016.魔法監査
二話完結の一話目です。
一つ前が割と重めだったので、ちょっとお馬鹿成分多めでお送りしたいと思います。
少々残酷な表現がありますのでご注意ください。
また、本話に他者様の小説を批判する意図は全くございませんので、馬鹿な話だなと思って流してください。
「僕は、魔法はイメージだなんて言ってるやつをけちょんけちょんにしてやりたいんです!!!!!!!!!」
《(・・・)》
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私は、地球の異世界転生担当職員、一応、神だ。
異世界転生担当職員とは、クライアントのニーズに合う人材を、異世界へ派遣する神級派遣事業者だ。
クライアントから人材へオファーできる異世界転生特典のうち、最低限の特典を人材に渡しつつ、気持ち良く転生してもらうのが私の仕事だ。
一般的なケースだと、基本パッケージ(記憶保持、異世界言語、鑑定《小》、成長補正《小》)辺りに、オプション機能を少しつければ、気持ちよく旅立ってくれる。
だが、世の中には私の天敵とも言える人材が存在する。それは―――地球の日本において、異世界転生モノのライトノベルを読み込んでいる人材だ。彼らは、異世界に対する、私では想像もつかないような、強い想い入れを持っている。
今回の人材は、そんな中でも筋金入りのようだ。
20歳男性。若い体に任せて、寝食も忘れ何日もライトノベルを読み漁っていた。真夏の時期、ゲリラ豪雨と落雷でエアコンが止まったことに、雨が上がった後も気づかなかった。
何か暑いなと思いながらも、熱中して読み続けたところ、熱中症により意識喪失。以前から、同じような生活習慣だったためか、周囲に気づいてもらえずそのまま―――
《(・・・下手に転生特典提案したら、矛盾指摘されて言いくるめられそうだ。好きな傾向とか押さえておきたいが―――ん?特に魔法による成り上がりものとか魔法開発ものを好んでいたようだ。長く格好良い詠唱に目がないと。
最初からチートと言うよりは、多少不遇でも、自分で鍛えて、実力を発揮していくほうが好みのようだ。
話をしっかり聞くふりしつつ、ポテンシャル系のスキルを薦めれば、転生時点でのチートは回避できるかもしれない。)》
目の前にいるその人材は、もうある程度状況を理解しているようで、期待にあふれた視線を私の方へ送っている―――これは予想以上にめんどくさいことになりそうだ。
《既にお察しかもしれませんが、あなたはお亡くなりになりました。ここは神界。私は、あなたの異世界転生を担当いたします事務局員で、一応<神>という立場におりま―
「うおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!
異世界転生きたーーーーーー!!!!!!!!!!」
す。はい。》
既に興奮しすぎなその様子に、嫌な予感を覚えながら私は続けた。
《あなたが、書籍により異世界転生の知識を蓄えていらっしゃることは把握しています。なので、ざっと先にこちらの説明流させてもらって、最後に色々不明点や、特典のご要望いただければと思います。では―――》
最初から、色々質問されて話が進まないのも困るので、前置きして、転生する世界や基本パッケージのこと、渡せる特典・渡せない特典について一気に説明した。特に渡せない特典のところで、盛大に首を捻っていたが、今はその矛盾や隙間を見つけるためか、必死に考え込んでいるようだ。
《本来はあまり渡していないんですが(嘘ですが)、あなたが魔法好きなのは知っておりますので、特別に魔法適正《大》・魔力量《大》・魔力自動回復《大》、こちらの三点をお渡ししたいと思います。》
そこまで、説明したとろで、何かを考えながら私の話を聞いていた彼が、はじめて口を開いた。
「私が行く世界の魔法の発動は、どのようにされていますか?」
《基本は詠唱です。魔法の発動座標、出力、効果範囲などのパラメータが細かく詠唱に設定されています。》
私がそう答えると彼はうんうんと大きくうなずきながら、納得した様子だったので、こう続けた。
《ただ、戦闘の場合は、瞬間威力と発動スピードが重視されるので、無詠唱や短縮詠唱が好まれるようです。何も言わずに急に発動する無詠唱は、やっぱり皆のあこがれで、これができると人気が――
「信じられない!!!!!!!!!!!!」
って、え??》
「いいですか!無詠唱なんて危険極まりないものがもてはやされるなんて信じられません!
きっと魔法はイメージだなんて語るクソヤロウがいるんでしょうが、人間の記憶やイメージなんて、ひとかけらだって信用になりません!
人は自分の都合にいいよーに記憶を改変しちゃうものなんです。要は、昨日使った魔法と、今日使った魔法は全く別物になっちゃうんです。
それに気分によって、記憶の感じ方やイメージへのバイアスの入り方全然違うでしょ。
戦場で無詠唱が好まれるって、そりゃ目の前が敵一色だったらそうでしょうけど、敵味方入り混じってるときに、昨日彼女にフラれてイライラしてる魔法師がイメージで魔法行使して、味方ごとぶっとばしちゃいましたテヘペロじゃ、笑えないでしょ?
これが街中の戦闘で、民間人まざってたら、どうするんですか。昨日ちょっと飲みすぎてイメージぶれちゃったから、お宅のお子さんもぶっとばいちゃいました!なんて話が出た日にゃ、僕が親だったら、その魔法師、詠唱たっぷりの魔法で、生きながらミキサーにでもかけてやりたい気分になりますよ!」
何が彼の逆鱗に触れてしまったのか、これまでの表情を一変させ、一気に捲し立てた。
「攻撃魔法ならまだいいですよ。これが治癒魔法とかだったらどうしますか?解剖学の知見もない奴が、イメージで血管やら神経繋げるんですか?
ライトノベルでもうまくいった描写よく見ますが、信じられません。何年か後に、ガン化して死亡とかしてないですよね?
それに、治療してる箇所に他人の血液とか細胞ついてたら、どうしてるんですかね?イメージに合わせて一緒に復元されて、その部分壊死したりしないですかね???
後は、精神感応系のスキル使われて、精神ハッキングされて、イメージ捻じ曲げられたらどうするんです?相手を爆散させる魔法のイメージ変えられて、自分が汚い花火になりましたとか、はっはっはーーーー超笑えます!!!!」
《(こいつ、良い性格してるな。怖すぎる・・・)》
「そういうトラブルなくすために、詠唱があるんでしょうが、詠唱が。理にかなっていて、美しい。そして何より格好いい。中二心をくすぐることで、いつまでも僕に青春を思い出させてくれる詠唱。
口に、体に、心に沁み込ませて、気絶していても、死の間際でさえも全く乱れることなく紡がれ、発動する―――
ああ、詠唱こそが心理!!!!!!
詠唱こそが神!!!!!
《(神は私だけど。)》
僕は―――」
ここで冒頭の会話に戻る―――
――――――――――――次話《異世界編》に続く。
私個人としては、銃をイメージした魔法とか大好物です。




