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ハズレスキル【フライドチキン】で脳汁無双 〜追放された治癒師、揚げた鳥がうますぎて冒険者ギルドに囲われる〜  作者: あゆと


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持ち込み

 《暁の牙》がこの町を拠点にしてから、三日後。


 午前の販売が終わった直後、ギルド通りの奥から声が飛んだ。


「道を空けろ! 鳥かごには近づくな!」


 ギルドマスターの後ろから、《暁の牙》の五人が歩いてきた。

 二人が運ぶ大きな鳥かごは、分厚い革で覆われている。それでも隙間から青い火花が漏れていた。


 ばちっ!


「捕ってきたぞ、テオ!」


 グレンさんが自信満々に笑う。


「雷鳴ホロホロ鳥を、本当に生け捕りにしたんですか!?」

「三日かかった! だが、傷はほとんどない!」


 店の前に残っていた冒険者たちが騒ぎ出した。


「三日で捕まえたのか!?」

「黒の塔の攻略者、おかしいだろ!」

「早く見せてくれ!」


 ガイが鳥かごへ近づこうとする。


「俺にも見せろ!」

「ガイ、下がって」


 セラが腕をつかんだ直後、鳥かごから火花が弾けた。


 ばちんっ!


「うおっ!」


 ガイは自分から三歩下がった。


「今のは危なかったな!」

「だから止めたの」


 ギルドマスターが鳥かごを指す。


「生け捕りと傷の確認は済んでる。ここで革を外すな。裏へ運ぶぞ!」


 僕たちはギルド裏の作業場へ移動した。


 鳥かごを地面へ下ろすと、《暁の牙》の女性魔法使いが革の上へ手を置いた。


「まだ眠っているわ。起こさなければ、しばらくは動かない」


 彼女は《眠り姫》と呼ばれる魔法使いだった。

 魔物を眠らせる力で、暴れる雷鳴ホロホロ鳥を傷つけずにここまで運んできたのだ。


 革を外す。


 雷鳴ホロホロ鳥は、かごの中で眠っていた。

 青黒い羽は動いていない。それでも黄色い首羽の間では、弱い火花が弾けている。


 ばちっ。


「眠っていても雷は止まらないのかよ」


 ギルドマスターが顔をしかめた。


「止まっている方よ。起きていた時は、近づくだけで足が動かなくなったわ」

「ガイ、もっと下がって」

「もう近づいてないだろ!」


 僕は眠っている雷鳴ホロホロ鳥を見た。

 目立った傷はない。羽も肉も、持ち込み素材としてかなりいい状態だった。


「テオ! 揚げられるか?」


 グレンさんに聞かれ、僕はうなずいた。


「やります。ただし、初めての鳥です。とどめから下処理、切り分け、試し揚げまで、全部僕にやらせてください」

「もちろんだ! そのために生かして持ってきた!」


 リリカさんが見物人へ向き直る。


「今日は試験です! 安全と味が分かるまで販売しません!」

「一口だけでも駄目か!?」

「駄目です!」

「誰が最初に食べるんだ!?」

「それもテオさんが決めます!」


 グレンさんがすぐに手を挙げた。


「俺が食う!」

「まだ決めてません!」

「捕まえたのは俺たちだぞ!」

「だから候補には入っています!」

「候補か!」


 グレンさんは笑っていた。

 命がけで捕まえた鳥なのに、食べる前から楽しそうだった。


 僕は短い刃物を持った。


「眠っている間に、とどめを刺します。かごを押さえてください」

「任せろ!」


 《暁の牙》の四人が、革手袋と固定具で鳥かごを押さえる。

 《眠り姫》は雷鳴ホロホロ鳥の頭へ手を向けたまま、眠りを保った。


 僕は首元へ刃を入れた。


 ばちんっ!


 腕に強いしびれが走った。

 それでも手を離さず、鳥の動きが止まるまで刃を押さえる。


「テオさん!」

「大丈夫です! 終わりました!」


 僕が手を離すと、リリカさんがすぐに腕を確認した。


「指、動きますか?」

「動きます。少ししびれるだけです」


 コレットが包丁と皿を用意する。


「道具、全部あります! 今回はテオさんが全部やるんですよね?」

「うん。初めてだから、条件を混ぜたくない」


 僕は自分で羽を処理し、肉を切り分けた。

 まず使うのは端の小さな肉だけ。残りは試し揚げの結果を見てから仕込む。


 塩を振り、いつもより少し厚い衣で覆う。

 眠っていても雷が残っていた。油へ直接火花が飛ばないようにするためだ。


 肉を油へ入れた。


 じゅわっ!


 すぐに、油の中から別の音が返ってくる。


 ばちっ!


「鳴ったぞ!?」

「油の中でも雷が出るのか!?」

「フライドチキンが怒ってる!」


 ガイが叫ぶ。


「怒ってないから!」


 セラに止められても、ガイは鍋から目を離さなかった。


 僕も油の泡を見続ける。

 火花は出ている。でも衣は剥がれていない。肉にも火は通っている。


 引き上げて、皿へ移した。


 ばちっ。


 揚げた後の肉から、青い火花が散った。


 見物人がまとめて下がる。

 グレンさんだけが、皿へ手を伸ばした。


「食っていいか!」

「まだです!」


 僕が止めると、グレンさんは皿の前で手を止めた。


「まだ待つのか!」

「口の中で雷が出るかもしれません!」

「それは困るな!」


 そう言いながら、グレンさんは一歩も下がらない。


 皿の上で、試し揚げがもう一度弾けた。


 ばちんっ!


「グレンさん、今のでまだ食べたいですか?」

「当たり前だ!」


 グレンさんは、青い火花を見て笑った。


「こんなにわくわくするのは、黒の塔以来だ!」

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