幽霊話
「あれは……つい最近、俺が陸上部、短距離走の練習を終え、クラスにもどってきたときのことだった」
何をねらってか、セイヤの何かとわざとらしい、おどろおどろしい前置きが入る。
――静かな日だった、昼過ぎごろ小ぶりの雨がふって、湿った風が屋内を通りぬける、ガラガラと戸を開ける、俺は、教室に人がいないのを確認すると自分の机に向かった、ちょっと忘れものをとりにな、だが、夕日に照らされた教室が、にぎやかな日中の物音を連想させ、ここでの思い出が走馬灯のように頭を駆け巡り、やけに綺麗で、ものおもいにふけって夕日をじっとみてたらそれが思ったより沈んでいくのが早くて、俺は過ぎていく青春のはかなさみたいのを感じたよ――俺は!!たちは!!ここにさらに美少女でもいたら、その光景を生涯忘れることが!!
とそこでクレンの制止が入る。
「そういうのいいから、本題は?ときどきジジくさいんだよな、お前」
「あ、そう」
(調子がもどってきたか?と思いつつ、セイヤは本題を続ける、といってもそれもまだ本題ではないのだが)
――だがその干渉もつかの間、野球部の大きな掛け声にふと我に返る、すると先ほどまでなかった、じめじめとした風が、背筋をなぞり妙な悪寒を俺に感じさせた、俺は振り返るそこにいたのは、このクラスで最近亡くなったという、ヨシコちゃんにそっくりの……――
“バシッ!!”
「しんでないわボケッ!!」
そこでツッコミをいれたのはとうの良子ちゃん本人だった。同じ陸上部で、セイヤが何かとちょっかいをかけるボーイッシュなショートの女の子だ。
「ギャハハハ」
クラス中がセイヤの無駄話に笑顔になった。
「で……どこからどこまで本当なの?ていうか本気?」
クレンがじーっと半目でセイヤの事を見つめる。セイヤは頭をかきながら。
「いやー……なんていうか、まあ、最初は恐ろしいものを見た気がしたんだよ、少女の亡霊をさ、でも、そのあとさ」
セイヤが口を片手で覆ってクレンに耳打ちする。
「委員長がきたんだよ、それで、委員長がおしえてくれたの、その幽霊の正体が“クノハ”だって」
「……」
クレンは一瞬はっとしたが、ぼーっとセイヤの顔をながめた。
「なんだよ、嘘はいってねえぞ、本当に見たんだよ」
「ウーン、その前の冗談で信用がな」
「いや、それはお前を元気づけようと」
「?」
「元気ないだろ、なんか、カノンだって気づいてるし、そもそも、俺のこんな話どうだっていいだろ、見てようが見てまいが!」




