声
その声は、明らかに寝ころんでいるダレスから発せられた。生善は振り返るとともに、彼の気が正常な循環に近づいていることがわかった。
(よかった……回復に向かいつつある、もし長引くようであれば、知り合いの退魔師の医者に見せるつもりだったが)
「ふっ……目を覚ましたらうまい料理でもくわせてやるか……まったく心配かけやがって」
クレンは、偶然か、それともやはり自分の“瞑想次元”はある程度の域に達しているのかと考えた。それよりなにより、生善にみつからずにすんだ。昨今のトラブルの大元、原因を探るにも都合がいい。
「さて……」
生善はしばらく男の様子をみたあと、きびすをかえし、障子をしめた。と同時にクレンも押し入れのとをゆっくりとひらいた。
“ススス”
クレンは、ダレスという男の顔をみる。まだ無表情で意識はもどっていないが、たしかに深い意識の変化が現実に変化を及ぼし、寝ぼけている時のように、言葉や体の動きに変化を及ぼすこともできそうなほど、気はしっかりしていた。
「ふう……」
これでクレンの罪悪感も少し収まった。このまま寝るかとおもったが、その時はなぜだか父が何をしようとしているのかいたずら心で探ってやろうとおもった。最近いりびたっている。クノハも今日はいない。
「トン、トン、トン」
軽やかに一定のリズムでなる足音をおって、クレンは隠れながら生善の後を追う。どうやら寺の裏手、納屋や蔵がある場所に向かっているらしい。退魔師の道具も専用の納屋に入れて管理されているため、特段不思議ではなかった。生善は暗がりをあるいていき、クレンの部屋を通りすぎるとまたも部屋の中に声をかけるが、返事がないのを確認すると、やがて裏口でスリッパをはいて、そとにでていった。
「……」
しばらくして、クレンもそれをおいかける。裏口のドアを開け、少し外を覗くと闇夜に月をみあげ、月にてらされている生善の姿をみた。丸めた頭、穏やかなしぐさ、送料独特の貫禄があり、それが一枚の絵画であっても不思議ではないほどだった。やがて周囲を見渡すしぐさをしたのでクレンは隠れ、動きをまった。
「大丈夫……だよな」
その言葉を残して、呪物などをしまっている中央の札だらけの部屋に入っていくのがみえた。この時点でクレンは父がくだらない理由で自分から姿を隠しているわけではない事がわかった。
「なら、なんで……」
しばらくたっても蔵からでてこないので、クレンは隣の掃除道具などが入っている蔵の影にかくれ、そーっと中の様子を覗いた。




