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015.人畜無害《異世界》

人畜無害の異世界編です。

読まれる前に、前話を確認頂いて、苦手な方はスルーしてください。


《とある異世界にて》


 とある異世界の辺境の国の、これまた辺境にある小さな開拓村。

そこにいつもニコニコと人好きする笑顔を浮かべた青年がいた―――――

 

 

  

■■■■■

 

 

 

 辺境の開拓村はとても貧しい。行くあてのない人々が、国の事業の募集を受けてやってきた未開拓の危険な土地。

 

 国としてもダメ元の事業のため、予算は少なく、道具も食料も潤沢ではない。唯一潤沢なのは、村民の人数だけ。

 犯罪者、借金持ち、戦争で故郷を焼け出された人たち。そんな人たちが、次々と送り込まれる開拓村は、人数だけは豊富だった。


 一年、かなり節約すれば食いつなげる食料だけが彼らの財産。元々仲間意識もなく、奪って食いつなげばいいという思考の持ち主の方が多い。

 開拓は遅々として進まず、昨日は獣が村に入り込みけが人が出た。最早、略奪・殺し合いが起こってもおかしくない、そんな空気の開拓村に、その青年はやってきた。


 最初から何が可笑しいのかその青年はニコニコと笑っていた。ただ不思議と、見回りの兵のような嘲笑とは思えず、心底幸せそうで、心が温かくなる笑みだと感じられた。

 いつもなら、難癖付けて殴り掛かる無頼者達も、どこか毒気を抜かれて、あいつは気がふれてるだけだと相手にもしなかった。

 

 青年は人一倍働いた。

 

 決して力が強いわけでも、特殊な技量があるわけでもなかったが、淡々と一歩一歩開拓を進めていた。

 木を伐り、切った木で家や柵を作った。切り株を取り除き、雑草を抜き、土を耕し、種をまいた。

 水をやり、肥料を与え、また雑草を抜き―――そんな作業を延々と繰り返した。

 

 青年は丈夫だった。

どんなに長い時間働いても、どんなに眠くても、どんなに痩せても倒れなかった。いつしか、村人の多くが食いつなげる収穫が得られたときも、彼は多くを、他の村人に渡して働き続けた。

 ずっと笑顔を浮かべながら。

 

 その内、近くの山が鉱山であることがわかった。その頃には、村人はすっかり青年を認め、一丸となって働くようになっていた。村人と青年は、危険な鉱床の中で、時に死人までも出しながら、必死に採掘した。

 

 その甲斐あって、開拓村が大きな村に、そして街になる頃には、青年は老人と呼ばれる年になっていた。

 街の住民は、長年貢献してくれた老人に、穏やかな余生を過ごして欲しいと望んだが、老人は、頑なに街のために働きつづけた。

 息を引き取る前日まで、街の清掃や子供のお守り、若者の悩み相談など忙しくしていた。


 最後の時、ベットの中でも老人は笑っていた。老人の周りには多くの人がつめかけた。

 今際の際、ふっと笑顔が消え、目にうっすら涙を湛えながら、言った。

 

 

「ああ怖かった。でもやり抜けた。みんなありがとう。ようやくみんなを好きになれた」と。

 

 

 そして最後は、満足そうな笑みを浮かべながら、老人は逝った。

 残された人々は、老人の言った意味がなんとなくわかっていた。老人が何かに駆られるようにがむしゃらだったことを知っていた。まるで何かを見ないようにしていることを知っていた。

こちらを見ているようで、何も見ていないような瞬間を感じていた。

 

 そして、死の間際に、初めてしっかり目が合ったと感じた――――――

 

 その夜、人々は、お酒を持ち寄り、老人の思い出話に華を咲かせた。

 印象的だったのは、皆の前では、いつも笑顔で泣き言一つ言わない老人が、一人の時は、落ち込んだり、泣いたりしていて、実はそれをこっそり人々が見ていたことだった。

 そして誰しも、他の誰にも気づかれないように、そっと老人を気遣っていたそうだ。何だ、お前もかという声が響くたび、皆は何だかうれしくなり、老人に思いをはせた。


 思い浮かぶのはくしゃくしゃの泣き顔と、やっぱり温かい笑顔だった―――

 

 

 

■■■■■

 

 

 

《とある神界にて》

 

 

 

 私はふとあの人材のことを思い出した。

 

 「来世では、誰のことも妬まず憎まず、誰の敵にもならず、そして僕が人を好きになりたいんです。だから誰かを傷つけそうなスキルや誰かに好意を強制するようなスキルはいりません。

 あ、でも、、、僕、すぐ自分の感情が顔にでちゃうんです。今世でも嫌いとか憎いとか、きっとずっと顔に出していて、それが余計に周りとの関係を悪くしていたと思います。これをなんとかできるスキルありませんか?」

 

 色々相談して、結局、彼が受け取ったのは、

 《人畜無害》の称号だけだった。 

 

 彼自身を強化するようなスキルも、最後に言っていた表情をコントロールするようなスキルも、ついぞ受け取ることはなった。

 

 

 「死ぬときに、やっぱりスキルのおかげだなって思ってしまいそうで。」

 


 それが彼が私に言った最後の言葉だった。彼は人を好きになれただろうか。私も彼のように、他の神を信じたい、好きになりたいと思える日はくるのだろうか。

 

 目の前で淡々と私のマイナス査定を述べる上級神を見ながら考える――――――――

 


《(―――――――――――――消滅しろ、くそ上司)》


ギロリ


《ひっ!?》

  

 

 

人畜無害  ー終わりー

ちょっとはハッピーエンドな雰囲気にかけたでしょうか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] いやー。いい話でした。心に響きますし、僕たちがあまり考えない。いや、考えようとしないし、気付こうとしない人間の一つの心が描かれています。 僕もかつて思っていました。 誰かを幸せにしたい。誰…
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