壺と女とサノン。
やがて、壺の周囲にあふれる気、憑き物の意識にリンクした。場面は別の場所、それもさらに過去らしきものへ遷移する。女が二人リビングの腹部ほどの高さのある机を隔てて、丸い、座る部分だけ回転する椅子に座っている。左の一人がキュルキュルと椅子を回転させ、間接を力なくまげ、ガムをかみ、悪態をつきながら、資料をとりだした。
「次は、コレを盗むよ、サノンお姉ちゃん」
「……」
一人は椅子にすわり、眼鏡をかけうつむき、表情は見えないが、指示されることをまっているような表情できゅっと口をしばった。
「どうしたの?返事は?私と仲良くしていたいんでしょ?ばかばかしい、本当、嫌な女」
「……」
整理された調味料が机にならび、すぐ後ろにキッチンがある。夕日が差し込むアパートらしき部屋の一室で、一人の女が一人の女を責めているようだ、主従関係ははっきりしていた。
「ねえ、あなたのお気に入りのものがみつからなければ、必要じゃないものは、捨ててきていいのよね?」
「当り前じゃない、“使えない悪霊”に用なんてないんだから」
「誰かにとっては必要かもしれないでしょ」
「……??」
カーテンをあけ、それにくるまり、振り返っていった。夕日が怪しく、そのつりあがった口の女の不敵な笑みを露わにする。
「もしかして、いま私に反抗した?なんでだろう?こんなこと、なかったのに」
「……ッ……私はあなたに戻ってほしい、元の優しい子に……憑き物がおちれば……」
「憑き物?あなたがみたっていう、私の胸に浮かぶ黒い点か」
「あなたは優しい子、私が変えてしまっただけ、あの時……友達をとめられなくて、苦し紛れに、願いをかなえてくれる数珠なんて渡して、あれに何かついてたのよ」
カーテンにくるまっていた偉そうな女は、片方の女に近づき、その鼻をつまんだ。
「っ……痛い、痛いわ、やめで!!」
「これは復讐なのよ、サノンお姉ちゃん。あまりに気を使っているとひどい目に合うって教えてくれたのはお姉ちゃんだから、あたしがあたしの友達にいじめられても止めなかった。私の友達を奪ったくせに。あんたが最初にあたしを馬鹿にしたから私はいじめられたのよ」
ふと痛めつけ終わると、ぱっとその手を離した。サノンといわれた女は、鼻をあからめ、両手で痛む鼻を覆った。
「彼ね?彼があなたを変えたのね?ダレスという男、あの子の、クレンの兄……デゲスに相談しましょう、どんな回答がまっているかしら?きっと、いいひと柱にしてくれるわ」
「!!」




