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彼は王子様になれない  作者: カキノキ
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ふえた… その4

前話に出たルペスの愛称を“ルー”に変更しました。

ウルヴァの愛称とひっくり返ったら、一緒だと気付いたので。



美味しいものを食べると人って、無言になるよね。

真剣さが出るからかな。

目の前では、ひたすら夢中でケーキを食べる少年達。

集中!って感じで、ひたすらフォークを口に運んでる。

可愛い…。

食べ方にも、個性が出てるなぁ。

お行儀良く、ひとくちひとくち味わって食べてるグレアム様。

所作がとっても綺麗。まさにお茶会。

同じように一口ずつ味わって食べてるけど、フォークを口に入れては花を飛ばしそうな笑顔を浮かべるルペス様。幸せーって、顔に書いてある。

そしてカプカプと一気に食べているウルヴァ様。ケーキに全力前のめり。

お口に合ったようで、なによりだよ。

もちろん自分もしっかり味わって食べてるよ?

このふわふわの口どけと、クリームの滑らかさは堪らないわ。

家の料理人達、あなた達は素晴らしい!

そして、レオ様は…


「ロゼ、イチゴ好きだよね。はい」


目の前、じゃなく口の前に差し出されるフォーク。

赤く色づいたイチゴが刺さってる。うむ、良いイチゴだね。

じゃないよ。さっきからコレだよ。

いわゆる「あーん」をされてます。

どうしていきなり人前で始めたの?

頑張って断ろうとしたんだよ!でも悲しそうにされるとね…。一回だけのつもりが、これもあれも~と、結局食べてます。己の意志が弱すぎるわ!


「このままではレオン殿下のケーキを私が全て食べてしまいそうですわ」


だから、もう良いよね?って言うつもりだったのに。


「じゃあ、俺にロゼのをちょうだい?」


ひな鳥のように口を開けられる、レオン殿下。

つまり食べさせろとおっしゃる?2人で「あーん」を仕合いっこせよと?

じゃあ…ではなくてご自分で食べたら良いじゃない…。


「レオン様とローゼマリー様は仲が良いんだねー」


「えぇ、そうですとも!」


「いちゃいちゃしてるのは分かるけど、どうしてグレアムが自慢するんだ?」


頼む、少年達。こちらを見ずに食べる事に集中しておくれ。

素直な感想は大変恥ずかしいの!

変な所で理性が残ってるから恥ずかしいんだよー。浸りきれたら周りは見えない、うふふあははな世界に行けるのかしら?


「ロゼ?」


ちくしょー。弱いと笑えば良いよ!


「…あーん」


あぁ!やったよ!やりますよ?!それが何か?

美味しいものをレオ様に食べて欲しいもの!


「ふふふ~凄く美味しいよ、ロゼ」


「喜んでいただけるなら…もう一口要りますか?」


「うん、あーん」


グレアム様はお茶を飲みながら、優雅にこちらを見ておられるけど、残りふたりがガン見してるし!

君ら、食べるの早すぎだろう!侍女さん、すみませんが、こちら何でも良いので、お代わりお願いします~。


「レオン様、そうやって食べると美味しいのー?」


「そうだね、とても美味しいよ。でもこれは婚約者や恋人じゃないと美味しくならないから、安易にしちゃ駄目だ」


え~?なんだか偏った知識を広めてるな…。


この対象3人は婚約者がいてもおかしくない高位貴族なんだけど、『ゲーム』では居ないんだよね。遊んでいる時はルートの特長を分ける為に居ないんだろうなーと、思ってたんだけど。もしも攻略対象全員が婚約者持ちで、しかもその相手全員が性格悪い貴族令嬢達なんて、恐ろしすぎるよ。この国の教育はどうなってるのか真剣に考えないと駄目な気がする。そんなストレス溜まりまくりそうなゲームも嫌だよ。

グレアムルートはヒロインが身分差で悩んでたんだけど、一番悩まないと駄目なレオンルートは“ローゼマリー”が居たからなぁ。敵を倒すと言うか、心理的にホラーゲームのように怖かったから、身分差で悩むよりいかに悪役令嬢と対峙するかに重きを置いていた気がするわ。

そんな“ローゼマリー”を見ていたから、彼らは婚約者を作らなかったのかしらね。ならここで婚約者が良いものだなんて洗脳…げふん、思ったら彼らは婚約者を作っちゃうかもしれないのかな?


「婚約者かー」


「ひょっとしてルペス、婚約者が出来そうなのか?」


ウルヴァ様ってば!モラハラとか情報保護を無視しまくりの質問だよ。大人の事情とか色々あるのに。素直な子供って怖いわ。


「考えた事もなかったよー?でもレオン様とローゼマリー様を見てると良いなぁーって。2人でさっき言ってた“温室”魔法考えたんだよねー?」


「あぁ、そうだよ。それを考えるのに“氷”属性の研究もしたね」


「弱冷箱の改良もされてましたよね。たしか今は“雷”属性の研究もされているんですよね!」


グレアム様良く知ってるなぁ。いや、これはレオン殿下からのリークかな。


氷冷箱って言うのがあって、所謂それが冷凍庫なんだよ。凍らせたら日持ちがするわけで、氷の魔石で中の物を凍らす箱。お値段高いけど貴族の台所や高めのレストランの厨房には置かれている。あとギルドの倉庫とか。この世界はアイテムボックスはあるんだけど、時間経過があるからね。よく物語であるような料理して、そのままIN。ほかほかご飯を出して頂きますとか出来ないんだよね。

日持ちさせるのが目的だから、全部凍らせちゃえーってなるんだけど、凍っていればすぐに使えない。だから氷をまわりに敷き詰めて冷やす箱(これが弱冷箱って言う)が大抵セットになってる。氷の魔石はそれなりのお値段がするから、氷を使うのはもったいない。だったら弱冷箱を冷蔵庫みたいに出来たらね~と、なったんだよ。

氷の魔石を使わずに魔法単体で冷やすって、難しいんだよね…。

レオン殿下が前世の知識だの、魔法の改良が上手い誰かの力を借りて作ってました。うん、あのトカゲ元気すぎる。私はホントに微量なお手伝いしかしてないんだよね。だから“2人”でと言われたら、虚偽申告で土下座したい気分になるんだよ。

レオン殿下も竜も、アイデアも知識も出してるし、ちゃんと手伝ってると言ってくれるけど…君らが凄すぎるんだよ~!

ちなみに“雷”は前世の家電の話を聞いた竜が、愛する彼女に電子レンジを贈りたいとの事で、マイクロ波の研究してるの…。愛の為に生きてるわね…。


「僕も婚約者と一緒に魔法を考えるとかしたいかもー」


「だったら俺は一緒に剣を振れるヤツがいいな!」


「まだ僕は自分の事は良いですね。レオン殿下やローゼマリー嬢お2人を見てるのが、とても楽しいですから」


「ぶぅ~1人だけノリが悪いのー」


「そこは俺も!って言う所だよな?」


「僕は自分の意見を持ってるだけですよ」


前世で身近に彼が出来たとか、彼女が出来たの話題が出ると自分も欲しい!なんていう人が必ず出てきたものだけど。まさかここでもその現象が。


「俺は凄く運が良かったからね。ロゼのような素敵な人と最初に出会う事が出来た。本当に出会いに感謝してるんだ。彼女と居ると楽しいし、世界が広がるって感じかな。魔法だって剣の訓練だって、凄く意欲が湧いて来るんだ」


なんだか詐欺で無かった?運よくチャンスに当たりましたね!コレを買えば総てが上手く行きました!実績あり!みたいな事を言い出したぞ…。


「3人とも、もし婚約するなら、相手は女の子だからね。俺達男とは考え方も違うだろうし、悩みとかあったら相談して欲しい。友達として協力できると思う。ロゼも女の子から見た意見とか教えてくれると思うよ?」


それに食いついてルペス様とウルヴァ様が婚約者欲しいかも…な雰囲気を出し始めたし…。


ちらっ…とレオン殿下を見る。

レオン殿下は、『ゲーム』に対してあまり良い感じを持ってないのよね。

多分“ローゼマリー”の最後に対して怒ってくれてるんだと思うんだけど。

こちらとしてはホントに、凄く自業自得なんですよ?って言ってるんだけどね。

うん、ローゼマリー()の事を思ってくれて、怒ってくれてるのは分かる。そして万が一、強制力なんてあった場合を心配してくれてるんだと分かる。

だからって、ヒロインがレオン殿下に近づかないように、傍に居る高位貴族の彼ら3人にも婚約者を作ってしまって、遠ざけようとかしてないよね…?

まさかそんな事、狙ってないよね。婚約って、人の一生に係わる話だよ。


「ん?」


ぐはっ!にこっと輝く笑顔、頂きました~!

笑顔1つで嬉しくなれる私って、安いな!でもレオン殿下の笑顔はプライスレスだから!お値段付けれないくらい素敵だからね!





(グレアムは一旦置いておいて、ルペスとウルヴァには、まずは“友達”として、ロゼの友達にもなれる令嬢を探して紹介しよう)


ローゼマリーが思っていた事を当然考え、さらに婚約者が出来たら仲良くさせ、ヒロインを近づけさせないとレオンは考えていた。


(俺達の邪魔なんて、誰だろうがさせるものか!)


ローゼマリーの愛らしい笑顔に、誓いを新たに胸に刻むレオンだった。




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