表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレスキル【フライドチキン】で脳汁無双 〜追放された治癒師、揚げた鳥がうますぎて冒険者ギルドに囲われる〜  作者: あゆと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/42

テオ・フライドチキン

 朝のギルド通りに、油の匂いはまだ出ていなかった。

 それなのに、店の前にはもう冒険者が並んでいた。


「看板出てるぞ!」

「読め! 誰か読め!」

「テオ・フライドチキン!」

「テオー!」

「テーオー!」

「テイオー!」


 誰かが拳を上げた。


「帝王だ!」


 僕は鍵を持ったまま笑ってしまった。

 昨日まで空き飯屋だった店の入口に、新しい看板がかかっている。


【テオ・フライドチキン】


 字を書いたのはリリカさんだ。僕が書こうとしたら、油の温度と揚げ時間のメモみたいになって、すぐ止められた。


「テオさん、開けますよ!」


 リリカさんが店の前に立ち、並んだ冒険者たちへ声を張った。


「今日は開店日です! 定番、特製、極みで注文してください!」


「極み!」

「極みは数が少ないです!」


「特製二つ!」

「順番に受けます!」


 店の奥から、マルタさんが顔を出した。


「朝から王様でも来たのかい」

「帝王だそうです!」

「あんたが言うんじゃないよ」


 そこへ、コレットが肉箱を抱えて走ってきた。


「テオさん! お肉、持ってきました! 父ちゃんが開店祝いで多めに入れてくれました!」

「助かる! コレット、定番と特製を分けて!」

「任せてください! 極み用は別皿にします!」


 コレットは調理場へ飛び込むと、作業台に肉箱を置いた。

 元飯屋だから、店の中には席がある。奥には調理場と作業台もある。


 広くはない。

 でも、屋台じゃない。


「定番、同じ大きさで切ります!」

「頼む!」

「特製は少し厚めですね!?」

「それでいこう!」


 コレットの包丁が、たん、たん、と鳴る。

 僕は油鍋の前に立った。火を入れる。油が熱を持つ。衣をつけた肉を落とす。


 じゅわあああっ!


 外から歓声が上がった。


「きたあああ!」

「開店の音だ!」

「テオー!」

「テーオー!」

「テイオー!」


 また誰かが叫んだ。


「帝王だ!」


 一瞬だけ、店の前が止まった。

 次の瞬間、冒険者たちが一斉に拳を上げる。


「帝王!」

「帝王!」

「フライドチキン帝王!」


 リリカさんが扉を開けた。


「テオ・フライドチキン、開店です!」


「帝王、開店だあああ!!」


 店の前が揺れた。


 最初に入ってきたのはガイだった。


「テオ! 開店一発目、俺に食わせろ!」

「ガイさん、夜明け前から並んでましたよね!?」

「当たり前だろ! この日を逃すかよ!」


 僕は揚がった定番を皿に乗せる。


「ガイさん、定番です!」

「待ってた!」


 ガイがかぶりついた。


 ばりっ!


「うっっっま!!」


 店の中が一気に熱くなった。


「店で食うと、やべぇぞ!」

「揚げる音を聞いてから食うからだ!」

「匂いで腹が殴られる!」


 リリカさんが笑いながら、ガイの席を指さした。


「喜ぶのは歓迎です! でも店を壊したら出禁です!」

「まだ壊してねぇ!」

「前科があります!」


 コレットが作業台から声を上げる。


「テオさん、次の特製、切れてます!」

「助かる! そのまま衣に入れる!」


 僕は油鍋の前から、次の皿を出した。


「定番、次もいけます!」

「出す!」


 じゅわっ!


 紙皿を抱えた冒険者が、店の外で叫んだ。


「帝王の定番、うめぇぞ!」


「テオです!」


 僕が返すと、外からすぐ声が返った。


「テオー!」

「テーオー!」

「テイオー!」


「帝王!」


 もう誰も止まらなかった。


「帝王!」

「帝王!」

「フライドチキン帝王!」


 リリカさんは笑いすぎて、少し赤くなった顔で振り返った。


「テオさん、もう直りません!」

「開店初日で負けた気がします!」

「負けてません! 売れてます!」


 皿はどんどん空になる。

 店の外には、まだ列がある。


「特製、次いけます!」

「出します!」


 僕は揚がった肉を引き上げる。

 ばりっとした衣。立ち上がる匂い。外から聞こえる、腹を空かせた声。


「帝王!」

「帝王!」

「フライドチキン帝王!」


 僕も笑って、次の肉を油へ入れた。


 じゅわあああっ!


 油の音に、客の声が重なる。


「帝王!」

「帝王!」

「フライドチキン帝王!」


 テオ・フライドチキンは、開店初日に、なぜか帝王の店になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ