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ハズレスキル【フライドチキン】で脳汁無双 〜追放された治癒師、揚げた鳥がうますぎて冒険者ギルドに囲われる〜  作者: あゆと


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ギルドマスター

「お前ら……ギルドの横で何を騒いでんだ!」


ギルドの扉から、大柄な男が出てきた。

肩幅も腕も首も太い。

昔は戦士だったと分かる体つきだった。


リリカさんが背筋を伸ばす。


「ギルドマスター!」

「リリカ! お前、受付を辞めたと思ったら何をやってる!」

「フライドチキン屋台です!」

「それは見れば分かる!」


ギルドマスターは、屋台の前に残った冒険者たちを見た。


ギルドの扉の前まで人がいる。

依頼板を見る冒険者も、受付へ入ろうとした商人も、屋台の前で止まっていた。


「お前ら、食い終わったなら通路を開けろ! 依頼板の前で止まるな!」

「す、すみません!」

「いや、でも、まだ匂いが……」

「匂いで立ち止まるな!」


ギルドマスターの声で、冒険者たちが少しずつ壁側へ寄った。


「リリカ。ギルドの横で商売をするなら、列を扉の前に伸ばすな」

「すみません! 明日から列を壁沿いに流します!」


リリカさんは、すぐ看板の裏へ書いた。


【列は壁沿い】

【依頼板の前で止まらない】


ギルドマスターは、油鍋へ鼻を向けた。

火は落としている。

それでも、揚げたての匂いは残っていた。


「だいたい、この匂いはなんだ!」

「フライドチキンの匂いです!」

「それも見れば分かる!」


ギルドマスターは、僕を見た。


「お前がテオか」

「はい」

「ギルドの横で、これだけ冒険者を集めておいて、俺に一つも持ってこないとはどういうことだ!」

「そ、それは申し訳ありませんでした」

「……ったく。パーティから抜けたって話は聞いてたが、元気にしてるようだな」

「ギルドマスター……」


ギルドマスターは、空の肉皿と看板を見た。


【定番フライドチキン】

【特製フライドチキン】

【極みフライドチキン】


「にしても、すげぇ売れてるようだな!」

「はい! 全部売れました!」

「俺が食えてねぇぞ!」

「……僕の賄い分ならあります」


僕は、屋台の奥に寄せていた紙包みを取った。

売り物から外していた、自分用の一切れだ。


ギルドマスターは、にやりと笑った。


「騒ぎの原因を確認するのに必要だ。寄越せ」


真面目な声だった。

でも、目は紙包みから動いていなかった。


僕は紙皿に一切れのせて渡した。


「極みです。熱は少し落ちています」

「構わん」


ギルドマスターは、指でつまんで口に入れた。

すぐには飲み込まない。


一回噛む。

もう一回噛む。


「うううううまああああいぞ! なんだこれ! まじか! お前ら、なんで俺に報告しねえええ!」


ギルドマスターは、周りの冒険者たちをにらんだ。


さっき極みを食べた盾役が、大きくうなずいた。


「ですよね! もう最高なんですよ! ここのフライドチキン!」

「ほんとほんと! もうこれ無しでは考えられねーよ!」

「ほかのフライドチキンじゃ物足りないよな!」


「だからってギルドの前をふさぐな!」

「はい!」


冒険者たちは返事をしながら、また壁側へ寄った。

リリカさんが看板裏の文字を指で押さえる。


「明日から、ここに並んでもらいます!」


ギルドマスターは、僕に紙皿を返した。


「祝福スキル【フライドチキン】。効果不明。戦闘効果、未確認か……」


それは、祝福授与の記録そのままだった。


ギルドマスターは、まだ看板の前に残っている冒険者たちを見た。

それから、空の肉皿を見た。


「記録だけ見れば、前代未聞のスキルだ」


ギルドマスターは、僕を見た。


「だが、効果不明の祝福に、冒険者は開店前から並ばん」


僕は、手元の油鍋を見た。

今日の分は売り切れた。

賄い分まで、今なくなった。


「前代未聞のスキル。いいじゃねぇか!」


ギルドマスターは、ギルドの扉を開けた。


「テオ、詳しく聞かせろ」

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