033.雨男《異世界》
雨男の異世界編です。
短めです。神界→異世界→神界と早いタイミングで切り替わります。
《とある神界にて》
『・・・ついに!』『我らの!』『出番がきた!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
涔涔と静かに降り続く雨、どこか遠くでカエルが鳴いている。雨音に合わせるようにピアノの音色。世の中の不浄なるものを全て洗い流し、体だけでなく心にまで染み渡りそうな優しい雨の世界に、場違いな大声が響いた。
その声に合わせて、雨は徐々に激しさを増し、風が吹き荒れる。先ほどまで聞こえていたカエルの鳴き声もピアノの音色も消え、遠くから少しずつ雷の音が近づいてくる。
只人ならば、立っていることすらままならない世界で、大声の主たちは、平然と会話に興じていた。その声や表情は喜色に溢れており、余程のことがあったと伺える。
『苦節30年・・・。我らが加護に足る魂を見つけたところまでは良かったが』
『まさか、生れ落ちる場所が日本とは・・・』
『彼の地は水源に恵まれ、雨への感謝が足りぬ』
『<比較的>足らぬですよ。<比較的>。信仰そのものはしっかり残っております。』
『・・・うむ。だが、我らが力を振るうに適さぬ土地ではあった。』
『爪の先程の加護で、大変な水害を起こしてしまう。』
『そんな苦悩ももう終わりだ!』
『かの魂は我らが力を振るうに足る世界へ旅立った!』
『異世界なれば、我らの力が届きづらいこともあろうが、そんなことは問題ではない!』
『これまでのうっ憤を晴らす!』
『我らの本気を見せてやろうぞ!』
『既に日本の水分神、 水光姫命、』
『エジプトのハピ、ヘケト、』
『メソポタミアのアダト、アルメニアのアストヒク、ゾロアスターのハルワタート、』
『多くの水神、豊穣神にも声をかけてておる!』
『我らが力が終結すれば、かの星も地球以上の水の惑星となる!』
『そして我らが愛し子をかの星の神へと押し上げるのだ!』
『『『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!』』』』』
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《とある異世界にて》
辺境の更に果て、小さなオアシスに寄り添うように、オアシスよりも更に小さな集落があった。
10数人に程度のその集落に、その日、新たな命が生まれた。
《レイメェン》と名付けられたその子が生まれた日、2年ぶりの大雨が降った。
三日三晩降り続いたその雨があがると、地平線のはるか向こうまで続いていたはずの砂漠は、新緑の苔の絨毯に覆われていて、最早地獄と見まごうその様相は跡形もなくなっていた。
それからも不思議なことは続いた。
レイメェンが泣くと雨が降り、レイメェンが笑えば緑が生えた。レイメェンが怒れば水が湧きあがり湖となった。
枯れた大地は、肥沃な大地となり、これまでの水を探して彷徨う日々が嘘のようだった。
いつしか人々はレイメェンを神の子と崇めるようになる。
レイメェンが悲しみ、雨が降りすぎないように、レイメェンが怒り、大地が沈まぬように、彼の機嫌を損ねぬように、神殿を建て、彼を納め、人目に触れぬようにした―――――
涔涔と静かに降り続く雨、どこか遠くでカエルが鳴いている。その中に建つ神殿には、柱の一本、タイルの一欠けらに至るまで、精緻な文様が刻まれ、どこか触れ難い神聖な雰囲気を醸し出している。
そんな神殿に場違いな電子音が響く。
プルルルルル、プルルルルル・・・《はい。異世界転生事務局です》
「あ、僕です。悪いですけど――――――――――――チェンジで。」ガチャ。
ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、・・・・・《(あのバカ野郎ども・・・)》
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《とある神界にて》
目の前には和洋折衷、様々な神が並んでいる。装いからその姿形まで、全く異なる彼らの共通点はただ一つ。
全員が日本の伝統的な謝罪スタイル、《DO・GE・ZA》させられていることであろう。
《まさか、私がこちら側に回る日がこようとは・・・
お前たち、何をしてくれたかわかっているのか?》
「あ、あの中間神様・・・」「こ、これには」「深い事情がありまして・・・」
バンッ!!!!・・・《わかっているのか!?》
「(・・・)」
《たった3年だぞ、3年。異世界転生してたった3年で、神殿に閉じ込められて監禁状態。雨降らせて、緑の星にしたまではよかったよ。何で彼の感情に天候リンクさせた??そんなことしたら、他の人間が脅えるってことくらい想像つくだろ?》
「いや・・・我らの愛し子が異世界人になめられたらいかんと思って・・・」
《発想がヤンキーか!!
せめて彼が大人になるまで手加減できなかったのか?逃げる間もなく監禁されてしまったんだぞ!》
「でも・・・既に30年も待ってたし。もう我慢の限界で・・・」
《私も今、お前らを消し飛ばすことを全力で我慢してるよ・・・。
とりあえず彼が輪廻に還ってからも、かの星の緑化は保たれているから、クライアントからは特に苦情はないことが幸いだが、お前らしばらく謹慎してろ。》
「「「ええ!?」」」「久しぶりに働けて楽しかったのに・・・」
《はあ・・・そんなんだから、お前らに仕事任せられないんだよ・・・謹慎は決定!以上!》
雨男 ―終わり―
お読みいただきありがとうございます。
豪雨災害を受けた各地域が、一日でも早く復興し、被害者の皆様が落ち着いた生活が送れるよう切に願っております。




