兄とクレン
「あの時?」
セイヤは恐る恐るカノンに尋ねる。
「レンちゃんが、自分のお兄さんに恨まれたときね」
「……それはあまり聞いたことないな」
セイヤがそういうと、カノンは少しほっとしたような顔をした。そこでやっと自分の怒りが嫉妬まじりなものでもあったことを認めることができ、胸に手をあてなでおろした。セイヤにも話してない事があるのだ、別に自分がないがしろにされているわけではないのかも知れないと。
「以前からクレンの補佐をする仕事をたまにしていた彼の兄デゲスは、彼の仕事の邪魔をしたり、わざと退魔の力でクレンちゃんを攻撃しはじめたの、最初は冗談だと思っていたし、冗談ですまされていたみたい、けれど、これもレンちゃんから聞いた話だけど、次第に上層部や、退魔師協会全体が見過ごせなくなってきて、それでも、クレンちゃんは彼をかばった、実の兄だし自分の事はなんとかするって、けれど、それはどんどんひどくなっていき、彼の全てに文句をいったり、揚げ足をとったり邪魔したりし続けるようになった、クレンちゃんは精神的においつめられていったわ、結局彼の兄デゲスの失踪という形でその事件は幕を閉じるのだけど」
「そんなことが、退魔の面についてもう少し説明してもいい?」
「いいよ」
「退魔の面も、彼らの仕事に不可欠なもので、一族に継がれるものらしいんだけど、一族の優れたものが引き継ぎ、どうやら、その人が引退または死去して使わなくなり、他に引き継ぐものがいない場合は処分されるものらしい、クレンが引き継いでいた面は、一族代々伝わる面の一つで、生善さんは実は自分の代でつくった面を別にもっていたから、クレンの使っていた面はクレンと相談して処分するはずだったそうだ」
「それが残っていて、生善さんも黙っていたってことなのね」
すべてを見透かしたうえで、いつもと違うとげとげとした鋭い口調に、セイヤはたじろぎながらクレンやその父をフォローしようとする。
「そ、そうなるね、そりゃそういう事もあるさ、だって大事なものなんだろう?処分を拒んだ理由だって……別にクレンを裏切ったわけでは……」
「そうでしょうね、そして、レンちゃんはそれを知った上で悩んでいるんだわ、また一人で、でもどうしてその面がそんな強力な力をもっているの?」
「まあ、クレンの受け継いだ面は面の中でも得に協力な法力を持っているみたいでね、それが魔のものをひきつけるとか」
「ふうん、レンちゃんはそれをとめたんだ」
カノンは不服そうに、足をかかえて座りひざに口をうずめた。




