045.犬と飼い主の人外転生-2
前話044.犬と飼い主の人外転生-1をお読みでない方は、先に前話をお読みください。
《Side 猫神》
「ほんっとーーーに申し訳ございませんでした!!!!!!!!」
ところ変わって、今は木造りの一軒家の中にいる。地球で言うところのログハウスだ。
少し変わっているのは轟轟と水が打ち付ける滝つぼのすぐそばに立っていることだろうか。
木材が腐ってしまいそうな気もするが、特にそんな様子はない。人魚の因子も持つスキュラならではの立地らしい。
天井に窓がいくつかついていて、内側から推すことで開くようだ。狼首だけ出せる仕様もスキュラらしい。
そんな家の中、目の前には、下あごを床に擦り付けて必死に謝る白龍がいる。
実は龍じゃなくて狼らしいが、龍にしか見えない。
話を聞くと竜種を食べて着々と進化してきたようだ。望みだったワンコを守り続けていられるようで何よりだ。
ワンコの方はワンコの方で、早速飼い主の命を救ったらしい。
散々ごねられてしぶしぶ渡した力ではあるが、活用してもらえているなら、まあ、良かったんだろう。
というか、もう一度死んでるのか・・・・・・さすがは獣神の世界は激しいものだ。
今も、子供を殺されたライカンが、ハルピュイアに徹底攻勢をしかけているようだ。
両者が消耗したところを狙うつもりか、ケンタウロスも不穏な動きを見せているらしい。
私が浜辺についたときも、上空にペガサスが飛んでいるのが確認できた。
竜化ハルピュイアを下したトール達を警戒しているのかもしれない。
《(ここもあまり落ち着けそうにはないな・・・・・・)》
そんなことを考えていると、飼い主もとい白龍・・・・・・(ややこしいな、トートでいいか)が話しかけてきた。
「猫神様はどうしてこちらへ??」
《あなた方の転生が内部監査対象になったのでその対応です。事前にあなた方の状況を確認して資料にまとめておかないと、上がうるさいので。》
「猫神様がそんなことまでやらないといけないんですね・・・・・・それじゃ前世の会社員と変わらないですよ」
《寿命がないですからね。人より辛いと思いますよ。終わりなき、悠久の社畜地獄です。》
「ほかにやってくれる神様いないんですか?神様とはいえ、それはあまりにも・・・・・・」
《(嘘ついてるのが心ぐるしいな・・・・・・)、ま、まあ、限度はありますから。心配してくださってありがとうございます。》
「いえ。私とワンコは猫神様のおかげで幸せに暮らせています。前世よりも危険な世界ですが、それ以上に私は強く生まれました。ワンコと話すこともできますし、ずっと側で守ってやることができる。姿かたちは逆転してしまいましたが、そんなこと関係ないほどに今の状況を好ましく思っています。本当にありがとうございました。
猫神様はいつまでいらっしゃるんですか?大したおもてなしはできませんが、ワンコも両親も喜びますし、のんびりしていってくださいね」
先ほどからこちらの話を聞きながらうとうとしていたワンコも、はっと目を覚まし、ぶんぶんと首を縦に振っている。
顔だけみれば絶世の美幼女なんだろうが、こういう仕草を見ると、私を追っかけまわしていた犬と相違ないように思える。
気持ちはありがたいが、むしろだからこそ長居はできないと思える。彼等を神の争いに巻き込むわけにはいかない。
答えあぐねていると、彼らの両親がやってきて言う。
「トートの言う通りですよ。あなた様のおかげで、我々は<意志持つ首の娘>を授かることができました。これは一族にとって大変誉れなことです。一人の親としても、かわいい娘としっかりした息子をいっぺんに授かることができて本当に幸せです。どうぞお仕事と言わず、休暇のつもりでのんびりしていってください。あ、トート、ちょっとライカンのことで話があるから、ちょっと顔貸してもらえるかい。それじゃ、神様、少し失礼しますね。」
そう言って、両親はトートの首だけ連れて外に出ていった。
余談だがスキュラの人魚の尻尾は二股に分かれていて、彼らは自由に地上を歩くことができる。
彼らがいなくなって、目の前にはワンコだけだ。
先ほど一瞬覚醒したがまだ眠そうだ。トートが活動的な分、ワンコに負担がいっているのではないだろうか。
《私のことは気にしないで良いので、部屋に戻って寝てくださっていいですよ。》
幼子なりの矜持があるのか、うんうんと悩んだ後、
「じゃー、猫神様も一緒に寝よう」と言ったかと思うと、1本の狼首にくるんと絡めとられた。
ワンコは、床の上に残り三本の狼首で器用にとぐろのベッドを作ると、そこにコロンと横たわる。
私はそのままワンコのお腹の上に乗せられた。最後の一本は、どうやら枕兼掛布団になるようだ。
驚きの寝つきの良さで、もう寝息を立て始めているワンコの顔を眺めていると、私も眠くなってきた。
狼の毛は少々ごわつくが、とても暖かく、その日はウラノースのことも転生事務局のことも忘れ深い眠りについた――――――




