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ハズレスキル【フライドチキン】で脳汁無双 〜追放された治癒師、揚げた鳥がうますぎて冒険者ギルドに囲われる〜  作者: あゆと


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16/23

依頼

翌朝、ギルドの依頼板の前に人だかりができていた。


僕とリリカさんがギルド横の屋台に着くと、冒険者たちは屋台の前ではなく、ギルドの壁沿いに寄っていた。

昨日、ギルドマスターに言われた通りだ。


ギルドの中から、太い声が飛ぶ。


「扉の前で止まるな! 依頼板を見るなら横へ流れろ!」


冒険者たちが、慌てて壁側へ詰めた。


リリカさんが看板を抱えたまま言う。


「ちゃんと並び方が変わってます……!」


依頼板の真ん中には、新しい紙が貼られていた。


【鳥型魔物 生け捕り依頼】

【種類不問】

【成功報酬あり】

【成功者には、試験用フライドチキン優先試食権あり】

【殺した場合は素材買い取りのみ】


僕は、その文字を見て足を止めた。


「もう出したんですか」

「朝一で出した」


ギルドマスターが、腕を組んで立っていた。


「金は出す。依頼だからな。ただし、高くはねぇ」

「高くないんですか?」

「高くしたら、金目当てのやつが増える。今回の本命は金じゃねぇ」


冒険者の一人が、依頼票を読み直した。


「優先試食権……?」

「成功したら、俺が捕まえた鳥型魔物を、テオがフライドチキンにするってことか?」

「しかも試験用ってことは、極みより上かもしれねぇやつだろ?」

「やべぇ」

「金じゃねぇ。肉だ」

「いや、肉じゃねぇ。参加券だ」


依頼票に伸びていた手が、いくつも止まった。


次の瞬間、依頼板の前から叫びが上がった。


うおおおおおおおおおっ!


「受ける!」

「俺が捕まえる!」

「種類不問だぞ!」

「極みの上が来るかもしれねぇ!」

「鳥型魔物、どこだああああ!」


「鳥型魔物の生け捕り依頼です!」


リリカさんが、すぐに声を張った。


「試験用フライドチキンは、成功者の優先権です! 今日は一般販売ではありません!」


「じゃあ売らないのかよ!」

「安全と味を確認してからです!」


リリカさんは、看板の裏に書き込んだ。


【試験用】

【成功者優先】

【一般販売なし】


ギルドマスターが依頼板の前に立った。


「聞け。優先試食権は、生け捕り成功者だけだ。殺したら素材買い取りだけ。逃がしたら報酬なし。それだけだ」


冒険者たちは、もう依頼票に手を伸ばしていた。


「網を借りろ!」

「袋もいるぞ!」

「餌は何がいいんだ!」

「麦か!」

「肉じゃねぇだろ、鳥だぞ!」

「魔物だぞ!」

「じゃあ何食うんだよ!」


その時、列の後ろから大きな声がした。


「テオ!」


ガイだった。


昨日より目が本気だった。

腰の剣を軽く叩きながら、依頼板の前へ来る。


「鳥型なら何でもいいんだな」

「生け捕りだぞ、ガイ」

「分かってる。倒さねぇ。捕まえる」


ガイは依頼票を見て、にっと笑った。


「極みより上かもしれねぇんだろ?」

「まだ分からない」

「分からないなら、試すしかねぇな!」


周りの冒険者たちがうなずいた。


「そうだ!」

「試すしかねぇ!」

「俺たちは検証に協力する!」

「食いたいだけだろ!」

「食いたいから協力するんだよ!」


ギルドマスターが手を叩いた。


「受けるやつは受付へ行け! 網と袋を忘れるな! 殺したら優先試食権はなしだ!」


「分かってる!」

「生け捕りだ!」

「鳥型魔物を生かして持ってこい!」


冒険者たちが、受付へ走った。


網を借りる者。

袋を買いに出る者。

鳥型魔物の出る場所を聞く者。


ガイも依頼票を受け取り、僕の方へ振った。


「待ってろよ、テオ! 生きたまま持ってくる!」

「無理はするなよ」

「しねぇよ! 食う前に倒れたら意味ねぇからな!」


ギルドマスターが、ガイの背中に声を飛ばした。


「依頼のために捕まえるんだぞ!」

「分かってる! 食うためだろ!」

「依頼のためだ!」


冒険者たちは笑いながら、ギルドを出ていった。


今日の通常販売は、少し遅らせることにした。

肉屋から麦羽鶏が届くまでに、試験用の準備をしておく必要がある。


僕は油鍋の位置を直した。


鳥型魔物を、今の手順で揚げたらどうなるのか。

麦羽鶏の極みより上なのか。

ただ違う味になるだけなのか。


まだ分からない。


でも、今日は僕一人で考えているわけではなかった。


昼前。


ギルドの外から、変な鳴き声が聞こえた。


「コケェェェェェッ!」


冒険者たちが一斉に振り向いた。


道の向こうから、ガイが走ってくる。

両腕で大きな袋を抱えていた。

袋の中で、何かが暴れている。


「テオ!」


ガイが叫んだ。


「生きてるぞ!」

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