想像
「……何か、何か……」
「おい、お前大丈夫かよ……」
「いや、俺やっぱ、クノハちゃんをみたんじゃ……」
「おいおい、何をいいだすんだよ」
クレンはセイヤの背後に両手を広げてジェスチャーをする。見えないものを見たときに、周囲から奇異の目で見られたこともあるし、それで自分や人に害を与えないためにも普段の動きで奇妙ではない行動を心得、意図した相手とだけコミュニケーションをとる術だ。クノハはクレンの意図をくみとり、首を横に振りいった。
「私じゃない」
「なあ、セイヤ、いま何か聞こえたか?」
「ん?いや、何もいってないけど」
「……」
やはり、セイヤにクノハを検知できる霊的な能力を手に入れた感じはしない。ということは……そう、あの時セイヤが乗っ取られたときも学校で、霊をみてといっていた。それ以前に学校でクノハをみて、ということは、学校にそうした悪霊がでている可能性がある。しかし、クレンに検知できないという事は?確かにクレンの霊的能力は、半径2メートルくらいしか霊的反応を検知できない。だがこの学校にはクノハもいる。クノハもクレンの目もさけ、かつその霊力を封印したまま、力を使える悪霊とは……そんな悪霊はクレンは出会った事がなかった。
「なあ、お前一度除霊したほうがいいんじゃないか?俺がやってやろう、いまはわからないけど、ただ、見えない形で何か霊体に異常があるかもしれない、本格的な検知と除霊の儀式があるんだ、試してみないか?」
「ッ……」
セイヤが頭をかかえた。
「どうした?」
「いや?なんでもない」
不気味なほどに無表情になり、今度はセイヤがクレンを責め始める。
「クレン、お前もう無茶しないほうがいいぞ」
「?」
「あの時の悪霊も、この前のおやじさんが襲われた時も、警察をまっとけばよかったし、もし襲われたって最悪の場合いう通りにすればいいんだから」
「??……お前、乗っ取られている?正気か?」
セイヤからは、霊的におかしなものは検知できない。
「やっぱり緻密なお祓いをうけたほうがいい……」
「お前、親父さんの事怒ってるんだろ、お前にはいつも甘かったから、兄さんと違って」
「……そんなことお前に言われる筋合いないだろ!!」
「おい、クレン、何むきになってんだよ……」
クレンは自分が意図せず立ち上がり、右手を大きく振って、叫んでいたことに気づく。周囲のクラスメイトの視線はすべて自分に注がれていた。教師がクレンにむけていった。
「おい、クレンおちつけ、どうした?」
「なんでも……ありません」
クレンは頭に冷静さをとりもどした。兄の事をいわれて、セイヤの状態に不安があるのを理解しながらも、そしてセイヤの口ぶり、いつものセイヤのものではない。正気なら唯一、クレンの事を味方してくれ、相談しやすい存在である親友だ。クレンは周囲を見渡す。きっと誰かが、クレンに何か悪意をもって……。
そのときクラスメイトの委員長だけがこちらをむいて、手を振っていた。そうだ、委員長、彼女に聞かなければいけない事がある。




