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クレンの夜

 そしてクレンはその夜夢をみた、大会の夢だったり、卒業後トウマとあって何度か遊んだことだったり。深く長い夢だった。そしてその夢のなかで、クレンはヒーローの証を、トウマから渡される、それは長いマントだった。だがそれを受取ろうとしたとき、問題が起こった。誰かの、聞き覚えのある誰かの声が響いた。そしてクレンはその時、明るいと思っていた周囲が全体的に真っ暗闇だったことに気づいた。

“この夢は、一体……”

 ふと顔を向き直すと、トウマはカラスになり、飛び去っていった。そしてケタケタとどこかから笑い声がする、正面奥に、薄汚れた廃墟がみえたのだ。そこから声放っていた。そこへ近づいていこうとすると、またも声はきこえた。今度ははっきりと、何を言っているかが分かった。

“ヒーローをぞんざいに扱い奴隷のように思う奴はくるっている”

 そして、クレンはその話を思い出した相手と、その相手の声が今聞こえているその声だったという事に思い至る。彼は、セイヤだ。

「はっ」

 目を覚ます。7時半、ギリギリ遅刻するかしないかコースだ。食事をしている暇はなかった。

「父さん、何で起こしてくれなかったの!!」

だが生善は、あたまをかいていった

「いやあ、みてわからない?俺も今おきたところさ」

 たしかに生善は寝間着のままインスタントの味噌汁を吸っていたのだった。


 それからの日々は、たったの一週間だったが充実したものに思えた。たしかにカノンとの関係はぎくしゃくしていたし、父親に対して怒りもわいたし、だがクレンには、ゆるぎない記憶を思い出す機会があった。だから、明らかに、セイヤが取りつかれているらしいことがわかっても、相手が霊力を隠すことができる存在だとしっても、別に恐怖や不安はなかった。それよりも自分の中でしっかりと、敵に対する心構えができていた。退魔師に戻るかどうかは、考えあぐねていた。というより、ぶっつけ本番、という感じだった。クレンはカノンにあれだけ怒られ、注意されたにもかかわらず、結局いまだ、自分ひとりで解決するつもりでいた。もちろん、相棒もいないことはなかったが、それはこの世のものではなかった。

「来週の土日、よろしくな、クノハ」

「ええ、クレンさま」

 クノハは、その数日であの日みかけた女性の素性を、あの骨董品屋でこっそり情報を盗んでいたのだった。そして、来週どうやらまたあの骨董品屋に現れるということで、二人は襲撃を仕掛けることにした。もちろん、その女性が目的ではない。あの悪霊とその背後にいるものへ。




 

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