表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレスキル【フライドチキン】で脳汁無双 〜追放された治癒師、揚げた鳥がうますぎて冒険者ギルドに囲われる〜  作者: あゆと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/18

お、メニュー増えてる

 ギルド横の屋台には、開店前から人が並んでいた。


 油鍋には、まだ火を入れていない。

 それなのに、列の前の冒険者たちは、看板を見ながら財布を出していた。


─── メニュー ───

【定番フライドチキン】

【特製フライドチキン】

【極みフライドチキン】


「お、メニュー増えてる」


 列の先頭にいた盾役の冒険者が言った。


 昨日、二個目を買えなかった人だ。

 今日は開店前から来ている。


「極みってなんだ」

「なんでもいいから、早くしてくれ!」

「まだ揚げねぇのか。待ちきれねぇ!」


 リリカさんが、看板の前に立った。


「定番は買いやすい一個です! 特製は今日のおすすめです! 極みは数が少ないので、お一人様一個までです! 全部合わせて、お一人様二個までです!」


 列の前の方で、財布を握り直す人が増えた。


 極みと特製。

 極みと定番。

 特製と定番。

 定番を二個。


 客たちは看板を見ながら、先に組み合わせを決め始めた。


 肉屋の主人の分は、リリカさんが先に一つ紙包みにして、売り皿から外していた。


 コレットは、油鍋の横で麦羽鶏を部位ごとに分けている。


「定番の分、こっちです! 薄いところを先に分けました!」

「助かります!」

「特製は厚みがあります。こっちは後で揚げた方がいいです」

「分かりました!」


 昨日まで、僕は肉皿と油鍋を何度も往復していた。


 今日は違う。


 リリカさんが注文を聞く。

 コレットが肉を切る。

 僕は油の前から動かない。


「開店します!」


 リリカさんの声で、列が前へ詰まった。


「極みと特製!」

「定番二つ!」

「特製と定番!」

「極みと定番!」


 最初から、二個ずつの注文が続いた。


 コレットが肉皿を出す。


「極み、こっちです! 特製は次です!」


 僕は極み用の肉に衣をつけて、油へ入れた。


 じゅわっ。


 列の前の冒険者たちが、油鍋を見た。


「今の、極みか!」

「音だけで腹が鳴るぜぇ!」

「昨日のあれだ……脳汁が出るやつだ……ハァ、早く揚げてくれ」


 最初の極みが揚がる。


 紙皿にのせると、盾役の冒険者が両手で受け取った。


「熱いので気をつけてください!」

「あぁ、わかってるよ! なんていい匂いだ! 並んだ甲斐があるぜ!」


 盾役の冒険者は一口かじった。


 すぐに、残りの肉を見る。


「……うっめええええ!!」


 そのまま二口目を食べた。


 列の後ろから声が飛ぶ。


「どうなんだ!」

「先に買え! 極みからだ!」


 その一言で、極みの残りが一気に減った。


「極みと特製!」

「極みと定番!」

「極みをくれ! 頼む!」


 リリカさんがすぐに手を上げた。


「極みはお一人様一個までです! 全部合わせて二個までです!」


 僕は次の肉を油へ入れた。


 じゅわっ。


 特製の肉は、油の中でゆっくり色が変わる。

 定番の肉は、その横で先に揚がる。


「定番、揚がります」

「定番二つ、こちらです!」


 リリカさんが紙皿を渡す。


 定番を買った冒険者が、その場でかじった。


「定番もうまいぞ!」


 特製を食べた冒険者は、口を拭く前にもう一度財布を出した。


「特製、もう一つ! 頼む! 早くくれ!」

「二個目ですね! 今日はここまでです!」


 三個目を頼む客もいた。

 リリカさんは、全部断った。


「今日はお一人様二個までです! 明日お願いします!」


 それでも、列は短くならなかった。


 僕は手を止めなかった。


 定番の肉。

 特製の肉。

 極みの肉。


 皿が分かれている。

 大きさもそろっている。

 次に揚げる肉がすぐ分かる。


 コレットが入っただけで、油鍋の前が止まらない。


 極みはすぐになくなった。


「極み、完売です!」


 残った客は、すぐに特製と定番を選び直した。


「じゃあ特製と定番」

「定番二つ」

「特製を二つ」


 極みがなくなっても、人は減らなかった。


 少し遅れて、特製もなくなった。


「特製、完売です!」


 残った客が、すぐ定番に流れた。


 定番は数を出すために用意した。

 それでも、最後の皿まで早かった。


 最後の定番フライドチキンを紙皿にのせる。


 リリカさんが受け取り、最後の客へ渡した。


「定番、完売です!」


 通りが騒がしくなった。


「もうないのかよ!」

「くそぉ! まだ食べてぇよぉ!」

「倍出す! 俺にも極みをくれ!」

「極みそんなにやべーのか?」

「極みも特製も定番も全部やべーよ! 今までのフライドチキンはなんだったんだ!?」


 客たちは、まだ看板の前に残っている。


─── メニュー ───

【定番フライドチキン】

【特製フライドチキン】

【極みフライドチキン】


 全部売り切れた。


 コレットが、空の肉皿を抱えていた。


「テオさん! 私、どうでしたか!?」


「はい。かなり助かりました。ありがとうございます」

「ほんとですか!?」


 コレットが、ぱっと顔を上げる。


「はい。コレットさんがいなかったら、途中で止まっていました」

「今日、屋台が止まらなかったのはコレットさんのおかげです!」


 リリカさんも言った。


 コレットは空の肉皿をぎゅっと抱え直した。


「……嬉しい」

「明日もお願いしますね」

「はい! 明日はもっと切ります!」


 リリカさんが売上袋を持ち上げた。


「昨日より、ずっと売れました! 明日は麦羽鶏をもっと買えます!」


 その時、太い声がギルド横に響いた。


「お前ら……ギルドの横で何を騒いでんだ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ