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突進

 クレンは、急ぎ胸元から何かをとりだした。それは紙片、大量の退魔の札だった。生善がふりむき、驚く。

「クレン……お前……」

 その札に息を吹きかけ、念入りに気を入れると、呟いた。

「退魔の剣、罪落とし」

 生善は驚いて、言葉を失った。

(まさかここまで、ずっと隠れて修行をしていたのか?たしかにこれまでは気は感じなかったのに、今は確かに感じる、全盛期よりかは力は落ちているが、洗練された技術と、繊細なコントロールを、それも、先代ですら苦労したといわれる、その技を)

 退魔の札は束になると、回転し軸を作り、続く札がペタペタとそれに張り付き、強固にかたまり、板になり徐々に剣の形状をなす。やがて光る気を纏い、見てわかるほどに鋭利な切り口を手に入れた。

 クレンは完治しない傷を左手で抱えて、右手に剣を構え。脇を絞めた。そして目を鋭くひからせ、最初はよろけながら、徐々に確かにただまっすぐに走りだす。それはほんの数秒の出来事だった。クノハが振り返る前から、クレンはその背後の《悪意》に気が付いていたから。

「うおおおおおお!!!!」

 収まらない傷と鼓動を抱え、クレンはクノハとその背後にめがけて突進する。クノハは、おどろいた。しかし同時に理解し後ろを振り向く。気づいた時には自分の直ぐ真上に、顔に影を落とすほど間近に、シノメの剣は迫っていた。

 クレンは、クノハの脇を通し、剣を突き刺そうとした。しかしその瞬間、一瞬戸惑いがあった。目の前を横切る影が、シノメをかばおうとしていたからだ。

(何!?)

 躊躇いとともに、いくつもの思考が巡り、そして、クレンはこれまでの仮説と、サノンにもらったヒントをもとに、その仮説を再び確かめようとした。クレンは、何を思ったか次の瞬間、その影に手をあて、目をつぶった。シノメは、前を振り向きなおり、クレンに目を向ける、クレンは武器をかまえ、少しためらい、クノハの横に佇む影に手を当てていた。それよりも異常だったのは、クレンは目をつぶっていたことだった。そして、クレンは左手に気をため、クノハを左側に突き放した。

「!?クレン……さま?」

 その瞬間、クノハは直観的に理解した。クレンが、たった今“瞑想次元”を使ったことを。

(瞑想次元、いくつもの呪文と複雑怪奇な気の構造を熟知し、使いこなすものだけが使えるとされるもの、クレンさま、あなたは……)

 クノハは瞳に涙を浮かべた。しかし次の瞬間、それは悲鳴に代わる。


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