沈黙とリンネ
「何してるんだ?」
薄暗闇で姿がよくみえない。
「ここからじゃ無理だ、でもこれ以上近づいてもばれてしまう」
目を閉じるクレン。
「ふう……」
クレンは気を集中させて、父が眺めるものの気配をさぐろうとした。建物の中に意識を集中させると父の輪郭が、白く浮かび上がった。そして彼が厳重に札がはれ封印された箱らしきものから何かを取り出そうとしているのがわかった。父が一言放つ。
「……これだけ大切に守っていても、これは人を引き寄せてしまうのか……」
その言葉の意味を、クレンは瞬時にさとった。
「うそだ……」
「リンネ……」
父が母の名を呼びながら箱から取り出したもの、それは……退魔の面だった。
「嘘だといってくれ!!!」
クレンは、その場で小さな声でさけび、膝から崩れおちて地をたたいた。そしてその背後から透明な影があらわれ、クレンをみつめた。
「クレンさま……私はどうすれば……」
クノハが月明りにてらされ、美しい顔が、悲しげにクレンを見守っていた。
翌日、クレンはまただれが声をかけても心ここにあらずといった感じで、ひどく思い悩んでいる様子だった。その様子を心配したカノンは、セイヤに相談にチャットツールレインで連絡をする。セイヤから返答があった。
「俺にまかせろ、何かしら気を引いて気を紛らせる」
「でも……もし、うまくいかなかったら」
「いや、大丈夫……俺がやつの調子をもどしたら、カノンがやつを最後に元気づけろよ」
「な、なんで?」
「お前ら早くくっついちまえよ」
「ちょ、ちょっと!!」
メッセージはそこでおわり、セイヤは昼休みに入ると決意したように、一息はいてクレンの席に近づく。
「クーレン!!」
「……」
やはり反応はなかった。だが拒絶されていいわけじゃない。近づいてもいい雰囲気や、ある程度の距離感をゆるす気配があった。ほかの人間じゃこうはいかない。セイヤだから、気を許しているのだ。
「おい、クレン」
肩をつかむセイヤ
「ん?……ああ」
そこでようやく気付いて顔を上げる。
「なあ、飯食おう、それに俺、面白い話があるんだよ」
「え?」
セイヤはクレンの机と自分の机をひっつけると、むしゃむしゃと勢いよく昼食を食べ始めた。
「それで……話って」
「ああ、そのことか……忘れた」
「は?」
さすがのクレンもあっけにとられたが、しばらく食事を食べ進めたとき、その様子を片目をとじ、片目でうかがいながら、クスリと笑っていった。
「俺、幽霊みたんだよ」
「……??お前が?」




