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034.犬と飼い主の人外転生

2話完結の1話目です。

2020/9/24 飼い主の一人称を「僕」に変えて、少し言葉を大人しくしています。


 「この子を一人で危ない世界になんていかせられない!!!!!!絶対ついていきます!!!!!!!!!」

 

 

 《(・・・)》

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 私は、地球の異世界転生担当職員、一応、神だ。


 ある事情から猫の姿をしている。今日は、セルカークレックス。弾力があり、ふわふわした巻き毛が特長の猫だ。とても甘えん坊で寂しがりな庇護欲を刺激する見た目となっている。


 改めて、異世界転生担当職員とは、クライアント(異世界神)のニーズに合う人材(死者)を、異世界へ派遣する神級派遣事業者だ。クライアントから人材へオファーできる異世界転生特典のうち、最低限の特典を人材に渡しつつ、気持ち良く転生してもらうのが私の仕事だ。


 今回のクライアントは久しぶりの獣神からのオファーだ。もちろん前回とは違う世界の獣神だ。

※004-005.トリミング参照

 聖のケセランパセランによる獣神休眠事件は、驚くことに、他の獣神からは好意的に受け止められていた。

 彼ら曰く、そんくらい気合の入った転生者が好ましく、転生者に信仰を奪われたかの神が、少々不甲斐なかっただけとの認識だった。

 じゃあ何で上位神は私にペナルティ喰らわせたのかと疑問に思わないでもないが、今更蒸し返しても私の立場が悪くなるだけだ。(チクショウ・・・)

 

 今回の人材、いや、ワンコは、ミニチュアシュナウザー5歳♀。

女の子のヒゲを褒めるのもどうかとは思うが、立派なヒゲがよく似合う凛々しい顔立ちだ。ソルトアンドペッパーという毛色らしい。

 前回のビションフリーゼと異なり、作業犬で、幾分たくましい印象だ。

 活発で、ここにやってきた直後も、落ち着くまでひとしきり追い回された・・・すごく嬉しそうに来るものだから邪険にもできず、猫として遊ぶ羽目になってしまった。

 部下や上位神に見られたらと思うとゾッとする。

 

 死因は、散歩途中に暴走車に突っ込まれて事故死。飼い主がその体を盾に庇ってくれたが、なす術なく、飼い主ごと亡くなってしまった。

 今回のオファーは動物から人外なので、飼い主はここにはいない。確認すると輪廻還りの順番待ち中のようだ。


 転生特典は、車に轢かれても飼い主を守れるような強い獣になりたいとのことだった。

 フェンリル、天狼、ベアウォルフ、スコール、ハティ、ライカンなど狼系の人外因子を与えての転生になるだろう。

 勿論、人外向け基本パッケージ《記憶保持、念話、鑑定《小》、進化の素養》も忘れない。


 思い残すことは?と聞くと、異世界にいく前に飼い主にひと目会いたいとのこと。まあ、それくらいならと軽く応じたのが間違いだった・・・

 

 輪廻還り待ちの飼い主を呼び出して、ひとしきり事情を説明したところで、冒頭の会話になった。

 

 

 《いや、そう言われましても、あなたは転生の資格がないので行くことはできませんよ。

 それに何度も申し上げてますが、強力な種族への転生を考えてますし、きちんと両親もおりますのでご安心ください。》

 

 

 飼い主は、39歳男性。親の不動産を引き継ぎ、日々犬を愛でる悠々自適な生活を送っていたようだ。何か、はじめて実生活羨ましい人間がきたかもしれない。人材じゃないが。

 

 

 「そこをなんとか頼む。幸せにしてやるって誓ってお迎えしたのに、僕は守ってやれなかった・・・僕はこの子に助けられてばかりなのに。」

 

 

 そう言うと飼い主は、ワンコとの生活について語り始めた。ワンコもじっとして飼い主の話に聞き耳を立てている。

 

 

 「たまたま親が資産を残してくれたから生きていけてるけど、僕は、大学でも就職してからも、全く上手く行かなかった。

 会社辞めて引きこもりがちな僕に気を使って、知り合いのブリーダーさんが譲ってくれたのがこの子だったんです。

 ブリーダーさんも最初は自分で飼うつもりだったから、ペットショップや人に渡さずに、生まれて半年、手元で大事に大事に育ててたそうです。

 他にもワンコがいる中で育ったから、よく周りを見て考えられる賢い子でした。人間関係うまくいかない僕とは大違いです。

 お迎えしてからも、僕なんかの言葉をすごく理解してくれて。知人と電話始めたら、邪魔にならないよう静かにしてて、〈それじゃまた〉とか、〈失礼します〉って言葉で、電話終わったって判断して寄ってくるんです。

 それに僕が落ち込んでると、そっと側に寄ってきてお尻くっつけて横になってくれる。それが落ち込まないで、私を愛でてって言ってくれてるみたいで救われました。

 もう褒めていいのか、そんな気を使わなくていいよって言えばいいのかわかんなくなってしまう程でした。

 こんな小さな子がこんなにしっかりしてるんだから、僕も落ち込んでる場合じゃないって、少しずつ前向きになっていけたんです。

 せっかく親が残してくれた遺産。これからはワンコのためにと思って、シェルターやドッグラン運営しようと思ってた矢先の事故でした・・・結局、僕はこの子を幸せにできなかったんだ。。

 

 お願いです!僕はどうなってもいい!今度こそこの子を守る、幸せにするチャンスをください!!!!!」

 

 

 さっきから、何を言っても〈お願いします〉の一点張りで埒があかない。ワンコもどうにか飼い主を安心させようとして上手くいかずオロオロしている。

 お互いがお互いを想いやってる良いコンビだ。飼い主の想いも理解はできる。しょうがない。いくつか提案してみよう。

 

 

 《わかりました。わかりました。正直あまり気は進まなないですが、方法はあります。


 第一に、あなたの魂を神力に変換して、彼女に与えてスキルを強化する方法。彼女の生存率は上がりますが・・・彼女自身が望まないので却下ですね。


 第二に、精神体として彼女に憑依して異世界に行く方法。異世界関連の書籍に詳しいですか?あ、詳しい。でしたら、いわゆるアナウンスさんの位置づけです。鑑定スキルと融合させますので、他の獣にない強力な強みになるでしょう。ただ肉体がないので、彼女に触れることはできません。


 第三に、あなたの魂を彼女の肉体に組み込むことですね。例えばキマイラの蛇の尻尾にあなたの意識を組み込む形です。


 いずれにしても、あなたは人間ではなくなりますし、彼女がメインの転生ですので、あなた自身には大した力は与えられません。それでも一緒に行きますか?》


 

 ワンコは心配そうに飼い主を見上げている。果たして飼い主の出した結論とはーーーーー



――――――――――――次話《異世界編》に続く。

お読みいただきありがとうございます。

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