表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/57

033.雨男《異世界》

雨男の異世界編です。


短めです。神界→異世界→神界と早いタイミングで切り替わります。

《とある神界にて》

 

 

 

 『・・・ついに!』『我らの!』『出番がきた!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

 

 

 涔涔(しんしん)と静かに降り続く雨、どこか遠くでカエルが鳴いている。雨音に合わせるようにピアノの音色。世の中の不浄なるものを全て洗い流し、体だけでなく心にまで染み渡りそうな優しい雨の世界に、場違いな大声が響いた。

 

 その声に合わせて、雨は徐々に激しさを増し、風が吹き荒れる。先ほどまで聞こえていたカエルの鳴き声もピアノの音色も消え、遠くから少しずつ雷の音が近づいてくる。

 

 只人ならば、立っていることすらままならない世界で、大声の主たちは、平然と会話に興じていた。その声や表情は喜色に溢れており、余程のことがあったと伺える。

 

 

 『苦節30年・・・。我らが加護に足る魂を見つけたところまでは良かったが』

 『まさか、生れ落ちる場所が日本とは・・・』

 『彼の地は水源に恵まれ、雨への感謝が足りぬ』

 『<比較的>足らぬですよ。<比較的>。信仰そのものはしっかり残っております。』

 『・・・うむ。だが、我らが力を振るうに適さぬ土地ではあった。』

 『爪の先程の加護で、大変な水害を起こしてしまう。』

 『そんな苦悩ももう終わりだ!』

 『かの魂は我らが力を振るうに足る世界へ旅立った!』

 『異世界なれば、我らの力が届きづらいこともあろうが、そんなことは問題ではない!』

 『これまでのうっ憤を晴らす!』

 『我らの本気を見せてやろうぞ!』

 『既に日本の水分神(みくまりのかみ)、 水光姫命(みひかひめのみこと)、』

 『エジプトのハピ、ヘケト、』

 『メソポタミアのアダト、アルメニアのアストヒク、ゾロアスターのハルワタート、』

 『多くの水神、豊穣神にも声をかけてておる!』

 『我らが力が終結すれば、かの星も地球以上の水の惑星となる!』

 『そして我らが愛し子をかの星の神へと押し上げるのだ!』

 『『『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!』』』』』

 

 

 

■■■■■

 

 

 

《とある異世界にて》

 

 

 辺境の更に果て、小さなオアシスに寄り添うように、オアシスよりも更に小さな集落があった。


 10数人に程度のその集落に、その日、新たな命が生まれた。


 《レイメェン》と名付けられたその子が生まれた日、2年ぶりの大雨が降った。

 三日三晩降り続いたその雨があがると、地平線のはるか向こうまで続いていたはずの砂漠は、新緑の苔の絨毯に覆われていて、最早地獄と見まごうその様相は跡形もなくなっていた。


 それからも不思議なことは続いた。


 レイメェンが泣くと雨が降り、レイメェンが笑えば緑が生えた。レイメェンが怒れば水が湧きあがり湖となった。

 枯れた大地は、肥沃な大地となり、これまでの水を探して彷徨う日々が嘘のようだった。


 いつしか人々はレイメェンを神の子と崇めるようになる。

 レイメェンが悲しみ、雨が降りすぎないように、レイメェンが怒り、大地が沈まぬように、彼の機嫌を損ねぬように、神殿を建て、彼を納め、人目に触れぬようにした―――――

 

 

 

 

 涔涔(しんしん)と静かに降り続く雨、どこか遠くでカエルが鳴いている。その中に建つ神殿には、柱の一本、タイルの一欠けらに至るまで、精緻な文様が刻まれ、どこか触れ難い神聖な雰囲気を醸し出している。

 そんな神殿に場違いな電子音が響く。

 

 

 プルルルルル、プルルルルル・・・《はい。異世界転生事務局です》

 

  

 「あ、僕です。悪いですけど――――――――――――チェンジで。」ガチャ。

 

 

 ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、・・・・・《(あのバカ野郎ども・・・)》

 

 

 

■■■■■

 

 

 

《とある神界にて》

 

 

 目の前には和洋折衷、様々な神が並んでいる。装いからその姿形まで、全く異なる彼らの共通点はただ一つ。

全員が日本の伝統的な謝罪スタイル、《DO・GE・ZA》させられていることであろう。

 

 

 《まさか、私がこちら側に回る日がこようとは・・・

  お前たち、何をしてくれたかわかっているのか?》

 

 

 「あ、あの中間神様・・・」「こ、これには」「深い事情がありまして・・・」

 

  

 バンッ!!!!・・・《わかっているのか!?》

 

 

 「(・・・)」

 

 

 《たった3年だぞ、3年。異世界転生してたった3年で、神殿に閉じ込められて監禁状態。雨降らせて、緑の星にしたまではよかったよ。何で彼の感情に天候リンクさせた??そんなことしたら、他の人間が脅えるってことくらい想像つくだろ?》

 

 

 「いや・・・我らの愛し子が異世界人になめられたらいかんと思って・・・」

 

 

 《発想がヤンキーか!!

 せめて彼が大人になるまで手加減できなかったのか?逃げる間もなく監禁されてしまったんだぞ!》

 

 

 「でも・・・既に30年も待ってたし。もう我慢の限界で・・・」

 

 

 《私も今、お前らを消し飛ばすことを全力で我慢してるよ・・・。

 とりあえず彼が輪廻に還ってからも、かの星の緑化は保たれているから、クライアントからは特に苦情はないことが幸いだが、お前らしばらく謹慎してろ。》

 

 

 「「「ええ!?」」」「久しぶりに働けて楽しかったのに・・・」

 

 

 《はあ・・・そんなんだから、お前らに仕事任せられないんだよ・・・謹慎は決定!以上!》

 

 

 雨男  ―終わり―

お読みいただきありがとうございます。


豪雨災害を受けた各地域が、一日でも早く復興し、被害者の皆様が落ち着いた生活が送れるよう切に願っております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ