019.シャワー《異世界》
コメントありがとうございます!
今回はシャワーの異世界編です。002-003.温水洗浄便座付きトイレを読んでからの方がお楽しみにいただけます。
多少過激な表現があります。
《とある神界にて》
『ようやく落ち着きましたね―――』
今から100年ほど前、ある異世界人がこの世界に降り立った。あまりに多くのスキル・加護を得て転生した、その人物を警戒して、異世界神様は、過去の改変まで行い、数年間その人物の力を封印。
数年の監視を経て、危険はないと判断し、力は解放されたが、そこから思いもよらぬ結果となった。
異世界人は、この世界の厠を、秘密裏に<温水洗浄便座付きトイレ>なる、無駄に多機能なものに改変し始めた。あまりの不可解な行動に対応が遅れたことも拍車をかけ、すぐに、異世界人の属する国の厠は、全て<温水洗浄便座付きトイレ>となった。
最大の誤算は、何故か聖慈母神教会枢機卿が、気がふれたとしか思えない発表をしてしまったことだ。
「これはトイレを模した祈祷儀式用の祭壇遺物であり、神に自身全てを晒すことで、祝福を得ることができる。」
あの清廉潔白を絵にかいたような枢機卿にとって、異世界のトイレはあまりに刺激が強すぎたのだろう。
局部に温水を当てられたときの枢機卿の表情は、悍ましい記憶として、私の脳裏にへばりついている。
この発表のせいで、信者は熱心にトイレでの祈祷をはじめ、評判を聞きつけた他国までもが追随した。調子乗った異世界人は、世界中の厠を<温水洗浄便座付きトイレ>に改変した。
結果、トイレで下半身を露出しながら祈祷する人々の想いが神力として、地母神たる私に流れ込んだ。その祈祷の姿と共に。
想像して欲しい。老若男女を問わず、下半身を露出した人たちが、局部に温水を当てながら、一心に祈る姿を。あなたには伝わるのだ。その表情と共に、強い祈りが。
「息子の商売がうまくいきますように――」
「母の足がよくなりますように――」
「来年が実り豊かな年になりますように――」
「痔が治りますように――」
最後の祈りなど、祈りの強さと表情のせいで、最早忘れることができない。《(うっ・・・)》 思い出してしまった・・・
私は神託を以て、異世界人を<現人神>に指定し、彼女経由で神力を受け取ることにした。これで、余計なイメージを見なくていい。多少、彼女に神力が吸収され、若返りや不老不死の恩恵を与えてしまうが背に腹は代えられない。
それに私が手を下さなくても、彼女は人々の尊敬を集めてしまっていた。遅かれ早かれ、死後、英霊となり亜神に至っていた可能性もある。私はこれが最良の選択であると確信していた。
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《とある異世界にて》
とある国の王宮の一室。中でも格式の高い王族専用の応接室に、場違いな声が響く。
「まさか姉ちゃんが<神>になってるとは思わんかったな――」
そう言ったのは、顔立ち、服装や装飾品は煌びやかで、明らかに王に連なる一族であるが、所作に粗々しさの目立つ女性。相手が相手なので、下座に座っている。
『私も、またあんたに会えるとは思わんかったよー』
そう答えたのは、上座に座る神官服を着た女性。神々しく、目を凝らすとその背後に後光が指していることがわかる。この会合は、かの国の第三王女のたっての願いで実現したものだった。
現人神を呼び出すなど恐れ多いことだが、かの柱はフットワークが軽いことで有名だった。実は、本日も他国への視察帰りのセッティングだった。
護衛も侍女も神官も下げられ、二人きりで思い出話に花を咲かせた。その内容は随分殺伐としたものだったが。
『え?あんた人殺してしもうたん??』
「だって、姉ちゃん轢いたやつやで。自首せんと逃げよるし。ボンといってやったわ!」
『私、全然おぼえてないけ、別によかったんやけど。どうせなら、私の会社の方、やって欲しかったわ。』
「姉ちゃんこそ、神様がそんなこと言うてええの?」
『私もなんで神様にされとるんかようわからんのんよねー。あ、そういえば、あんたどんなスキルもろうたん?』
ようやく殺伐とした会話が終わり、もらった転生特典の話になった。ここから地母神にとっての誤算が始まる。
「ふふふ。聞いて驚くことなかれ。<シャワー>スキルよ!」
『おお。あんたシャワー好きやったもんね』
「そういう姉ちゃんはやっぱり、トイレやね。王宮のトイレがウォッ〇ュレットやったときは、笑ったわ」
『感謝してよね。こっちのトイレ、スライムぼっとんでほんまにひどかったんやから。
ちなみにシャワー、あんただけしか使えんの?私に使える?私のトイレみたいにシャワー設備を作る感じかな?
あと、できれば、この国とか、他の人も使えるとええなあ。トイレは作って大分改善されたし、サウナとかもあるんだけどねー、まだまだこの世界の人、公衆衛生の意識薄くてね。できれば定期的に体洗って欲しいんだけど』
「おお、姉ちゃん、ちゃんと<神>しとるね。残念やけど、設備を作るんじゃなくて、魔法でシャワーを出せるスキル。
水流抜群で、温度調整も細かくきくし、最後に乾燥まで可能。
流石に服着たままとはいかないけどねー。効果範囲は残念だけど、家族に限定されちゃったよー。転生事務局員?だっけ?けち臭いよねー」
『ふーーーーん、そりゃ残念。でも何かスキル作ったり色々するのにも神力いるみたいよー。大勢の人の祈りが必要だから、おいそれと作れないんじゃないかな。私の時はかなり大盤振る舞いしてくれたみたいだから、それが響いてんのかもね。あ!ちなみに私は家族判定になるのかな?』
「おお!確かに。ちょい手だしてみて。<シャワー>!」
『あーーー!?こんないい部屋びしゃびしゃにしてからに...でも出たね。手だけだけど、結構いい気持ち・・・これなら行けるかな。』
「てか、姉ちゃん、トイレ出せるならシャワーくらい余裕なんじゃないの?」
『それがさー、神になっちゃうと、色々できること限定されるみたいなんよね。トイレも今は、魔法研究所の魔術師に一任しとるしね。
シャワーは、あんたを介して、私の力使えばいけると思う。』
「あれ?家族の縛りわ?どうするん?」
『そこは私、この世界の現人神だからさ。人類みな家族ってもんよ――――』
王女と現人神の会談より3か月、聖慈母神教会は新たな祈祷儀式の様式について、発表を行った。
一、毎週、金の月の日、
生まれたままの自分を思い出し、
この世に生まれ落として下さった地母神様への
感謝の気持ちを以て、天を仰ぎ見ること
二、天より地母神様の慈愛の聖水降り注ぎし時は、
その聖水で体を洗い清めること
三、聖水への感謝と共に、
心よりの祈祷を捧げること
毎週末、全裸で外に出て、降ってくる温水で体を洗って、キレイキレイしたら神様にありがとうって言おう。要するにそういうことだ。
「へー、姉ちゃんうまいこと考えたもんやね。でもなんで地母神にありがとうって言うんだ?やってんの姉ちゃんじゃん?」
『地母神様には、もうトイレ絡みの神力分けてもらってるし、色々お世話になってるから、何かお返ししたいって思ってたんよねー。トイレと違って、みんなで一斉にあびるシャワーなら、みんなのシナジー発揮して、もっと強い祈祷になるし、得られる神力も多いと思うんよね。』
「ふーーん。あ、全裸で外出て恥ずかしくないもんかね。ウチは気にせんけど、女襲うアホとか出たらまずくない?」
『この世界の人たち、神様絶対だからね。私も世界中まわってるけど、襲うどころか、私に気づいて、野盗が自首してきたこともあるよ。教会が儀式って言ってる中でバカやる人はいないかな。』
第一回目のシャワー祈祷は、現人神の予想通り、大きなトラブルもなく盛況の元に終わった。あえて挙げるとすれば、あまりの気持ちよさに祈祷したまま失神する人、祈祷終了後も感動のあまり祈り続ける人が続出したことだろうか。
そして、シャワー祈祷と同時刻、天界には地母神の悲鳴が響き渡ったという――――――
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《異世界転生におけるクレーム検討会》
『では、私から今回のクレーム報告の後、中間神への沙汰を言い渡す。何度も経験していること、確認の必要はないと思うが...よろしいか?』
「あの上位神様、今回の件はですね、その、、、」
バンッ!!!!・・・『よろしいか?』
「はっはい・・・」
『度々のことで誠に遺憾だが、またあの世界の慈母神からのクレームもとい悲痛な叫びがあった旨、報告があった。その内容は前回以上に悲壮で、正直この場で報告することは躊躇われる内容ではあるが、再発防止の為にも報告させていただく。』
「(・・・)」
『中間神の手により転生された転生者が、件のトイレ現人神の関係者であることが発覚。10数年の監視の結果、特に異常はなかった為、一柱と一人、両名の面会を許可したところ、面会当日に新たな祈祷儀式を考案。
それはシャワー祈祷と呼ばれ、その三か月後には第一回の儀式が実行された。天命を持つ神からすれば、三か月など瞬きの時間にも等しい。地母神からしてみれば、まさに寝耳に水の事態であったろう。
件の枢機卿の手により、事前に国内だけでなく、全世界へ流布されたこともあり、ほぼ全世界人が一斉に儀式に参加。全世界人の祈祷の共鳴現象が発生し、共鳴により発生した膨大な神力が地母神へと押し寄せた―――』
(それはいいこと何じゃ...)
ギロリ
(・・・)
『膨大な神力には、それ相応の祈りが付随する。今回の儀式形態―――正直口にするのも憚られるが、全裸の老若男女のイメージが、更に増幅され、地母神に一気に押し寄せた・・・
結果、地母神の精神は崩壊し、あわや消滅かというところまで追い込まれたが、権限を現人神に移譲後、何とか自身を封印、事なきを得た。
封印直前のあまりに悲痛な叫びが、こちらまで届き、何とか実態を把握できたが、一つでも選択を間違えば、誰も状況を把握できない中で、一柱が消滅、神不在の事態を招くところであった。
前にも言ったが、たかが転生で、なぜ神を消滅寸前まで追い込むのか?』
「・・・今回の転生者の特典には制限かけてましたし、まさか現人神の関係者とは思いもよらず...」
『魂の色や精神の形で容易に確認できたのでは?』
「(・・・)」
『流石に二回目ともなれば、情状酌量の余地はなく、その責任は重く、全く以て看過できない!中間神には、■□■年間の職務停止!謹慎を言い渡す!』
「(え??)」
『しばらく顔も見たくない!以上!』
「・・・え?休暇もらえた??」
シャワー ー終わりー
お読みいただきありがとうございます。
茨〇県の県庁近くに水戸〇門クリニックなる、人間のある部位を専門に診られるクリニックがございます。強い祈りを持ちの方は、ぜひお越しください。




