決戦前夜
金曜日の夜、クレンは退魔師の道具を蔵からだした。退魔札やら、式神、使えるかわからないいくつかの道具、それでもないよりはましだ。風呂に入り、眠ろうとした瞬間、非通知で着信があった、なぜだか予感がして電話にでる。
「はい」
「俺だ、ダレスだ」
「……誰だっけ」
「お前に助けてもらった奴だよ、覚えてないか?」
「……冗談だ、どうして俺の電話番号を?」
「すまない、控えておいたんだ」
「で、何の用だ?」
あって話そうといわれたので、しぶしぶクレンは呼ばれた場所に向かうことにした。疑っていないわけではないが、彼は以前の件でこりたしお礼がしたいだけだというので、近くのファミレスで待ち合わせをすることにした。
「やあ、こっちだ」
ファミレス前で手を振られたが一瞬誰だかわからなかった。なにせ坊主頭になっていたからだ。
「あんた……変わったな」
「いや、どうかな」
クレンがなぜ違和感をもったか気づくと、恥ずかしそうに頭をかきながらダレスは下をむいて鼻をかいた。
ファミレスに入り、コーヒーやら小さめのパンケーキだのを頼んで、クレンは相手の出方をうかがった。しかし彼は水をすするとすぐさま本題をもちかけてきた。
「やつらの拠点に興味はないか?」
「なんだって?」
「やつらさ、お前が今おっている姉妹の」
「……」
詳しく話をきくと、どうやらこの男はとクレンの追っている女とは同じ“カルマテイカー”組織の仲間だが、違う派閥で動いているらしい。近頃内部闘争が激しく、そのどさくさに紛れてこの男は、クレンをつけ狙う彼らの拠点の情報を手に入れたといっていた。
「といってもな、どうやってお前を信用すればいいんだか」
「じゃあ、この手紙をみてみな」
そういうと男はある紙をてわたしてきた。粗雑にたたまれた紙で、単なるメモ用紙だった。その紙をうけとると、なぜかそれを開く前から、クレンはなにかなつかしさを感じていた。
《パリパリ》
紙をめくる。すると、徐々にクレンの予想は確信にかわっていく。この筆跡、そして、何よりも感じられるこの気。やさしい、草原で感じる風のようなさわやかな気。今でもそれは変わりなかった。
「……兄さん」
「俺の上司はお前の兄だ、お前を襲ったのだって、ただお前の今の状態を確認するためだ、初めから傷つけるつもりはなかったんだ」
クレンは、しばらくメモをみつめていたが、やがて決意したようにたちあがり、メモをくしゃくしゃにして、男にいった。
「案内しろ」




