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035.犬と飼い主の人外転生《異世界》

犬と飼い主の人外転生の異世界編です。ちょっと長めです。


前話の飼い主の一人称を「僕」に変えて、少し言葉を大人しくしています。

本話も合わせて「僕」になっています。

《とある異世界にて》

 

 

 ケンタウロス、ハルピュイア、ライカン、ラミア、トリトン、ミノタウロスにパーン。

 いずれも神話に謳われる半人半獣の魔獣あるいは神獣達だ。


 僕とワンコが転生したここは、彼ら半人半獣の世界。

 

 ケンタウロスは、上半身が人、下半身が馬の種族。草食動物の半身を持ちながらもその気性は荒く、単騎ならともかく集団に遭遇すればまず命はない。

 ペガサスやユニコーンを率いて地竜を狩り平原を治めている、この世界の最大派閥だ。


 ハルピュイアは、顔から胸までが人間の女性で、翼と下半身が鳥の種族。

 ネメアー、グリフォン、ヒッポグリフなど獅子や鳥獣と共に飛竜を狩り険しい山脈と空を制している。この種族には雄性が存在せず、主に鳥獣との間に仔を儲け、仔にはハルピュイアと鳥獣両方の特徴が宿る。稀にフェニックスなど特殊な個体との間に仔を儲ける場合がある。こちらも単騎での危険度はそこまでではないが、特殊個体の仔は例外で、単騎で竜を狩るほどの力を持つ場合もある。


 ライカンは、ケンタウロスやハルピュイアと異なり、人と狼二つの姿を行き来する能力を持つ。主に山麓や森林地帯に住居を構え、普段は人の姿で農耕を行い、狩りの際には狼の姿に変化する。意外なことに気性は穏やかで、友好的である。

 ただ同族を害された際の報復は苛烈で、彼らと共にあるフェンリル、ケルベロス、オルトロスらと共に、命を懸けて相手の息の根を止めるまで追い続ける。その生息域をケンタウロス、ハルピュイアに挟まれながら、彼らが生存していられるのは、この気質によりおいそれと手出しができないからだ。

 

 他にも湿地のラミアや、海のトリトン、地下のミノタウロス、放浪のパーンなどが有名どころだ。


 転生前、僕が猫神様に提示された中で選んだのは「アナウンスさんになること」。

 それが最もワンコを守ることにつながると思ったし、何よりワンコをあまり異形な怪物に転生させたくもなかった。自分の手で守りたいという想いもあったが、大した力はあたえられないという猫神様の言葉が決め手になった。

 転生前に鑑定スキルに組み込まれてからワンコと一体化する流れだったから、異世界の種族のことは理解していた。だからてっきりライカンか、彼らと暮らすフェンリルあたりに転生すると思っていたんだけど・・・

 

 

 

 

<Side ワンコ>

 

 ザパァーン、ザパァーン―――

 

 海岸線にせり出すように切り立つこの大岩は、私のお気に入りのスポットだ。遮るものがないから陽の光が燦燦と降り注いでいて日光浴には最適だし、気持ちの良い風が吹くから暑すぎることもない。

 

 私はワンコ。地球からの転生者だ。


 猫神様に、獣神様の作った危険な世界に行くって聞いてたから少し不安に思ってたけど、今のところ特に危険もなく穏やかな日々を過ごしている。

 お父さん曰く、ここは大陸から離れた離島らしい。大陸に生まれていたらもっと危険な目にあってたのかもしれない。

 

 あ、お父さんっていうのは私と一緒に来てくれたお父さん、、ややこしいから<トート>で、この世界のお父さんとお母さんは別にいる。

 トートは本当に心配症だ。今も周囲を見回して危険がないか確認している。多分私が寝ている間もずーーっと見張ってると思う。トートは常に私を守ることばかり考えている。

 

 朝になるとお腹がいっぱいになってる日があるから、こっそりレベル上げ?強化?がてら、何か獣を倒して食べているのかもしれない。私には危ないからダメって言うのに、トートずるい。

 このところは特にピリピリしてる感じがする。何でもお父さん、えっと、こっちのお父さんね、

 お父さんにライカンの王って人から念話で<キョーリョクヨウセイ>っていうのがあったんだって。念話ってゆーのは、トートが使ってた薄い板で話すやつみたいに、遠くでも話せるスキル?ってやつで、遠吠えよりも遠くまで届くんだよ。私はまだうまく使えないけど。

 それで、ライカンさんからは、子供が攫われて、さらった奴が海の方に逃げたから見つけたらギタギタにしといてって言われたみたい。ギタギタっていうのは、倒して食べちゃっていいってこと。できたら子供も助けて欲しいけど、たぶん死んでるって・・・悲しいね。

 私もギタギタやるって言ったんだけど、トートはもちろん、お父さんとお母さんからも反対された。みんなズルい・・・

 

 

 

 

<Side トート>

 

 父と話したところ、件のハルピュイアはよりにもよって、飛竜との間に生まれたはぐれの特殊個体らしい。

 気絶効果のある威嚇音に気を付ければ、そんなに苦も無く倒せる相手も、飛竜の仔ともなれば話は変わってくる。

 おそらく牙の通りずらい鱗や、ひょっとしたらブレスくらいは使ってくるかもしれない。父も同じ懸念を抱いたらしく、ライカン王を宥めて、どうにか詳しい話を聞き出そうとしている。

 正直、ワンコの安全を考えると協力の話を断ってもいいような気もするが、今後のライカンとの関係性やそもそもはぐれハルピュイアがこの島を縄張りにしない保証もない。そうなると、島付近の海域を縄張りにしているトリトンからも協力要請が入りそうだ・・・

 

 

 ライカンに転生すると思っていた僕の予想は、完全に裏切られ、わんこと僕は<スキュラ>として生まれた。

 

 鑑定スキルの端っこにあって、思い浮かびもしなかったその種族は、上半身は人間の体で、下半身は魚、更にお腹から6つの黒い狼の首が生えた異形の存在だ。僕の意識は、6つの狼のうちの1つに宿っている。

 残りの5つの首はワンコが自由に動かせる腕みたいなもので、ワンコの意識がないときは僕がコントロールすることも可能だ。伸縮自在で最大500メートルくらいは伸びるから、ワンコが眠った後でこっそり首を伸ばして狩りをしている。

 どうやら僕の宿る狼首は、他者を食べることでその形質を引き継ぐことができるようだ。この間、ようやく小型の水龍を食べることができて、固い鱗とブレスを得た。今ではワンコの狼首のうち、僕だけ千と〇尋のハク様みたいになっている。ちょっとワンコには申し訳ない。

 

 父と母は、ワンコが生まれた時から僕の存在に気づいていた。彼等の種族は、稀にだが首に別の意識を宿して生まれてくることがあるそうだ。そういう個体は強力な場合が多いので、むしろ歓迎された。転生のこともやんわり話したが、あまり気にもしていない様子で、ワンコの双子の兄のような位置づけで大事にしてもらっている。


 結局、猫神様は3つの提案の良いとこどりの方法で僕らを転生させてくれたようだ。最初からそう言ってよと思わないでもないが、猫なのにどこか疲れた印象を覚えるあの顔を思い出すに、かなりの無理を通してくれたんじゃないだろうかとも思う。おかげで僕は今度こそ、ワンコを守ることができる。

 

 先ほどから、この島に強い気配が近づいていることを感じている。父母も臨戦態勢だ。

 ワンコには、安眠効果のある薬草を与えておいた。僕以外の5つの首の動きは悪いが、元々僕と父母だけで叩く予定だったので、5つ首にはワンコ本体に巻き付き肉の盾になってもらう。

 

 

 今は、父6本、母6本、僕の計13本の狼首が島から首を伸ばし、ハルピュイアが迫る空を睨んでいる。さながら八岐大蛇ならぬ十三岐大蛇の様相だ。

 僕らが発する殺気のせいか、島からは虫の鳴き声さえも聞こえない。海も凪いでいて、恐ろしいほどの静けさに包まれている。

 二人より目の良い僕からは、既に大型の飛竜に迫る大きさのハルピュイアが視認できている。

 人間の女性の体であるべき部分にも硬質な鱗が見て取れる。あの異形ではハルピュイアの群れにはいられず、はぐれになってもしょうがない。

 残念ながら攫われたラインカンの子供の姿は見えない。だが人質がいないならば、こちらも容赦する必要はない。

 先ほどから喉の部分に淡い赤色の発光が見える。おそらく会敵直後にブレスを吐く心づもりなのだろう。


 

 数分の後、父母にもその姿が視認できたようだ。事前に情報は共有していたので、動揺はない。

 

 一瞬、ハルピュイアと目があったような気がした次の瞬間、その首が殊更に強く発光した。

 ブレスが来る!と思う前に、僕の口からは冷気、ハルピュイアからは熱線が放たれた。


 海上で2つのブレスがぶつかり、激しい爆発が起こる。爆発の余波で海水が巻き上がり一瞬お互いを視認できなくなるが、僕のブレスと同時にハルピュイアへと迫っていた父母の12本の狼は、臆することなく突っ込んでいった。


 ブレス直後の硬直で出遅れた僕が見たのは、体中を狼に噛みつかれたハルピュイアだった。地の利とブレスを奪うべく、父母は羽と首を中心に噛みついており、その高度は急速に下降していく。海に落とせば、海底で待機しているトリトンたちの協力も得られる。


 勝ったと思った瞬間、頭が割れるような咆哮が響く。ハルピュイアの威嚇音だ。海面が咆哮に叩かれ激しく波打っている。

 まさか首を噛まれた状態で放てるとは。鱗のせいで牙の入りが甘かったのかもしれない。

 間近で受けた父母の首が、海上へ落下していく。目や耳からの出血も見て取れる。 一瞬、父母に目を取られた隙に、自由になったハルピュイアは一気に上昇し、こちらに向けて急降下してくるところだった。


 まずい!このままでは首元のワンコにまで到達されるかもしれない。

 僕もハルピュイアに向けて一気に首を伸ばす。伸ばしながら全力でブレスを溜めた。至近距離で放てば、僕も巻き込まれるが確実に凍らせることができるはず・・・

 お互いの相対速度も相まって衝突までの時間は一瞬だった。

 それなのに、前世でのワンコとの思い出、今世で同じ生を生きた思い出が一気に思い出された。前の最後には経験できなかった走馬灯だ。

 

 

 ハルピュイアとの衝突の瞬間、僕は渾身のブレスを放った。ごめんワンコ、今度こそ守るよ・・・―――――


 

 

 

<Side ワンコ>

 

 朝起きたら、お腹についてる狼さんが一つ減っていた。

 どうやら昨日、子供さらったやつがきて、トートと父ちゃん、母ちゃんがギタギタしたみたい。そんときにトートも一緒にぼかんといったらしい。

 でも大丈夫。トートはきっと無理するだろうから、そういうとき身代わりになれるようにちゃんと猫神様にお願いしといたんだ。前の時はトート守ってあげられなかったからね・・・

 残った5つの狼さんのうち1つは、真っ白い狼さんになっている。後4回はトートを守ってあげられる。身代わり1回じゃやだって神様にいったとき、すごい困った顔してた。ごめんね。でもありがとう。

 

 今度は私もギタギタしたいなー!




犬と飼い主の人外転生  ―終わり―

長文お読みいただきありがとうございます。

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