042.事務魔術-2
前話041.事務魔術-1をお読みでない方は、先に前話をお読みください。
《side エクス・ヴィヴィアン》
「経過観察ですか?」
昨日、商業ギルド本部併設の独身寮へ帰宅した私を待っていたのは、ベッドに座る一匹の猫だった。
豹のような毛並みに、一瞬、魔物の仔かと警戒したが、その憂いを帯びた雰囲気にはどこか覚えがあった。
猫神様ですか?と声をかけると、うなずいたその猫が発した言葉が「経過観察の為に訪問した」だった。
しばらくは滞在して私の様子を見ていくらしい。
他ならぬ猫神様の訪問なら否はない。少々、休日の副業を見られることには抵抗はあるが、それもまたこの世界で暮らす私のありのままの姿なのだからしょうがない。
つきっきりで行動するのか確認すると、この部屋から視認できるので構わない、迷惑はかけないとのことだった。
私は別に構わないのだが、猫神様にも都合があるのだろう。
その後は、転生してからの20年について、かいつまんで説明した。
頂いた《事務魔術》が本当に役に立っていること、日々<ありがとう>を受け取って、本当に充実した日々を送ることができていることを話した。最後は嗚咽交じりに「あ”り”がと”うごばいばす・・・・・・」なんて言って猫神様に詰め寄ってしまい、かなり引かれていたように思う。
後、転生当時は余裕がなくて触れなかったが、猫神様の毛皮も堪能させてもらった。
とても柔らかく触り心地が良かったが、少し汚れていたりうっすら血がにじんでいる箇所があったので、お湯につけたタオルで少し拭かせてもらった。かなり嫌がられたが、最後は大人しくなり、いつの間にか寝息を立てていた。
ひょっとしたら、経過観察は口実で何かトラブルに巻き込まれているのかもしれない。
神のトラブルに対して、私なんぞにできることがあるのかわからないが、全力で助けて差し上げたいと思う。
そんなことを思いながら、その日は猫神様をお腹に乗せて眠りについた。
朝目が覚めると、猫神様はまだ眠っていた。丸まって眠る姿がとても愛らしい。 その姿に後ろ髪引かれる思いがしたが、起こさないようにそっと寮を出た。
《side 猫神》
《行ったか・・・・・・》
例の人材、こちらではエクスと言ったか、、エクスが部屋を出てからそっと体を起こした。
久しぶりにゆっくり休んだおかげか、体調はとても良い。
去り際に上位神から受け取っていた神力を回復に回し、損傷個所を修復する。
思えばここまで怒涛の日々だった。
上位神のところを逃げ出してすぐに追手がかかった。
昇進させるのも嫌なやつのことなんて放っておいて欲しいものだが、図体の割に狭量なウラノースのプライドにさわったのだろう。奴の眷属の巨神が山ほどやってきた。猫に巨神派遣するとか頭がおかしい。
地球を経由して縁のある神々に偽装を頼みながら、這う這うの体で辿り着いたのがこの異世界だった。
私の扱った人材で神に至っているものもいる。最初は彼らのいる異世界に逃げ込もうとも考えたが、そんな目立った異世界は、あの業務丸投げウラノースでも把握していることだろう。
特段トラブルもなかった異世界の方が特定に時間もかかると思い、ここに逃げ込んだ。いずれは追いつかれるだろうが、流石にクライアントの世界でめちゃくちゃすることはないだろう・・・・・・多分。
しばらくはここで体を休めて、頃合いを見て次の異世界へ移動しよう。
それにしても、エクスはあんな人間だったろうか。随分と明るくなった印象を受けた。
転生する前は、気弱で自信がない様子だった。相変わらず大人しい印象は変わらないが、どこか芯が通ったというか、貫禄のようなものが感じられた。泣きつかれたときには驚いたが、正直嬉しかった。
自分が転生させた人材が楽しくやっているのは何だかいいものだな。
さて、エクスが帰ってくるまで、もうひと眠りするか・・・・・・
もう一話続きます。次は2時頃のアップ予定です。




