迷い
「あれから、俺は自分の判断を疑いつづけている、母は俺のせいで死んだんだと思う、父は何もいわないが……確かに、思い持病はあったがあんなに早くしぬはずじゃなかった」
「……」
クノハは、そっと窓のほうへいき、教室の窓をあけた。
「クレンさん、私も、クレンさんに言わなければいけない事があります」
「?」
そうして、踊るように、どこか気丈に彼女は話を続ける。
「私は、もうしっかりとは覚えていないのですが、つい最近目覚めるまではぼんやりとした自我も記憶も失った亡霊でした、ですが、100年前の映像はぼんやりと覚えている……とても大事な人と、陰陽師の人と一緒にいたような……私はその時代に生きていた人間でしょう、それがどういうわけか記憶を失い100年の歳月を経て、記憶をとりもどした」
開放した窓、風が教室の中に入ってくる、奇妙にも、その風に幽霊である彼女の髪は揺れた、その瞬間美しい顔がはかなげな表情をみせ目を伏せる、瞬間、どこか異国の全く事情をしりもしない女性がそこにいるかのような錯覚に陥った。
「初めは、その人がクレンさんだと思って、きっとクレンさまの生まれ変わりだと思うことにしていた、でも、近頃クレンさまの人となりを見ているうちに、そうじゃなくてもいいと思うようになってきた、愛しい過去に想いを馳せ、寂しい思いはきえないけれど……それでもこの時代にはこの時代の良さがあると思えた、それはあなたのおかげなんです」
外のほうをむいていたクノハがくるりと翻って、笑う。
「だって、あなたはとても素晴らしい人ですから」
クレンは、その美しいクノハの、この世のものではないものの奇妙な美しさにみとれながら、こぶしをぎゅっとにぎった。
「……正義、自分に正義があるとは思えないけれど……」
「……」
「クノハ……頼みたいことがある……退魔師という肩書があれば、これは本来厳重な罰が下る禁止事項なんだが……君と……気をかよわせてみていいか?」
「気を?……どういう意味です?」
「いや……さっきいってただろ?奇妙な人影をみたと、不思議なんだが、ブランクを経ても俺の本来の……例えば残留思念やら人の気から記憶を読み取るような透視能力は、最近さえてるんだ、だから」
「……」
クノハは、窓にてをかけ、占めると、後ろで手を組んでにこにこしながらふりかえり、少し押し黙り、いった。
「いいですよ、あなたが前に進めるのなら、何だって手伝います」
そうして、二人はクレンのいうままに掌と掌をあわせた。クレンが呪文を唱える。




