クレンの悩み
「ああ、そのことか」
「?そのことって、やっぱ何かなやんでいたのか」
「いやあ、じゃあ軽く説明するか」
「まあ、言ってもらわなきゃわかんねーこともるしな」
クレンは、顎の下でてをくんで、真剣な表情をみせ、話をはじめた。
―あれは、家に代々つたわる退魔の面にかかわることだ―
《退魔の面は、それ自体が強力な退魔の力を宿す、それぞれの退魔師の家系が、その代でもっとも力ある存在に託す伝統がある、例にもれず、俺の家族は俺がまだ小さいころ、母がつけていた、母は強力で立派な退魔師だったから、しかし母が病にふせ、弱ると今度は父がそれをついだ、しかし俺の力や能力が、長年の修行により強力に進歩して、いつしか父を追い抜くと、今度は俺がそれを引き継ぐことになった、だがこの退魔の面には、あるしきたりがある、それは》
「それは?」
先ほどのふざけた態度など忘れて、セイヤは興味ありげに真剣に聞き入っていた。
《その代の最も力あるものが退魔師をやめ、引き継ぐものがいない場合、お焚き上げして、その退魔の面の力を消し去らなければいけない、そうしなければ使うもののいない退魔の面は、ただ、強力な退魔の力、気によって災いを引き寄せるもとになる》
「!?」
さすがにセイヤも感づいたらしく、目を丸くしてクレンをみつめる。
「そうだ、本来なら俺が退魔師をやめるとき、お焚き上げしていたはずだった退魔の面、昨日みてしまったんだ、父さんがそれを持っているのを」
「……」
セイヤは、クレンと父の信頼関係や仲の良さをよくしっていた。だからこそクレンの気持ちがわかったのだった。裏切られた。きっとそう考えているだろう。だからこそ、何も言えなかった。
放課後、クレンはカノンに呼び出された。
「屋上に来て」
いわれた通り、屋上にいくと、すねた顔のカノンがいた。
「セイヤ君に頼んだのに、やっぱり何かまだ悩んでいるのね」
「……いや、別に……」
クレンは、こういう時のカノンが苦手だった。何もかも見透かされているようで、かといって、頼ったら頼ったで、迷惑をかけたり巻き込んだりしてしまう恐れがある。
「なんでもない」
カノンは、クレンの腕をつかんで迫った。
「いいたいことないの?この前三人で遊びに行ったときもおちこんでたし、周りが心配するでしょ」
「別にいいだろ、俺の気持ちはどうでもいいのか」
カノンは顔を赤くして、激高したように叫んだ。
「クレンちゃん、中途半端なんだよ、やめるとかやめないとか、お父さん助けるとか助けないとか、別に半端でもいいけど、自分の心に決めた選択なら責任もって実行してよ!」




