだぞ、テオ!」

「ありがとうございます、ロイドさん!」

「……うまいのを食わせてくれ」

「はい!」


「祝い酒だああああ!」

「宴会だ!」

「フライドチキンを出せええええ!」


「まだ開店前です!」


 僕が冒険者たちを追い払おうとすると、リリカさんが肩をつかんだ。


「テオさん」

「今、帰ってもらって――」

「違います」


 リリカさんは、今日の営業用に仕込んだ麦羽鶏を指さした。


「通常営業は中止です。今日の仕込み、全部出します!」

「全部ですか!?」


 リリカさんが店の外へ向かって叫ぶ。


「本日は《暁の牙》加入記念! 帝王テオのフライドチキン祭りです!」

「リリカさんまで帝王って言わないでください!」


「うおおおおおお!」

「酒を持ってこい!」

「帝王! 帝王! 帝王!」


「朝から人の店の前で、何の騒ぎだい!」


 鋭い声に、冒険者たちが一斉に振り返った。


 マルタさんが人混みの向こうから歩いてくる。


「マルタさん!」

「テオが《暁の牙》に入った」


 ギルドマスターが答えると、マルタさんが目を丸くした。


「へえ。大したもんじゃないか」

「ありがとうございます!」

「祝いは構わないよ。ただし、店を壊した奴は叩き出すからね」

「聞いたか、お前たち!」


 ギルドマスターが叫ぶと、冒険者たちが慌ててうなずいた。


「よし! 今日の料理と酒は、全部俺が払う!」


 グレンさんが高らかに宣言した。


「本当ですね?」


 リリカさんが、すぐに詰め寄る。


「今の言葉、撤回できませんよ?」

「望むところだ! 六人目の歓迎宴だ! 好きなだけ出せ!」

「では、遠慮なく!」


「コレット、麦羽鶏は頼んだ」

「はい!」


 僕は金羽キジを受け取った。


 コレットが麦羽鶏を揚げ始める。


 ジュワアアアアアッ!


 フライドチキンが出来上がるたび、店の中と外から歓声が上がった。


 リリカさんが注文を取り、ガイたちが皿を運ぶ。


 《暁の牙》の五人まで加わり、宴会は店の前まで広がっていった。


 僕は金羽キジを仕上げる。


 とどめを刺し、血を抜き、羽を処理する。


 肉を切り分け、下味をつけ、衣をまとわせる。


 油へ入れた瞬間、香ばしい匂いが厨房いっぱいに広がった。


「テオさん、そっちはどうですか!?」

「もうすぐ!」


 最後の一つを油から上げる。


 金羽キジの極みを大皿へ盛ると、グレンさんたちが集まってきた。


 《暁の牙》の五人。ロイドさんとギルドマスター。


 ガイ、セラ、ルッツ、フィオ。


 リリカさんとコレット。それに、マルタさんもいる。


「マルタさんも食べてください」

「それじゃあ、遠慮なくもらうよ」


「テオさんも座ってください」

「でも、まだ店が――」

「今日はテオさんのお祝いです!」


 コレットに皿を渡された。


「リリカさんも、コレットも食べてください」

「もちろんです!」

「いただきます!」


 金羽キジの極みを全員で切り分ける。


 僕も、自分で揚げた一切れにかぶりついた。


 衣が鳴った。


 中から濃い肉汁があふれる。


「うまい……!」


「うっっっまいぞ、テオ!」


 グレンさんの声が店の外まで響いた。


「おいしいです!」


 コレットが目を輝かせる。


「これは、とんでもないですね……!」


 リリカさんも夢中でかぶりついていた。


「うめえ!」

「本当においしい……!」

「麦羽鶏とは全然違うな」

「もう一切れ食べたい!」


 ガイ、セラ、ルッツ、フィオも次々に声を上げる。


「……うまい」


 ロイドさんが、小さくうなずいた。


「捕まえた甲斐があった」


 マルタさんも一切れ食べ、僕を見た。


「こりゃ、客が押しかけるわけだよ」


 グレンさんが杯を掲げた。


「全員、酒を持て!」


 店の中と外で、冒険者たちが一斉に杯を上げる。


「《暁の牙》の六人目――帝王テオに乾杯!」


「乾杯!」

「帝王! 帝王! 帝王!」


「乾杯と帝王コールを混ぜないでください!!」

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