想像
クノハが思い浮かべたのは、自分の“本体”が人間に大事にされ続けてきたという確信。それが恩の念となり恩返しの九十九霊である彼女の力になった。クノハの周囲が明るく光ると、徐々に力がたまり、クノハは、思い切りそれを“悪霊”めがけて射出した。
その時だった。
“グオオオオォオオ!!!”
「なにぃっ!?」
「いやああ!!!」
セイヤともみ合いになっていた女が突然、後襟をつかまれ、後方に強い力でひっぱられたのだ。
「カロマ……お前は私の盾となれ……」
その正体は悪霊だった。悪霊は左手をのばし、カロマを引っ張り、クノハの放つ力の盾にしようとしたのだった。
瞬間、クレンはすべてをさとった。クレンの中を思考が駆け巡る。特に顕著に思い出されたのは少しまえ、自分の気のエネルギーによって一人の男を一時寝たきりにさせてしまったことだった。
「……まずい!!このままでは!」
クレンはしっていた。いくら正しい、良い気であろうと高純度の力が生身の人間にあたれば、人間に悪い影響を及ぼす。人間ももちろん霊体をもっているし、それどころか、肉体にさえ影響を及ぼすの事がある。クレンはもちろん、以前の戦いででた、クノハの強力な力を知っていた。
(まずい、このままじゃ……)
クレンは、とっさに以前の戦いで使った鑑の事を思い出した。
「そうだ……」
とっさにスマホをとりだし、目の前の女性の前にかかげ、クノハの線状の気をとめようとした。しかし、さすがに物理的な力だけで跳ね返すことはできず、クレンは、自分の念をなんとかねりだした。
(頼む……跳ね返す程度の気でいい、これ以上、人間を傷つけたくないんだ……)
「ク、クレンさま!!!」
クノハが叫んだ。その瞬間、光の線は跳ね返り、クレンの腹部を貫通した。クレンはもちろんわかっていた。だが、他に方法がなかった。周囲にはすでに人だかりができていたし、そばにはセイヤがいる。クレンは自分の仁丹に力をいれ、叫んだ。
「根性……!!!根性!!!」
その瞬間、クレンは後方につきとばされた。周囲に集まった野次馬の人々は悪霊の姿を見る事はできず、数人の男女の乱闘だと思っていたために、何が起きているかわからない様子だった。
「クノハ……」
クレンはあおむけに倒れたからだを起き上がらせようとする。だが視界がゆれて、その場にくずれおち、今度はうつぶせに倒れた。右手を伸ばし、悪霊に狙いを定める。
「クノハ……俺に力を貸してくれ」
「でも!!クレンさん……」
「もう、だれも傷つけたくないんだ……」




