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ハズレスキル【フライドチキン】で脳汁無双 〜追放された治癒師、揚げた鳥がうますぎて冒険者ギルドに囲われる〜  作者: あゆと


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18/20

三つの袋

ギルド前に、三つの袋が並んだ。


どの袋も動いている。

鳴き声も違う。


コケェェェェェッ!

ギャアッ、ギャアッ!

クルルルルッ!


冒険者たちは、袋ではなく僕を見ていた。


「テオ、次は俺だ!」

「生きてるぞ! ちゃんと生きてる!」

「優先試食権、あるよな!」


ギルドマスターが、手を一度だけ叩いた。


「袋をその場で開けるな。受付を通せ。成功者名、捕まえた場所、鳥型魔物の名前、傷の有無を書く。試験する袋だけ、順にギルド裏へ運ぶ」


リリカさんが受付机を借り、紙を広げた。


【生け捕り受付】

【成功者名】

【鳥型魔物名】

【状態確認】

【呼ばれるまで待機】


「弱って死んだら、優先試食権は消えます! 袋を叩かないでください!」


その一言で、冒険者たちの手が袋から離れた。


一羽目は、またツノコッコだった。


さっきと同じように、僕がとどめを刺し、下処理をして、衣をつけて揚げる。


じゅわっ。


二回目でも、結果は変わらなかった。

肉は硬い。

でも、衣の中から強い味が出る。


「麦羽鶏の極みと同じくらいです。味は、やっぱり別です」


ギルドマスターがうなずいた。


「二回続いた。ツノコッコは使えると見ていい」


成功者の冒険者が食べた瞬間、ギルド裏で叫んだ。


「うまっ! ツノコッコだよな、これ!? 俺、昨日こいつ焼いて後悔したんだけど!」


外で待つ冒険者たちが、声だけで騒ぎ出した。


二羽目は、鉄嘴ガラスだった。


黒い羽をした鳥型魔物で、くちばしが硬い。

肉は少なく、匂いも少し強い。


僕は同じ手順で処理し、衣をつけた。


油へ入れると、ツノコッコより鋭い匂いが立った。

うまそうではある。

でも、定番で並べる匂いではない。


確認用をかじる。


「……うまいです。でも、定番に出す味じゃないです。好きな人は好きです」


成功者の弓使いが食べた。


すぐには叫ばなかった。

ゆっくり噛んで、目を開く。


「濃い。これ、酒がほしい」


外から笑い声が上がった。


ギルドマスターは短く紙に書き込んだ。


「鉄嘴ガラスは試験品だな。列の先頭に出す味じゃねぇ」

「はい。でも、これはこれで食べたい人がいます」


リリカさんが別の紙に書いた。


【鳥型魔物試験】

【ツノコッコ 極み同等/別味】

【鉄嘴ガラス 癖強め/試験品】


そこで、三つ目の袋が大きく跳ねた。


クルルルルッ!


袋の口から、黄色い羽が少し出ている。

ツノコッコより大きい。

鉄嘴ガラスより、肉の張りがある。


その袋を持ってきた冒険者を見て、ギルド前の声が一段落ちた。


革鎧に大きな傷はない。

息も乱れていない。

ただ、袋の口を押さえる手だけが、まったく揺れていなかった。


誰かが、小さく言った。


「……影縫いのロイドだ」


冒険者たちが、袋と男を見比べた。


「Aランクじゃねぇか」

「ロイドが捕まえてきたのか」

「逃げる魔物を、傷つけずに止めるやつだろ」


ロイドは周りを見ずに、袋を受付台の前へ置いた。


「森の奥で捕まえた。金羽キジだ。傷はつけていない」


ギルドマスターの顔が変わった。


「お前が持ってきたなら本物だな。……おい、それは普通に高級素材だぞ」


冒険者たちがざわついた。


「金羽キジ!?」

「よく生け捕りにしたな」

「それ、焼いてもうまいやつだろ!」


僕は袋を見た。


肉質のいい鳥型魔物。

しかも生きている。


それを、Aランク冒険者が傷をつけずに捕まえてきた。


ツノコッコは、肉がよくないのに麦羽鶏の極みに並んだ。

鉄嘴ガラスは、癖が強いのに別のうまさが出た。


なら、肉質のいい鳥型魔物を、僕が全部やったらどうなるのか。


僕は、まだ何も言われていないのに、衣を置く場所を空けていた。


リリカさんが僕を見て、少し笑った。


「テオさん、揚げたい顔をしています」

「……揚げたいです」


ロイドが、初めて僕を見た。


「優先試食権はあるんだな」

「あります」


リリカさんが即答した。


「ただし、確認後です。成功者用の皿は分けます」


ロイドは短くうなずいた。


「それでいい」


ギルドマスターも笑った。


「よし。三羽目は慎重にやれ。今日の本命かもしれん」


外の冒険者たちが静かになる。


今度は、叫びが聞こえる前から、全員が待っていた。

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