叫び
「テオ! 生きてるぞ!」
ガイが大きな袋を抱えて、ギルド横へ走ってきた。
袋の中で鳥が暴れ、布越しに角の形が浮く。
コケェェェェェッ!
依頼板の前にいた冒険者たちが、一斉に振り向いた。
「生け捕りだ!」
ガイが袋を下ろそうとしたところで、ギルドマスターが前に出た。
「ここで開けるな。試験用だ。成功者のガイだけ裏へ来い。他は外で待て」
冒険者たちが不満を上げたが、リリカさんがすぐに列を止めた。
「成功者同席です! 結果は出せる範囲で発表します!」
僕は袋の中を確認した。
ツノコッコだ。
羽は乱れているけれど、大きな傷はない。
ガイは本当に、生きたまま捕まえてきた。
「できます」
ガイが笑った。
「よっしゃ、優先試食権!」
僕たちはギルド裏へ回った。
入口には職員が立ち、外の冒険者たちは中をのぞけない。
僕はツノコッコを台へ運び、すぐにとどめを刺した。
暴れたまま油の前へ持っていくわけにはいかない。
羽を処理し、部位を分ける。
肉は麦羽鶏より小さく、硬い。香りも弱い。
ツノコッコは、肉としてうまい鳥ではない。
リリカさんが紙皿を三つ並べた。
「テオさん確認用、成功者用、ギルド確認用です。大きさは同じです」
ギルドマスターが口を開きかけたが、リリカさんが先に言い切ったので黙った。
前にツノコッコを食べた時は、焼いただけだった。
今日は違う。
僕がとどめを刺し、下処理をして、衣をつけて、油で揚げる。
じゅわっ。
麦羽鶏の極みとは違う匂いが立った。
きれいな脂の香りではない。
でも、衣が色づくにつれて、肉の弱さを押し返すような強い香りが出てくる。
最初の一切れを揚げ、僕は端を切ってかじった。
熱い。
苦味はない。
しびれもない。
肉は硬い。
それなのに、衣の中から味が出てくる。
「……うまい」
僕はもう一口食べた。
「ツノコッコで、ここまで出るんだ」
作った本人なのに、手が次の部位へ伸びそうになった。
もっと確かめたい。
別の鳥型魔物でも試したい。
「食べられます。試験成功です」
リリカさんが、成功者用の皿をガイへ渡した。
ガイは自分が捕まえたツノコッコを見てから、一口かじった。
次の瞬間、ギルド裏から外へ声が木霊した。
「うめええええええええええっ!」
外で待っていた冒険者たちが、声だけで騒ぎ出した。
「今のガイだろ!?」
「食ったのか!?」
「叫びだけで分かるぞ!」
ガイは二口目を食べ、皿を見たまま言った。
「麦羽鶏の極みと同じくらいうめぇ。でも味が違う。肉は硬いのに、ちゃんと食いたくなる。ツノコッコなのに、うめぇ」
ギルドマスターも確認用を食べた。
少し噛んで、飲み込む。
「極み超えとは決めん。一回目だからな」
そう言って、僕の皿を見る。
「だが、肉の悪いツノコッコで麦羽鶏の極みに並ぶなら、魔物としての格は見る価値がある」
「もっと試したいです」
僕が言うと、ギルドマスターは短く笑った。
「いい顔だ。続けるぞ」
ギルドマスターは外へ戻った。
冒険者たちが詰め寄ろうとしたが、太い声ひとつで止まる。
「試験は成功だ。極み超えとは決めん。だが、ツノコッコで麦羽鶏の極みに並んだ」
一瞬、ギルド前が止まった。
すぐに、爆発した。
うおおおおおおおおおっ!
「ツノコッコで!?」
「肉まずい鳥だぞ!?」
「なら、もっといい鳥型魔物ならどうなるんだ!」
ギルドマスターが依頼板を指した。
「鳥型魔物の生け捕り依頼は続行だ。種類不問。成功者には優先試食権あり」
冒険者たちが受付へ走る。
網、袋、縄の話が一気に飛び交った。
その日の昼過ぎ。
ギルドの外から、また袋の暴れる音が聞こえた。
一つではなかった。
三つだった。




