017.魔法監査《異世界》
魔法監査の二話目です。
仲間のイメージ魔法師達の魔法にネチネチネチネチ指摘するお話です。
少々過激な表現ありますので、お気をつけください。
《とある異世界にて》
あるところに、魔法大国と呼ばれ、並み居る大国を退け、一時代を築き上げた強国があった。
その魔法大国の魔法は、その強力さもさることながら、厳格に管理された威力・精度をはじめとする体系化された魔法の品質が、他国の追随を全く許さなかった。
その背景にはある魔法監査技術者の暗躍があったという―――
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<魔法学院入学試験の監査>
「私、木の的に当てろって言いましたよね。え?他のやつは的を揺らしただけだが、俺は全部吹き飛ばしたって??
じゃ、何ですか?
あなたは要人の暗殺を目論む敵の工作員の頭を射抜けと言われて、工作員を魔法で昏倒させた同級生より、要人ごとぶっ飛ばした自分の方が偉いとでも?
ん?そんなこと聞いてないって?私もこれが威力を見る試験だなんて初めて知りましたよ。あなたは誰からお聞きになったんですか?」
「(・・・)」
「とりあえず、これが射程、これが威力の調整の文言です。無詠唱ゴリ押す魔力があるなら楽勝でしょう。しっかり覚えることをお勧めします。あなたが国の機関に所属するなら、また私の監査を受けることになることをお忘れなく。
次同じことがあったら、あなたの大切なものは真っ赤に染まることになるでしょう。何がとはいいませんけどね・・・」
監査を受けた学生は、後に治療魔法スナイピングという、治療魔法の属性を与えた魔力弾を遠距離で精密に命中させる技術を開発した。
なお頭部もしくは頸部に命中した魔力弾は、相手に衝撃を与えることなく体内に浸透し神経伝達を阻害、一瞬で相手を行動不能あるいは、呼吸器系の神経信号断絶による窒息死に至らしめる効果があった。
この魔法の最大の利点は、魔法の痕跡がわずかである上、残った痕跡も治癒魔法であることから暗殺の疑いを最大限隠蔽できる点である。
治療魔法スナイピングは、王の直轄暗部《闇詠》における必須技能兼秘伝とされた。厳重な警戒体制の中、わけもわからず死んでいく仲間の姿を目の当たりにした、王に敵対する貴族派の貴族や、他国の工作員達は、あまりの恐怖にショック死するものまでいたという。
学生自身も《闇詠》に所属し多くの内患外憂を取り除いた。
<無詠唱治癒魔術師の監査>
「ここ内出血残ってるし、ここは肉が盛り上がっています。
これなら自然治癒の方がよっぽどきれいに治ります。
出力のバラツキが大き過ぎます。
私だったら、あなたには絶対に治療されたくないです。しかも治癒過程の痛みも全く考慮されてないですし。
これが同僚の腕ではなくて貴族の女性の柔肌だったら、あなたは死罪です。
こちらの患者は感染症ですよね?
通常、薬師の処方薬との併用治療では?
細菌への効力押さえずに、イメージで生命力強化をした結果、感染が広がっています。
抵抗力の強い大人だからよかったものの、子供だったら後遺症のリスクもありました。
はあ。
あなたの治療も含め悪ふざけはここまでときましょうか。結論としてあなたに治療は早すぎる。
王室にはその旨、報告させていただきます。
私としては、自主的に学生からやり直しすことをお勧めいたしますよ。この忠告聞かなかった時はーーーまあ、よく考えてみてください。」
この監査を受けた魔法医師は、後に、難治と言われた多くの患者を救う名医となる。
その手法は、精緻な人体模型に、細かな詠唱記述を施した魔法医具を媒介にして患者の治療を行うというものだった。
またバイタルを安定させる魔法、局所的に痛みをとる魔法など、これまでにない用途に応じ体系化された、医療魔法を開発した。
某魔法監査人は、後に、魔力コントロールが優れたものであれば、誰もがその魔法を、同一品質で再現できるように開発された、まさに医療のための魔法であると評している。
<魔法騎士団の監査>
「身体強化ですか。すごい筋力ですね。まずは、その状態で、グランド10週走っていただいてもいいですか?極力同じスピードでお願いしますね・・・
・・・一週目と二週目のタイム5分も違います。
体への魔力の通りもバラバラです。そこ、なんで今腹筋強化したんですか?毎分5%は無駄な魔力出ていると思われます。
元々魔力量や放出系に問題あって身体強化に注力していることは理解できますが、だからこそもっと細部までコントロールすべきです。
え?短期決戦だから不要とおっしゃるんですか?
仲間達には決戦終わってポンコツになったあなたを守れというわけですか。いいご身分ですね。
私と決闘ですか。ではこれ魔力と体力回復ポーションです。さあ、仕合いましょう。」
・・・
「あなた初見殺しなんです。種が知れてたら、敵は殻にこもります。
あなたが一生懸命殻壊して攻撃届けようとしてる間、私はゆっくり詠唱できました。それであなたが疲労したところで――先ほどの結果の通りです。
ん?動かなければいい、ですか?それこそ私に詠唱の時間をくれているだけです。
その場合、あなたの強化でも敗れない拘束魔法発動してまずは動けなくするでしょう。その後、あなたは赤い地獄を見ることになるでしょう。」
この監査を受けた騎士は後にこう語っている。
あの監査のおかげで、自分が自分の魔法が短期決戦にしか用いることができないと思い込んでいたことに気づかされた。
詠唱と一部入れ墨を組み合わせた解剖学に基づく局所的な身体強化により、70%以上の魔力の削減に成功、持久力と瞬間出力も大幅に向上された。
そして何よりこの強化で助けられた仲間の命もあったし、自分自身も何度も窮地を脱することができたと。
最後に、監査人の物言いや性格について質問しようとしたところ、質問を遮り、彼は言った。
「赤の地獄は本当にやばい。同じ目にあいたくなければ、同じ質問は、誰にも二度とするな。」
このインタビューを行った記者は、ある日の新聞において、魔法大国の魔法の品質について、様々な魔法分野で活躍する人物へのインタビューを添えながら賞賛したが、少々偏執的である旨のコメントも残した。
その翌日、記者は自宅で昏倒し、その二日後に、大通りの真ん中において全裸で発見された。体の一部は真っ赤にはれ上がっていたと報告されている。
事情徴収に対しても、何も覚えていないを繰り返しており、真実は闇の中である。
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《とある神界にて》
「(うちの労働環境にも外部の上位神の監査とか入らないかな。
上司が鬼畜すぎる・・・チラっ)」
『ん?どうした?
そういえば、最近知ったのだが、何でもとある異世界では、手に負えん出来損ないには、赤い地獄を与える文化があるようだな。
この歳になって新しいことを知るのも珍しいので調べていたのだが、最近珍しいものを手に入れてな。
邪神が好むイービル・キャロライナ・リーパーなる地獄の植物なのだが、お前、興味あるか?』
「(・・・)」
魔法監査 ー終わりー
お読みいただきありがとうございます!




