連絡。
そして現在、それらの事を思い出し、うとうととしていたクレンだったが、やがて通知音で目が覚める。何の通知かぼんやりとした頭ではすぐに思い出せなかったが、チャットツールの通知音だ。ベッドに横たわっていた体を起こし、すぐにスマホを手に握る。画面をみて通知をおってチャットツールを開くと、トウマからだった。その文字に涙がでた。
「大丈夫か」
とだけ書かれていた。それでもクレンは何事もないようにふるまおうとして言葉を打ち返す。
「大丈夫だけど、何の話?」
話を聞いていくとどうやら、クレンの家が男に襲撃され、立てこもり、生善が人質になった事件を聞き、連絡使用しようと思っていたが自分も忙しくようやく今日連絡が出来たという事だった。クレンは少し正直な想いを吐露した。
「偶然、なんとかなったよ、でも最近立て続けに問題がおきてて少し疲れたね」
「大丈夫か、あまり無理するなよ」
少し間をおいてもう一通通知がくる。
「受験の時はお前に助けられたよ」
「ああ、いやいや、それも偶然だし」
「いや、お前はヒーローだった、お前に入ったが、お前が隠れてヒーローみたいな事をやっていたのをまねて、あの時お前をかばったんだ、ただ、お前は、そういう性質だからかもしれないが、人に自分の想いを隠してがんばりすぎるから」
クレンは、その言葉に自然と涙がでるのを感じて、誰も見ていないのに目を覆った。それからすこし雑談をしたあと、目を閉じた。
クレンはその日夢を見た。肉体の弱さを克服しようとはじめた柔道で高校一年の全国大会、クレンは優勝した。人を助けようとしたのではなく、善意ではなく、弱さの克服のためだった。それも、ほとんどそうした賞や優勝などに興味ないクレンがそのために頑張ったのはわけがあった。
「これで約束通り、めげずにがんばってくれるよな」
「ああ、ありがとうクレン」
チャットツールでのトウマとのやり取りは今でも残してある。将来医者になるために難関校に挑んだトウマは、留年、失敗していた。丁度その頃、もうだめかもしれない、留年を苦に、死のうとしたのだという。だがクレンが優勝したという話を友人から聞き、約束を思い出したのだ。
《俺が優勝したら、めげずに頑張ってくれ》
ほとんどクレンの一方的な約束だったが、元気をださせるためにクレンが仕掛けたことだった。トウマがふさぎ込んでいることは、クレンは人づてに聞いていたのだ。
だがクレンは、その戦いに別の意味を見出していた。自分の信念がかつて肉体的に敗北をきし、悪い上級生に歯向かえなかった。今、柔道という武器を手に、どうありたいかを考えた時、うかんできた考えが、他者や敵に害を与えるのではなく、偽りない自分がどうなりたいか。これは、かつて《ヒーロー》とよばれたクレンが、退魔師だったクレンが心がけていたことだった。




