沈黙
カノンにはわかっていた。クレンが一人で何かを抱え込むときはすでに何かを決意している。
「……ごめん、いいすぎた、とにかく」
カノンは逃げるようにその場をあとにしようとして、一瞬振り返る。
「一人で抱え込まないで、何かあったら相談してね、私に何かできるかわからないけど」
残されたクレンは、夕焼けを見ながらぽつりとつぶやいた。
「俺だって、まだ自分のしていることが、父さんのしていることが正しいのか、わからないんだよ」
「頼む!!」
「はあ……かまいませんけど」
「ありがとう、クノハ!!」
家に帰るとクノハがちょうどよく居間にいたので、クレンは明日から予定を合わせて付き合ってくれと頼んだ。丁度休日なので、時間の余裕もある。
「それで、何を手伝えばいいんです?」
「この前寺に呪物を持ってきた犯人、どうやらそいつが、寝込んでいる男と関係があるみたいなんだよ」
「どうしてお父様を頼りにしませんの?」
「あーいや……ちょっときまづくて、それに今でも信じられないんだ、まさか俺に退魔師を続けさせるつもりで……」
「?」
「いや、こっちの話」
丁度同じ頃、カノンも帰宅途中、公園にたちより例の野良猫のランをなでていた。
「はあ、もう少し素直にいえたらなあ」
腕をまくりあげ、力こぶをみせて、独り言をつぶやく。
「力になりたい!とか一人で悩まないで!!とか、なのにどうして強くいっちゃうんだろう、ねえ、ランちゃん」
「ニャア……(汗)」
クレンとクノハが明日の打ち合わせをしていると、父生善が帰ってきた。ただいまーと通りすぎてクレンの居間のすぐ隣の自室で着替えて、いったん居間により冷蔵庫をあけ麦茶をとりだしコップに注ぎ飲む。そして再び、今度は納屋へ行く方の廊下をあるいていく。そしてしばらくして父の叫びが聞こえた。
「あああああああ!!!?」
《ビクッ》
いつも冷静でどこかぼんやりしたところさえある父が声を張り上げるのは、特別な時だけだ。自分にしらせるまでもなく大声を上げたのだから何かある。いそいでクレンはその方向にはしった。―ダレスのいる部屋に―
《いない……》
クレンの視線にあるはずのものがない。布団は丁寧にしまわれていて、その上に一枚の紙きれ。
《お世話になりました》
それをひろいあげ、生善はひとこと。
「そうかあ、治ったか、よかった」
クレンが、肩の力がぬけたようにその光景を呆然とみていると、生善クレンの肩をたたき
「これでお前が、罪悪感を抱く必要もなくなった」
まるですべて見透かしているようにそういった。




