あこがれの人 その1
ルペスの話です。次はウルヴァの話になります。
一話でまとめたかったけど、無理でした…。
僕がこの世で一番尊敬している人は?と聞かれたら、こう答える。
レオン・ダイアモンド様だよーって。
少し前までは違ったんだ。
お父様だったんだよ。
僕のお父様はオパール侯爵で国の魔術師の一番凄い人なんだ。
魔法って、凄いんだよ。
もっと僕が小さな頃、婆やが読み聞かせてくれた物語で活躍する勇者だって、身体強化や聖剣に秘められた力は、総て魔法。狩人の解錠や鑑定も凄い魔法だよね。
皆で力を合わせて先に進んで行く冒険の旅はわくわくする。
今でも冒険物語は大好きー。
その中でも一番好きなのは、やっぱり魔術師。
多くの敵を一瞬でやっつけちゃう!
だから僕のお父様がそんな凄い魔術師だと知った時は、凄く嬉しかった。
そして僕も魔術師になりたいって、思ったんだ。
でもさ、まだ子供だからって、魔法の勉強は早いって言われたんだよねー。
他のいろんな事を勉強してからじゃないと駄目って…。
魔法は凄い力があるから、注意しないと危ないって。
そんな事分かってるのに!
だから一生懸命勉強したんだよー?
魔法って体の中にある魔力が必要だから、食べ物も好き嫌いがあっても頑張って食べたし…。野菜や苦いの嫌いなのにねー。
それでやっと僕が6歳になった時に、魔法の基礎を教えてもらい始めたんだ。
先生はお父様!
最初は基本の属性を教えて貰ったけど、本を読んでたからねー。
すぐに分かったよ。きちんと教材の本は予習したんだから!
だから、いよいよ実際に魔力を動かす事を教えてくれる事になったんだ。
魔力操作って言って、魔法をいかに上手く使えるかに関係する基礎。
どんなに魔力を持っていても、コレがしっかり出来てないと魔法が使えなかったりするんだってー。
まず体にある魔力を感じ取る所から始めたんだけど…。
これ、難しいんだー!
僕は一杯魔力はあるって、だからお父様や話に出てくる魔術師みたいになれるはずなのに…。
なんとか心臓の所にあったかい塊があるのが分かったんだ。
でも動かし方が分からない。
その暖かいものを体に巡らせるって本にもかいてあって、お父様もそう言うんだけど…全然分からない。動けーって思っても、全然動かないんだ。
1ヶ月かけても2ヶ月かけても、まったく駄目で…。
僕、もっと簡単に出来ると思ってたのに。
お父様が凄いから、僕も出来るなんて思ってたんだよ。
今考えたら、凄く馬鹿だよねー。
だけどその時は本当に辛かったんだ。
そんな時にお父様が変な図を持って、お城から帰ってきたんだ。
なんだか網で出来てるみたいな人の絵。すごく気持ち悪いのー。
人体の血管図だって。
それには心臓から(心臓ってこんな形なんだって初めて知ったよ)太い血管が出て、いっぱいそれが分かれて、足の先まで細かく血管が走ってるのが分かるんだ。
「僕もこんななのー?」
「そうだよ、ルペス。僕だってそうだよ。これを見て魔力を動かしてごらん」
「魔力は固まりだよー?無理だよ…」
こんな根っこみたいにぐちゃぐちゃしてる所に動かせないよ。
「今感じている魔力はそこにまとまってあるから塊に感じるんだ。体全体に魔力はあるんだって、覚えてるね」
「うん…」
でも一番感じられる胸の所しか僕は分からない。
「固まってると思ってる魔力はコップに入った水みたいなものなんだ。だからそこから流してあげよう。道を覚えたら、そこを流れていくよ」
道?血管が道なの?
感じてる塊は塊じゃない。
前に置いた網目のような絵をなぞってみる。太いのが首に行って肩にも行って。
「まず、ここの道に流してみよう」
お父様が指で心臓から手の先までの道を指してくれる。
それを見ながら魔力の塊をこぼす気持ちで動かしていく。
僕の体だとここ辺りかなー?
ちょっとずつちょっとずつ。塊じゃなくて流れるんだ…。
ゆっくり少しだけど流れてる!
「動いたよー!今は肩だー!」
「よし、その調子でもう少し先まで流してみよう」
そうして僕は片手の先まで魔力を流せるようになった。その後は簡単だったんだ。図を見ながら体全体まで流せるように頑張ったら、たった一日で出来るようになったんだよ。
あの苦労は何だったのー?
嬉しいけど悔しいのもあって、僕泣いちゃったよ。
その日の晩餐は僕の好物ばっかり出してくれて、お父様もお母様も使用人の皆も、おめでとうーって、お祝いしてくれたんだ。
これで僕もやっと魔術師の一歩を進んだんだ。
「旦那様、魔力の体内循環の訓練に血管の図を用いるなんて、最近は面白い学び方をしますのね~」
お母様も結婚するまでお城で魔術師をしてたから、僕が魔力の訓練に詰まっているのを心配してくれてたんだよね。そんなお母様も知らないなら最新の勉強の仕方なのかー。
「あぁ、これはレオン殿下からのアドバイスなんだよ」
「では学院での教えではないのですの?」
「感覚でやっていたものを視覚化する事で、道筋が付けられるから分かりやすいのではないかって、ね。この図もレオン殿下が下さったものなんだよ。あの年で、さすが魔法を使いこなして居られるだけあるよ。僕達がこの年まで気がついて無かった事をさらりと出してこられる」
たしかレオン王子様は僕より1つ上の7歳だったよね。
なのに魔法を使いこなしてるって、ホントなのー?
お父様はすごくレオン殿下に感心してるみたい。
悔しいけど、聞いてたら何それ?ってくらい凄すぎる。
魔法の全属性持ちで、初級の魔法なら無詠唱で展開出来る。
無詠唱って、お父様くらいじゃないと出来ないはずだよ?
魔法の熟練度が上がらないと駄目だったはずだもの。
おまけに結界も張れて身体強化も出来るから、近衛の訓練に混じって剣を振ってるとか。そこで怪我した兵の治療で治癒魔法をかけてるとか。
それが僕のたった一つ上?おかしくない?
もうお話の魔法騎士とか、そんな感じだよー!
「それにレオン殿下の婚約者候補のローゼマリー嬢が、また才能があるようでね」
レオン王子だけじゃ無くて、婚約者?の女の子も凄く魔法を使うのが上手いみたい。2人で新しい魔法を考え出してるんだって…。
さっきレオン王子は魔法騎士だと思ったけど、女の子は賢者なのかなー?凄いよ!
「婚約者って何なのー?」
「お父様とお母様のように将来結婚して、ずっと一緒に居ましょうね?っていう約束をしてる子の事を言うのよ~」
凄い王子は、凄い女の子とずっと一緒に居るんだ。物語みたいだ。
(会ってみたいなー)
それから僕はお父様に以前より、もっと魔法の事を教わるようになった。
まだ初級も初級だけど、基本が大事だって言われたからね。
本もどんどん読んでるよ。
でもそれ以上に王子様と姫様は凄いみたい。
僕はお父様に2人の話を聞くのが楽しみになった。
だって、僕のたった一つ上だけなんだよー?
それが物語の主人公みたいなんだ。聞きたいに決まってるよね?
熱心に聞いていた所為か、お父様がもしかしたら会えるかもしれないよ?って、言ってくれたんだ。
「ほんとうにー?」
「ルペスが頑張ってるからね」
僕、もっと頑張って勉強するぞー。
そして、とうとうレオン王子に会える事になった。ドキドキするなー。
僕だけじゃなく、他にルピー伯爵家の子も一緒だけど。
近衛の訓練に参加している所を見学させてもらうんだって。
初めてお父様に連れられてお城に来て、僕は本当に凄い人に出会う事になったんだ。




