ふえた… その1
「強烈に疲れました…」
「ロゼに同じ…」
攻略対象の1人グレアム様とのお茶会は、凄く大変だった。
貴族の同世代の子供って、皆あんなツンツンなの?
レオン殿下は前世がある所為か子供らしくないというか、こちらも中身の事を考えずに喋れる。兄ちゃんも、なんやかんや言って凄く大人びた考えで落ち着いているから、普通に喋れるんだよね。
好奇心の塊なのは分かったし、頭も凄く良いんだと分かった。
医療の話から、国の衛生状態の話へ。
グレアム様は便利な器具を作っても、貧困層が多くなれば対処が絶対的に追いつかないとの意見から、孤児院やスラムの話になって、雇用問題などにも話が広がった訳なんだけど。
8歳で政治の話をするって、あり?
貴方も転生者ですか?って聞きたかったよ。
「俺、転生でチートだと思ってたけど、甘かったよ」
「分かります…」
あれが本物ってやつか。英才教育の賜物か分からないけど、凄いわ…。
「ところで『ゲーム』で、本当に何も無かったの?」
「何も無かったとは?」
「“グレアム”と“ローゼマリー”だよ。“レオンルート”でしか“ローゼマリー”は出てこないって、言ってたよね」
「はい。現実の事を考えたら、まったく係わりが無いって言うのも、変なんですけどね」
だって、親が友達なんだよ?
それも相当仲が良いもの。
あー、“ローゼマリー”が駄目過ぎて、紹介しなかったのかな?
「それで“レオン”の時には他の攻略対象は出てこない?」
「ですね。側近候補と言っても良い方達ですから、傍にいそうなんですけどね…」
ゲームやラノベである断罪場面だと、王子やその側近が力を合わせ、悪役令嬢に今までしてきた証拠を突きつけるのがセオリーだよね。
ばれてるんだよ!ざまぁだ~!と、やる訳で。
ただ、あの『ゲーム』の断罪は、“レオン”だけだったんだよね。
急遽の断罪だったからかも知れないけど。
それでも存在が出てこないのは…もしかして“レオン”は、ぼっちだったのでは?とも思っちゃうけどね。
実は卒業パーティーは王子の義務を果たすと言って、“ローゼマリー”をエスコートする事を選んでたんだよ。だから“ヒロイン”は1人で参加。ドレスも贈れないけど、“レオン”は思いを託した指輪を贈るんだよ。
2人の思い出の花をあしらった小さな指輪。
『このパーティーを最後に、私は彼女と婚約を解消する』
そしてヒロインの手を取り、指先に口付けて希うの。
『私の最愛。どうかこの指輪で繋ぐ事を許してくれ。総てを終わらせてくる。次、会う時は覚悟しろ。離さないからな』
そして、その指輪を口付けた左の薬指にはめるのさ。
うむ、良いスチルでありましたよ。
美形の色っぽい上目づかいが、美味しいしゅうございました。
ところがパーティー直前にヒロインが攫われて、“レオン”が救出。贈った指輪が魔道具で、ヒロインの危機を知らせる物だったんだよね。それから国の影さんが大活躍。救出の後始末から、ヒロインの新しいドレスの準備に、攫ったのが“ローゼマリー”による仕業だという証拠まで、ばっちり揃えて下さる有能さ。そのまま“レオン”が『約束どおり』離す事無く、パーティーへエスコートして断罪になるのよね。余計な事をしなければ“ローゼマリー”は、エスコートは、してもらえたんだよ。
そんな訳で、“レオン”に付いてる国の諜報を使って調べた証拠を断罪に使ったんだよね。怒りを押し殺しながら、淡々と事実を述べ、“ローゼマリー”に公爵令嬢の自覚と反省を促し、婚約を破棄すると延べる。
冷静かつ事務的な所が、凄くかっこ良かったんだよね。
“レオン”に任せたらヒロインは大丈夫なんだ…って感じが、凄くしたんだよ。
まぁ、公爵令嬢に対して罪を突きつけるのに、学生が調べるよりプロの方が信頼があるし、きちんと証拠って言えそう…なんて、今は思うけど。
「うーん…」
「どうかしました?」
「グレアムって、ロゼに興味持ってたよね」
「突っかかるくらいですから、興味が無いとは言えませんが…。どちらかと言えばレオ様に興味津々だったと思います」
だってレオン殿下には凄く素直だったよ?
熱心に見詰めて、懐いてるって感じだった。
「ロゼには、そう見えたの?」
「はい…」
そんな風に聞くって事は、レオン殿下は違う意見なのかね?
「これ凄く、心配になってきたな…」
私を見ながら考え込んでるけど、どうしたんだね?頭の良い側近に転生者だとバレそうだとか?それはさすがに飛び過ぎだと思うけど…。何かボロを出しそうなのは確かに私だけどさ。
「あとは赤と緑と水色か…」
「攻略対象者ですか?」
「うん…ロゼには悪いけどね、俺だけ先に彼らに会う事になるかもね。実はオパール魔術師団長とルビー騎士団長から、面会希望が来ているんだ」
「もしかして竜様に関してですか?」
「うん、彼には人の事情に係わらせないと言ってるんだけど、興味が惹かれるのは分かるからね。代わりに俺が分かる範囲で、答える事にしようと思ってるんだ」
「国の攻防に関しては、お2人とも重要な立場ですものね」
「父親から繋がりで、将来の側近候補としてでも、顔を合わすかも知れないから…先に言っておくね」
「気を使って下さらなくても良いですのに」
「でもファンでしょ?」
うっ、確かにそうなんですけど…。
はっきり言われてしまうと、恥ずかしいよ。
「それとも憧れだけじゃないとか?」
「ファンなだけですよ~!それに一番かっこ良くて、素敵だな~って、思う人はレオ様だけですから!」
画面の向こうで見る事と現実って、私の中では違うんだよ。
「…ありがとう…ロゼに言われると、顔が嬉しくて緩んじゃうね」
コレに関しては事実だからね!顔は赤くなってるけど、胸張って言いますよ!
「ともあれ、ロゼに聞いていた情報は『ゲーム』だし年齢もあるけど、そのまま飲み込んだら駄目だって、分かったよ」
「私も注意しますわ。自分の中では、ここは現実だと思ってるつもりでも、『ゲーム』の情報に、つい頼ってますもの」
「まぁ、それも情報の1つだという事で認識していたら、構わないんじゃないかな。人はどうしたって、情報とか考え方に左右されるんだし。思い込んでいた事でも、別の見方をしたら変わる事なんて一杯あるだろうしね。柔軟な見方と考え方を身に付けるようにしたいな」
広い視野をお互い持ちたいよね~と、その日はお別れした。
私も本格的に令嬢として、お母様とお茶会に一緒に参加し始めてたから、手紙でのやりとりだけで、少し合えない期間が出来てしまった。
日常の事だけじゃなく勉強の事も手紙に書いてるから、お互い頑張ってるのは分かるんだけどね。やっぱり会いたい。
凄くたわいない言葉でもいいの。
声が聞きたいなぁ。
そんな日を過ごして、久方ぶりにレオン殿下とお会いできるという事で、登城しましたよ!楽しみで顔が緩むのを引き締めながら馬車を降りたら。
「お迎えに参りました。クリスタル公爵令嬢」
紫さんが居る~!レオ様~どうしよう?!




