冷徹、決戦の備え
あるホテルの一室にいる女の影、電話がある。電話をとる女。カーテンを開ける。委員長のシノメだった。
「はい」
「私だ……デゲスだ」
「!!」
「デゲス様!!」
「ずいぶん大っぴらに俺の弟と戦っているじゃないか」
「は、はい、すみません、ただ予定より早く狙われたようで、姉が追跡されていたので少々、痛めつける程度に……」
「痛め付けるだって???」
冷ややかな、人をあざ笑うかのような半笑いの口調に、シノメは背筋が寒く成る想いがした。
「は、それが貴方様の命令だったかと」
「俺は……目立たない場所で、奴と決闘をしろ、といったんだ、お前たちは今どんな状況だ?コンビニの人だかりができているところで、悪霊をつかって目立って奴を打ちのめせといったか?お前の耳はどうなってる?それとも頭か?」
「……すみません」
「まあいい、お前はどうせ捨て駒だ、弟には勝てん」
「!!!」
冷たく言い放たれた言葉に、シノメは、驚いて目を丸め、頭に血が上るのをかんじた。だが唇をかんで、逆上する頭を冷静にたもった。
「いますぐひけ、お前の準備とやらができたら、静かな場所で戦え」
「しかし、もし追いかけてきたら」
「勘違いしているようだな?これはお前の失敗だ、1から10までな、自分でなんとかしろ、チャンスを与えてやっただけ感謝しろ」
「は!!わかりました」
電話をきる、あくまで、怒りが伝わらないように静かに。しかし電話をきったあと、スマートフォンを地面にたたきつけた。
《ゴンッ》
傍らの腹部までの高さのある丸テーブルコップの水をのみほし、書類やら、花瓶やらをはねのけて、叫んだ。
「うわあああぁあぁあぁあああああ!!!!」
ソファーに顔をつっぷし、叫びながらいう。唇から血があふれている。
「あの男!!あの男の声!!命令、口調!!!態度!!すべて、すべて!!!私を、この私を、見下しやがって!!!私ああいう奴と距離をえたくて、カルマテイカーになり、願いをかなえようとしたのに!!」
両手で顔を覆うと、ゆっくりとそのままおきあがり、小声でいう。
「まあいいさ、カルマテイカーになれば、すべて変わる」
クレンの意識は、薄暗い分かれ道にたっていた。試しに左にいくとまたそこも同じような分かれ道になっていく。それが延々とくりかえされる。どうやら抜け出すことが不可能な迷路にきてしまったようだ。だがある女性が目の前にいる。たしかその女性を、おいかけていたような。手を伸ばし、肩にてをかける。
「なあ、あんた」
振り返る女性が、顔を見せると、それは仮面をつけていた。呪文の書かれた、狼の面を。




