作戦会議
「三日連続完売です!」
リリカさんは、昼食のパンを片手に言い切った。
ギルド横の出店には、もうフライドチキンは一切れも残っていない。油鍋の火は落ち、空の器は伏せてあり、台の下には売上袋が置いてある。
初日は売れた。二日目は仕込みを増やした。三日目の今日は、さらに増やした。
それでも、昼まで持たなかった。
「偶然ではありません。売れています。かなりです」
リリカさんが売上袋を指で叩くと、ちゃり、と硬貨が鳴った。
僕は袋を持ち上げた。重い。依頼の報酬とは違う。僕が揚げたフライドチキンと引き換えに、冒険者たちが一人ずつ置いていったお金だ。
かなり浮かれた。
「売上、すごいです」
「すごいです。ですが、問題があります」
リリカさんは空の器を指さした。
「私たちのフライドチキンがありません」
「三日連続で完売しましたからね」
「共同経営者として、味の確認ができません!」
共同経営者。
リリカさんはそう言い切って、すぐ作戦会議に入った。
「法則は二つです」
【鳥の格】
【テオさんの関与】
「鳥が良ければ、味の土台は強くなります。でも今回は、鳥の格を固定します」
【麦羽鶏】
麦羽鶏は、この町で一番よく食べられている普通の鳥だ。高級ではない。珍しくもない。肉屋に行けば、たいてい並んでいる。
三日間、僕たちが売ったのは、その麦羽鶏のフライドチキンだった。
「全部、麦羽鶏です」
「普通鳥でそろえるんですね」
「はい。だから、動かすのはテオさんの関与だけです」
【全部】
【下処理まで】
【とどめだけ】
「商品は、この三つです」
【極みフライドチキン】
全部テオさん。
とどめ、下処理、塩、衣、油、揚げまで全部。
数量限定。高め。
【特製フライドチキン】
下処理までテオさん。
調理は料理人。
主力。
【定番フライドチキン】
とどめだけテオさん。
下処理も調理も料理人。
数を出す入口商品。
「極みは、一番強いです。でも、数が出ません」
「僕が全部やりますからね」
「だから高めです。安くしたら、テオさんが倒れます」
「特製は、一番売ります。味も強い。数も増やせる。お客さんも満足します」
「主力ですね」
「定番は、買いやすくします。初めての人がまず食べる用です」
「十分、美味しいですもんね」
「値段は、定番を少し買いやすく。特製は今までと同じか少し上。極みは高くします」
「売れますか」
「売れます!三日間、見ました」
受付嬢として冒険者を見てきた目と、三日間フライドチキンを売った目が、同じ方向を向いていた。
「三種類にすると、必要なものも決まります」
【麦羽鶏】
【料理人】
「麦羽鶏は、もっと必要です。三種類分を仕込むなら、今までの数では足りません」
「はい」
「それと、料理人です。会計、列の整理、注文、看板、売れ方を見るのは私がやります。共同経営者ですから。でも、調理の手は足りません」
ただの手伝いではない。
下処理を雑にしない人。衣を任せられる人。油を見られる人。僕が関わった麦羽鶏を、ちゃんとフライドチキンにできる人。
「料理ができる人ですね」
「はい。料理人です」
リリカさんは残りのパンを口に入れ、立ち上がった。
「次は、手伝ってくれる料理人を探しましょう!」




