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036.鼻セ〇ブプレミアム

2話完結の1話目です。

 「ティッシュがない世界なんて考えられない!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 《(・・・・・・)》

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 私は、地球の異世界転生担当職員、一応、神だ。


 ある事情から猫の姿をしている。

 今日はチンチラ。ドールフェイスと呼ばれる鼻ペチャのつぶれ顔が特徴の猫種だ。愛嬌のある顔で、人材をリラックスさせることができる、かもしれない。


 改めて、異世界転生担当職員とは、クライアント(異世界神)のニーズに合う人材(死者)を、異世界へ派遣する神級派遣事業者だ。クライアントから人材へオファーできる異世界転生特典のうち、最低限の特典を人材に渡しつつ、気持ち良く転生してもらうのが私の仕事だ。


 このところ、大きなトラブルもなく転生者を送り出せていたのだが、久しぶりに癖の強い人材が来てしまった―――

 

 

 今回の人材は、55歳男性。大手事業会社の営業部長だ。

 死因は脳血管の破裂による突然死。お酒や脂っこい食事が好きで高血圧だったこと、慢性のアレルギー性鼻炎に悩まされていたことが彼の命取りとなった。

 鼻炎により、会議中くしゃみが出そうになった彼は、鼻をつまみ、口を閉じてくしゃみをこらえようとしたらしい。こらえたくしゃみの衝撃で脳動脈瘤が破裂してしまったようだ。くしゃみで死ぬとはなんとも言えん死に方だ・・・・・・。

 

 会議中に死んでしまったからだろう。彼の姿は生前を現す、ぴしっと決めたスーツ姿だ。

 55歳という年齢と高血圧の割に腹は出ておらず、スマートな体形を維持している。

 ウニャーバックスコーヒーに一瞬驚いて固まっていたが、焦りながらもすぐに出口を探し始めた。今までにないスピード感に声を掛けそびれていると、椅子を持ち上げてガラス窓を割ろうとし始めた。

 

 

 《あの!すみません!そうこっちです。ええ、こちらの猫です。幻聴ではありません!ちょ、ちょっと待って!その手に持った椅子を下ろして!冷静に聞いてください!》

 

 

 急に声を掛けられたからだろうか。驚いてこっちに椅子を投げつけようとしたところを慌てて静止した。

 

 

 《急にこんな場所に連れてこられて、しかも猫に話しかけられて大変驚かれたことと思います。落ち着いて聞いてください。あなたはお亡くなりになりました。 「あ、これ夢だな!」 いえ、違います。夢じゃないです。

 あ、ちょっと!!顔つねっても叩いても目は覚めませんから、ちょっと落ち着いて話きいて!って、止めて!割れないから!ガラス割れないから!椅子も壊れないから!お願いだからちょっと落ち着いて!》

 

 どうやらPCが動かないときにエンターキーを連打するタイプのようだ。こちらの静止を聞かずに思いついたこと全部やって、どうにもならなくなってから話を聞きに戻ってきた。

  

 

 「で、どうやったら目覚めるんだ?大事な会議中だったと思うんだが。」

 

 

 《ですから、目は覚めません。ここは天界です。あなたは間違いなくお亡くなりになりました。》

 

 

 「何で、こんな夢見てんだ?昨日はそんなに飲んでないはずなんだが・・・・・・」

  

 

 《(・・・・・・)》

 

 

 どうにも納得してもらえないので、しょうがなくいつものウニャーバックスコーヒー解除と神力による威圧を使ったところで、ようやく現状は認識してくれたようだった。

 

 が、そこからが長かった・・・・・・なんで俺が死ななきゃいけないんだ!現世に帰せ!と怒鳴る怒鳴る。


 私の威圧後にこんなに元気な人材も珍しい。


 本当にしょうがなく、再度強めの威圧をかけたところ、どうしても戻れないと認識できたのか、今度はわんわん泣き始めた。忙しいな・・・・・・魂と精神だけだから、本当は新陳代謝なんて起こるわけもないのだが、思い込みの力はすごい。すぐに涙と鼻水で顔がぐしょぐしょになってしまった。

 

 多少落ち着いたところで、涙と鼻水をどうにかしようと思ったのか、スーツのポケットをまさぐり始めた。涙を拭くハンカチはあったが、ティッシュはなかった(生前のスーツのポケットに入ってなかった)ようで、ティッシュはあるかと聞いてきた。


 もちろんそんなものはない。作ることもできるが、少々腹も立っていたので、水魔法で鼻腔を洗浄してやり、火+風魔法で洗浄液を蒸発させるとともに、彼の顔を乾かしてやった。

 今のは何だと問われたので、あなたの行く異世界の貴族は、こうやって鼻や排泄物を処理してますと言ってやった。


 これが大変まずかった。

 

 

 「は?鼻はツーンとして赤くなるわ、肌は乾燥する。こんな顔じゃ取引先の前に出られない。どうにかしてくれ。」

 

 

 貴族も王族もこの方法なんだから気にするな、それより特典の話をしようと持ち掛けてみたが、全く聞く耳を持ってくれない。

 

 

 「じゃあ、平民はどうしてるんだ?商人は?農家は?」

 

 

 《規模の大きい商人でしたら、魔法学校に通って、先ほど使用した生活魔法くらいは習得しているようです。農民だとそうですね・・・・・・主に手ぬぐいのようなもので事を済まして、洗って使いまわしているのが一般的でしょう。》

 

 

 この答えがあまりに衝撃的だったのか、絶句した後、しばらく固まってしまった。

しかし再起動した後が激しかった。

 

 

  「ティッシュがない世界なんて考えられない!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 急に叫んだかと思うと、すごい勢いでティッシュの重要性について語り始めた。

何でも日本人のティッシュの消費量は世界一らしく、年間平均18箱。だいたい1箱2枚組が200組で400枚。枚数換算すると、年間7,200枚にも及ぶ。慢性鼻炎の彼は、少なく見積もってもその2.5倍は使用していたらしい。なんと年間18,000枚だ。

 

 更に彼は、中でも<鼻セ〇ブプレミアム>という商品にこだわっていたらしい。

130組3枚重ねで、既に1.5倍の厚みの上、特別な保湿成分まで加えたなんとも豪華な一品だったようだ。パッケージも黒を基調に柔らかい印象の動物の写真に、金文字での装飾で、高級感を演出している。

 これがなきゃ異世界にはいかないと言い張るので、じゃあ、異世界の金銭と交換で入手できるようにしますと言いつつ、特典用意してさっさと渡してやった。


 彼は自分の胸に光が吸い込まれていくのを見ながら、「じゃあ他のものも購に・・・・・・」といいつつ消えていった。

 

 出戻りのリスクは大きそうだが、あのままだと、あれもこれもと言い出しそうだから致し方ない。

あまりの剣幕に輪廻を勧めることすら思いつかなかった。


 

 とんでもないトラブル起きなきゃいいが――――――

 

 

――――――――――――次話《異世界編》に続く。

 

自分で書いてて嫌いなキャラ初めてです・・・

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