表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレスキル【フライドチキン】で脳汁無双 〜追放された治癒師、揚げた鳥がうますぎて冒険者ギルドに囲われる〜  作者: あゆと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/28

店舗

「これ、捕まえるだけじゃなくて、育てて増やせませんか?」


僕がそう言うと、ギルドマスターは黙った。


外では、まだ冒険者たちが騒いでいる。


「金羽キジ、次は俺が見つける!」

「勝手に狩るなって言われただろ!」

「じゃあ報告すればいいんだな!?」

「報告したら食えるのか!?」


ギルドマスターが、低くうなった。


「うるせぇ……」


それから、僕を見た。


「テオ。育てるって、どうやってだ」

「え」

「鳥型魔物だぞ。餌も知らねぇ。逃げたら町が騒ぐ。世話するやつもいねぇ。場所もねぇ」


僕は返せなかった。


金羽キジはうまかった。

森から獲り続けたら、いつかいなくなる。

だから育てられたらと思った。


でも、どう育てるかまでは分かっていない。


ギルドマスターは、金羽キジの袋が置かれていた台を指した。


「考えは悪くねぇ。だが、順番が違う」

「順番」

「店を持て。金を作れ。人を増やせ。育てるのは、そのあとだ」


店。


その言葉に、リリカさんが先に反応した。


「お店、ですか?」


声が跳ねた。


「このフライドチキンの、お店ですか?」

「ああ」

「ギルドの中ではなくて?」

「違う。お前らの店だ」


リリカさんは、屋台の台を見た。

空になった紙皿を見た。

油鍋を見た。

それから、外でまだ騒いでいる冒険者たちを見た。


「テオさん」


リリカさんが、僕の袖を軽く引いた。


「お店です!扉があって、看板があって、お客さんが入ってくるお店です!」

「はい」

「メニュー札、作り直しです。定番と特製と極みも、ちゃんと出せます。雨の日も売れます。肉も、今より多く置けます」

「雨の日も……」

「はい。あと、ギルドの入口をふさがなくて済みます」


最後だけ、リリカさんはギルドマスターを見て言った。


ギルドマスターが鼻を鳴らす。


「そこだ」


ギルド前を見ると、依頼板の前に冒険者がたまっていた。

受付の前にも人がいる。

鳥を入れる袋を持った冒険者が、入口の横で待っている。

網を持ったやつまでいる。


ギルドマスターは、外を指した。


「テオ。屋台はもう無理だ」

「す、すみません」

「謝れって話じゃねぇ。ギルドの前でこれ以上やるなって話だ」


外から、また声が上がった。


「店出すのか!?」

「フライドチキンの店か!?」

「俺、一番に並ぶ!」


ギルドマスターが怒鳴った。


「まだ並ぶな! 店もねぇ!」


リリカさんは、すぐに看板の裏へ大きく書いた。


【今日の営業は終わりです】

【金羽キジは勝手に狩らない】

【お店はまだありません】


その看板を見た冒険者たちが、さらに騒いだ。


「まだってことは、できるんだな!?」

「いつだ!?」

「明日か!?」

「明日は無理です!」


リリカさんが即答した。


「まだ建物も決まっていません!」

「じゃあ早く決めろ!」

「あなたたちに言われなくても決めます!」


ギルドマスターが少し笑った。


「いい返事だ」


それから、僕たちに言った。


「ギルド通りの外れに、空いてる飯屋がある。前は冒険者相手に朝飯と酒を出してた店だ。今は閉まってる」

「ギルドの店ですか?」

「違う。持ち主は別だ。俺から声はかけられる」


リリカさんは迷わなかった。


「すぐ行きましょう」


僕も、油鍋を見てからうなずいた。


「ここで作れるか、確かめたいです」


外から声が飛ぶ。


「店できたら呼べよ!」

「一番に並ぶ!」

「席取っとく!」

「まだ席もありません!」


リリカさんが返すと、冒険者たちは笑いながら少しずつ散っていった。


僕は油鍋の火を落とした。


金羽キジを育てるのは、まだ先だ。

でも、店なら今から動ける。


店ができたら、もっとちゃんと作れる。

肉を切る場所も、皿を分ける場所も、揚げたものを出す場所もできる。


リリカさんは、看板を片付けながら、もう次のことを考えていた。


「店名、いりますね!」

「店名ですか?」

「はい。ずっと『フライドチキンあります』のままでは、看板が弱いです!」

「たしかに......」

「でも、分かりやすさは残したいですよね!」

「フライドチキンの店だと、分かった方がいいですよね」

「もちろんです」


リリカさんは少しだけ笑った。


「テオさんのお店ですから」


その言葉で、手が止まった。


僕の店。

僕とリリカさんの店。

フライドチキンを出す店。


まだ建物も決まっていないのに、早く肉を切りたくなった。

早く衣を作りたくなった。

早く、店の中でフライドチキンを揚げてみたくなった。


その日の夕方。


僕たちは、ギルド通りの外れにある空き飯屋の前に立っていた。


古い木の扉。

くすんだ看板。

閉まった窓。


でも、窓の奥には、広い調理場がある。

壁際には棚が残っている。

奥には水場もある。


リリカさんは窓に近づき、店の中をじっと見た。


「テオさん」

「はい」

「ここ、いけそうです。鍵、開けてもらいましょう」


僕も扉の前に立った。


定番。

特製。

極み。

金羽キジは、まだ特別な試験品。


ここで作れたら、屋台とは違う。


「ここで作れるか、確かめましょう」


リリカさんが、すぐにうなずいた。


「はい!」


その時、店の奥で何かが動いた。


ぎい、と床板が鳴った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ