018.シャワー
二話完結の一話目です。
002-003.温水洗浄便座付きトイレの話と関連あるので、そちらお読みになってからの方が、
よりお楽しみいただけると思います。
転生者が花火職人さんの話ですが、花火職人さんについての知見がないので、知らずに失礼なこと書いてましたら、スルーしていただければと思います。
僕の故郷でも数万発の花火が打ちあがるイベントがありまして、子供心に圧倒された思い出があります。はやく感染症が収束して、花火大会が楽しく開催できる日がくるように願っております。
「はあ?風呂?違うだろ!熱いシャワーをがんがんに浴びるのが気持ちいんだろうが!!」
《(・・・・・・)》
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私は、地球の異世界転生担当職員、一応、神だ。
異世界転生担当職員とは、クライアントのニーズに合う人材を、異世界へ派遣する神級派遣事業者だ。
クライアントから人材へオファーできる異世界転生特典のうち、最低限の特典を人材に渡しつつ、気持ち良く転生してもらうのが私の仕事だ。
一般的なケースだと、基本パッケージ(記憶保持、異世界言語、鑑定《小》、成長補正《小》)辺りに、オプション機能を少しつければ、気持ちよく旅立ってくれる。
ごく稀にだが、先に転生した人材の家族が、新たな人材としてやってくることもある。
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今回の人材は35歳女性。花火職人。珍しい職業だな。ちなみに地球の日本には、女性の花火職人は10数人しかいないらしい。5年前、7歳上の姉を交通事故で亡くしている。どうやらトラックによるひき逃げ事件だったようだ。
なんとこの人材は、指名手配されていたひき逃げ犯を、独自の調査で補足した挙句、自作の花火を持って、ひき逃げ犯に突貫。
美しい星を描きながら、ひき逃げ犯もろとも爆死したらしい。
ちょっと特殊な人材きてしまったな・・・
とりあえず話を聞くかと、気を取り直して、目の前の人材を見る。
炎天下で作業することもあるからだろうか、肌は日に焼けて黒い。髪は短く切り揃えられている。女性にこういう表現は失礼かもしれないが、精悍な印象を受ける。
先ほどから落ち着きなくキョロキョロと周囲を伺っている。
「おい!あんた!!ここどこだ?あいつは?あいつはどうした!!」
《ここは神界。いわゆる死後の世界です。あなたは亡くなりました。あいつというのがひき逃げ犯のことでしたら、彼も死亡して、既に輪廻に還っております。あなたは、異世界転生の適性があったため、ここに連れてこられました。
申し遅れましたが、私は、あなたの異世界転生を担当いたします事務局員です。一応<神>という立場におります。》
「そうか。あいつも死んだか。ふふふ。あんなゴミムシが綺麗な花になって死ねたんだ。感謝して欲しいな。あ、、おい、輪廻ってことは、あいつは生まれ変わるのか?」
《そうなります。ただし記憶や心は失って、真っ新な状態からの新しい生になります。また人になるのか、虫になるのか、鳥になるのか。その辺りは運命神の管轄なのでわかりませんが。》
そういうと、心底愉快そうな顔をして、彼女はこう言った。
「お!あいつが虫になるとか最高だな。爆発したんだからミイデラゴミムシかな。運命神て奴にセンスがあれば、ミイデラゴミムシ一択だな!!あー、清清した!で?私はどうなるんだ?」
《あなたの選択次第ですが、ひき逃げ犯のように輪廻に還るか、それとも記憶と心を残して、別の世界で生きていくかですね。》
「あーーあいつと一緒にゴミムシになるとか笑えねえな。だったら別の世界って方を選びたいんだが、どうすりゃいい?」
そこで、いつもの転生特典の話を説明していたところ、彼女から「そういえば、異世界にシャワーってあるのか?」と聞かれた。
一般向けにはサウナ風呂、貴族向けには湯を張ったお風呂が浸透してますので、そこまでご不便ないですよ、と伝えたところで、冒頭の会話に至った。
「ぼんやり風呂になんて入ってられるかよ。ぼーーっとしてたら、余計なことうじうじ考えちまうだろうが。一日の汗をあっついシャワーでがーーーーーーーーーーっと流して、ついでにその日にあった嫌なこととか全部流しちまうんだよ。
仕上げに水シャワーだ!頭はすっきり冷たく、でも心にはしっかり熱を残す。これで翌日も頑張れるってもんだよ。」
《(・・・実現に必要なのは、繊細な温度のコントロール用に、魔法適正《大》あたりだ。
魔力量は、魔力量《中》・魔力自動回復《小》、水と火は、水魔法《中》、火魔法《中》あればいいだろう。後は生活魔法の《乾燥》。多少コストは嵩むが、転生先の世界は信仰が強く、神力は潤沢と聞いている。問題ないだろう。)
わかりました。シャワーそのものではないですが、魔法で実現できるようにいたします。》
「お!話がはええな。ちなみにそれは、ウチ一人専用か?仲良いやつができたら、そいつにも使わせてやりたいんだが。」
《(シャワーくらいなら大丈夫だと思うが、制限かけなかったせいで世界中トイレだらけにされて、とんでもない目にあった件は、まだ記憶に新しい――)
際限なくとはいきません。ご家族のみに限定させていただきます。》
「ケチくせえな。まあ、いいか。ちなみに、次何になるかはわかってるのか?」
《(平民でシャワーは、トラブルの元かもしれない。いっそ大貴族いや――)異世界にある小国の王女に生まれることになっています。》
「ええ?ウチが王女ってがらかよ!まあ、慣れないことに挑戦するのもいいか。わかったよ。」
多少、不服な様子だが、どうやら納得してくれたようだ。
《では、スキル付与と共に異世界に送ります。どうか良い生を――》
私の指先から彼女に向けて、ゴルフボール大の小さな光が放たれ、彼女の胸に吸い込まれていった。
それと同時に、彼女の輪郭がうっすらとぼやけて消えていく。
見慣れた現象を眺めながら、彼女を見送る体でぼんやりしていると、声をかけられた。
「最後に一つ聞きたいんだ。やたら草臥れた様子の、トラックに轢かれたって女がこなかったか?仕事はSEやってるって言ってたが、そいつどうなったか知らないか?」
《そういえば以前、そんな女性がいましたよ。あなたと同じ異世界に送りましたが、それが何か――》
「おお!そいつは姉ちゃんかもな!向こうで会えるん楽しみだ!神さん!色々ありがとうな!!!!!!」
そういって消えていった彼女の方を眺めながら思った・・・あ、またやらかしたかもしれない。
――――――――――――次話《異世界編》に続く。
ミイデラゴミムシはテラ〇ォーマーズで知りました。




