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空気と仮面

 その姿をみて、その髪型や雰囲気、体型、なにより気をみてそれがセイヤ本人だと確信する。

“ドクン”

 心の動揺が、クレンの耳に強く響いた。まるで世界全体にその自身の心音が響きわたっているようだ。

「どうして?セイヤが……ここに」

 クレンがかつて強いといわれたのはその強靭な精神力のおかげだ。特に気、法力は精神に強くかかわりをもつ。動揺や戸惑い、怖れや怒りなどはその気の質を変え、力の良しあしを左右する。

「なんで……セイヤに……“ソレ”が……そんなモノが」

 目の前にいるセイヤ、その背後、背中に取りついているものはまごうことなき悪霊。カルマテイカーほど強力な術による契約はないようで、むしろセイヤの心に取りついているといったほうがよい状態だったが、セイヤが危険なことはかわりない。彼の気はうつろで意識も夢のなかにあるように朧気に感じられる。

 クレンの頭にここ最近のトラブルの記憶が駆け巡る。父を狙ったこと、クレン自身をねらったこと、それからそのものが口にした兄の名前、そして今回、セイヤにとりついた“悪霊”。明らかにクレンの動揺をねらっている。いったいなぜ、なんのために、クレンに何を要求しているのか。

「力をかせ、クレン、お前は……組織の管理下にない」

 突然セイヤが右手を振り上げた。その手の中には小さなナイフが握られていた。それはクレンの腹部にむけて振り下ろされたが、難なくクレンはその手をはらって、勢いで刃物は地面に落ちた。

「どうして……その声……」

 クレンが驚いたのも無理はない、セイヤの喉から放たれた声は明らかにクレンの、彼の兄のものだったからだ。懐かしい響き、だが忘れない響き。

「兄さん……」

 セイヤは、武器を取り上げられたことなど意に介さないようにこんどは爪や歯をたて、クレンに迫りくる。クレンはさすがに対処しきれず、左腕を彼にかまれた。

「くっ……やめ……ろっ」

 勢いよくふりはらい、肘でセイヤのアゴをついた。すさまじい衝撃にセイヤは、地面にあおむけにたおれて動かなくなった。

「……どうして、仮面なんか……」

 クレンがセイヤを見下ろしていう。ふと、その背後で声がした。不気味な、おどろおどろしい気を纏った声が。

「仮面をつけているのはお前も同じさ、クレン、お前は逃げている、お前の罪から」

 振り返ると、そこには先ほどまでセイヤにまとわりついていた悪霊の姿があった。背が高く、目と口はつりあがり赤く、背中や肩からまるで鱗や角のようなものがおびただしく生えている。

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