クノハの正体
「ク、クレン……さま!!」
クノハは両手で口を覆って、気が動転したようにその様をみていた。
「大丈夫だ、クノハ、なんとかかすっていっただけだ、傷は深くない……」
「ハッ!!」
クノハは意識をはっきりとさせ、しっかりしろと自分に言い聞かせる。
「クレンさま、敵は気が動転しているようです、少し離れましょう」
「ああ……」
クノハはクレンを木陰に寝かせる、クレンの代わりに、生善がシノメを監視していた。
「クレン!!レンちゃん!!」
「カノン」
「クレンちゃん、もうやめよう、逃げようよ」
「そんな訳には……あいつはもう“目覚め”てる、どこまでも追ってくるさ」
「クレンちゃん、もう誰かのために自分を犠牲にする必要なんてない、あんな人、ほっておこうよ」
「カノン……なぜないているんだ」
「クレンちゃん、こんな、クレンちゃんが特別な力をもっているからって、苦しめあったり、殺しあったりしたら、私……」
「カノン、やっぱりシノメの事も心配しているんだな」
「お願い、少しくらい傷ついても傷つけてもいいけど絶対に殺し合いなんてしないでね」
クレンは、カノンのやさしさに安心し、そしてカノンに余計な心配をかけていることをさとり、頬にてをあてた。
「ありがとうな、カノン」
「クレン様……」
クノハは、自分自身の気を最大限に使い、クレンの治療に専念する。しかしクノハも直近で力を使いすぎたため、あまり治療が順調に進まなかった。そこで
「これは使いたくなかったのですが」
といって、クノハは長髪を結っていた赤い紐をとき、髪をほどいた。その瞬間、クノハの全身から力があふれた。
「自分が自分でなくなるような、そんな感覚がするから、使いたくなかった、いいえ、自分の過去を……道具としての過去を恐れていたのかもしれない、けれど道具の使い方を気遣い、悪霊たちさえ裁くことをためらうあなたになら、託してもいいかもしれない、私はこの姿になるたびに、私の因果と出自に確信めいたものを感じていたのです」
クノハの手が光輝く手をかざすと、クレンの傷口はすぐさまふさがる。そしてクレンは、自分の傷口を覆う気の正体に気づいた。
クノハは立ち上がり、決意したようにこぶしを握り、そして振り返っていった。長い髪が揺れ、神秘的な笑顔で笑って。
「クレン様、また一つお願いをしてもよろしいでしょうか?」
そういわれたクレンはゴクリ、と生唾を飲んだ。
「あの少女は、私が“対処”してみせます」




