012.ウニャーバックス・コーヒー
全二話の一話目です。
「異世界にスタ〇ってありますか?」
『(・・・)』
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私は、地球の異世界転生担当職員、一応、神だ。
異世界転生担当職員とは、クライアントのニーズに合う人材を、異世界へ派遣する神級派遣事業者だ。
クライアントから人材へオファーできる異世界転生特典のうち、最低限の特典を人材に渡しつつ、気持ち良く転生してもらうのが私の仕事だ。
一般的なケースだと、基本パッケージ(記憶保持、異世界言語、鑑定《小》、成長補正《小》)辺りに、オプション機能を少しつければ、気持ちよく旅立ってくれる。
アフターフォローはしない。というか、できない。神は現世には、強く干渉できないルールになっているからだ。
今回の人材は20歳女性、大学生だ。あまり強くないお酒を飲み、帰宅途中に昏倒。頭を打ち付けて死亡か――彼女も不憫だが、親御さんは切なかっただろう。ぜひ気持ちを切り替えて、異世界で楽しく生きてもらいたいものだ。
よし、早速面談といこうか。
《はじめまして。私はあなたの異世界転生を担当させて頂く事務局員です。一応、地球における神の立場におります。》
「え??転生?異世界?神?なんなんですか?あなた誰なんですか?警察呼びますよ!!!」
ここにくる死者は、生前の想いを投影した姿で現れる。この女性の姿は生前の姿そのままだ。肩を露出させた薄い水色の膝丈ワンピースに、サンダル、肌は少し赤く、汗ばんでいる。直前まで、お酒を飲んでいた記憶が、その姿に影響しているのだろう。
《(酔って昏倒したからか、死を認識できてないようだ)》
私の言葉を聞いて、驚きもあるが、少し疑いの表情を浮かべている。
よもや、どこかに連れ込んだ悪い男でも思われているのだろうか。パニックになられても困るので、軽く神力を開放し、一瞬の威圧と鎮静を行う。
「ひっ・・・・・・・」
《びっくりさせてしまいましたね。唐突にすみませんでした。一番新しい記憶はなんですか?何をしていたか思い出せますか?》
「合コンに行って、つまんなかったから、女友達だけで二次会行って、あれ、その後店代えたんだっけ。。終電ないから朝まで飲もうってなって。途中で外の空気吸いたくなって、店を出たとこまでは覚えてます・・・」
《はい。少しお酒を飲みすぎてしまったようですね。その後、そのまま歩いて帰ろうとしていたところ、途中で意識を失われてそのまま・・・本当にご愁傷さまです。》
「(え・・・・・・)私の体、、遺体はどうなったんですか?両親には連絡が行ったのでしょうか?その・・両親の様子は?」
《幸い、、と言って良いかわかりませんが、早朝に近い時間でしたから、あなたの体は通勤途中の会社員が発見し、救急車で病院に搬送されたようです。
調べたところ、ご両親はすでに対面されておりますね。かなり憔悴されているご様子です・・・ご両親が夢に見る形ではありますが、あなたからの言葉を伝えることもできますが、いかがなさいますか?》
「―――正直まだびっくりしていて、頭がついてきてないです。でもお願いできるなら、<今まで本当にありがとう。親不孝でごめんなさい。ハム子のことお願いね>って伝えてもらえますか?」
《わかりました。ハム子というのは、飼っていたハムスターですね。》
「何で知って―――あ、神様ですもんね・・・
神様の力で生き返らせてもらったりはできないんですよね?」
一瞬驚いた表情をしたが、はっとして言い直してきた。大分落ち着いて頭が回ってきたようだ。
その後の一言は、神様死者の良くある会話ナンバーワンのフレーズ。返す言葉も決まっている。
《残念ながらできません。神にも進んだ時を戻すほどの干渉はできないんです(一人の人間のためにはという但し書きがつくが・・・)。
混乱しているところ、早速で申し訳ないですが、今後の話です。あなたには二つの選択肢があります。
一つは全てを忘れ、輪廻に還り、次の生を待つこと。
もう一つは、現世の記憶を持ち、異世界で新たに生まれ直すこと。
急に言われても判断できないと思いますが、判断に迷うのであれば、異世界に行くとをお勧めします。輪廻は誰しもかならずいつかたどり着きますが、記憶を持って異世界で転生できるチャンスが与えられることは稀です。
(稀のはずなんだけどな・・・なのになんで私、こんな忙しいんだ??)
記憶だけではなく、言語能力や、いくばくかの才能を与えて転生いただくので、現世よりは、生きやすいと感じられると思います。》
「(・・・)よくわかりません・・・」
《でしたら、これから何かしてみたいこととか、想像してみませんか?例えば、今何かしたいことありませんか?》
「・・・ス〇バに行きたいです。明日、大学の帰りに友達と、新作の柚子抹茶ショコラクリームフラペチーノ飲みにいく約束してたんです。」
《(ポンコツか私は!?未練煽ってどうする!?)》
「あ、あとは猫カフェに行きたいです。最近、大学の近くに猫カフェできたんですよ!」
ようやく明るい表情を見せた彼女は、そのあと〇タバや猫カフェ、他にも好きなカフェについて語ってくれた。
どうやらカフェ巡りが好きだったようだ。亡くなった当日も、日中は合コンに参加する友達と、カフェ巡りをしていたらしい。
そして会話は冒頭に戻る―――
「異世界にスタ〇ってありますか?」
当然、ス〇バが異世界にあるわけないと思っているのだろう。私に、不安と期待のこもった眼差しを向けながら問いかけた。
私は彼女に、非常な現実をつきつけなければならない。ふうと一息ついた後、心を決め、はっきりと答えた。
《――な、ないこともないですよ》
――――――――――――次話《異世界編》に続く。




