貴公子はひねくれる その1
今、目の前で起こってる事を話すぜ!
いや~、一度使ってみたかったんだよね、この台詞。
………なんて、自分を誤魔化すのは止めようか…。
テンション変だよね。
分かってるんだけど、どうしてこんな事になってるか、ほんと聞いて欲しい。
ただ今薔薇が咲き乱れる城の庭で、美少年達とお茶しております。
そう、気付いて下さるだろうか?
美少年達なのです。
複数なのよ。
1人はもちろん、言わずとも知れたレオン殿下。
そしてもう1人が、ゲームの攻略対象者グレアム・アメジスト様…。
なして彼がここに居るのか?
いや、分かってるの。これエリック様の所為だよね。
フランス革命を描いた大河漫画みたいに、薔薇の花びらが舞い散るような、優雅なお茶会に参加中。
ここだけ次元が違うと言うか、異世界…前世からしたら確かに異世界だけど。
とにかくそれくらいエフェクトかかってね?な美々しい空間に居るんだよ。
まぶしいわっ!
レオ様で美少年は、かなり免疫が付いたと思ってたんだけどね。
2人揃うと、インパクトが違うんだよ。
ちなみにヒュー様は、美少年だけど可愛い属だからね。
あ~ぷにぷに天使を抱っこしたいわ。
おまけにお母様である王妃様と居られると、聖母子か!ってくらいの神々しさなのよね。
それに城に上がっている侍女さんのレベルが、これまた高い。
美人だけでなく王妃様付きだから、もちろん仕事も出来る。
家柄、美人、頭よしの素敵女子の方達は憧れるよ。
前世に転生したら、皆さん一流企業のオシャレOLさん達に生まれ変わりそう。
美しい花園は癒しの空間でもあり、良い匂いもするのさ…。
変態?変態紳士と言う言葉があるなら、こっちは変態令嬢で良いよ。
それに対して、この空間ときたら…。
「ローゼマリー嬢は、意外と奥ゆかしいのですね」
またか…。
少年よ、意外って、どういう意味かな?がさつキャラだと言いたいのかい?
確かに淑女は遠いけどさ。
がさつだからなんだと言うのかね?
「秀才と名高いアメジスト公爵令息とお話してるのですもの。緊張して当然ですわ」
にっこり。
マナーの鬼、ウェイツ夫人お墨付きの猫、もとい余所行き笑顔は、そんな事で揺るがんのだよ。
「緊張なんてするんですか?あなたは意外性の塊ですね」
向こうも、にっこり。また目、笑ってないし…。
緊張するよ?!今はしてないけどねっ。
うふふ、あはは…と、周りから見たら美少年と美少女(自分で言って辛い)達が、優雅なひと時を過ごしてるように見えてるんだろうな。
実際離れてこちらを見守っているお付の侍女さん達。
皆さん、それはもう夢見るように頬を染めておられるもの。
うん、分かるよ~。見てるだけならね。
すごく可愛くてキラキラした景色だと思うよ。
実際は、白鳥のお茶会?
見た目は優雅だけど、水面下でバタバタ。水の掛け合いしてます。
なんだかね…出会って、ずっとこの調子なのよ。
ちょっと喋ると、ちくちく。
最初はおかしいな?ツンな子なのかな?と、思ってたんだよ。
ほら悪気は無いけど無神経と言うか、言動を気をつけようよ?な人とかいるし。
でもレオン殿下に関しては普通。大丈夫。
微妙に私だけ絡まれてるの。
で、いい加減ワザと私だけ意地悪だって分かった訳よ。
いや、何故だよ?
今日会ったばかりの子に、される意味が分からないよ。
この子、どうしたら良いのですかね?
おかげでレオン殿下が笑顔なんだけど、どんどん空気がひんやりして来てるし。
いつもレオン殿下とのお茶会は、人を少し遠ざけて防音かけてるんだけど、グレアム様が参加してるからね。
魔法も無し、人も普通にしようとしたら、是非いつもどおりで…と、希望されたから、よっぽど大声出さないと、他の人達に内容は聞こえないだろうけど。
思い切って、理由を聞いてみるべき?
本当に、どうしてこうなったのかなぁ…。
まだ正式に婚約はしてないけど、候補状態より一段Upになったので、城に行く事が多くなった。妃教育の前段階みたいな課題を出されるようになったのよ。で、城の図書室を利用させてもらっているの。
クリスタル公爵家も立派な図書室があるんだけど、城の方が当然充実してるからね。
あれは図書室じゃなくて図書館だわ。
そんな使わせてもらってる所だけじゃなく、他にも王族だけが利用できる図書室もあり、もっと重要な禁書が収められていると言う場所もあるそうで、ゲームで城の内部なんて出てこなかったからね。凄くもったいない気分になってしまう。
乙女ゲームって、場面の背景だけ移り変わるものね~。
廊下1つとってもそれぞれ違って、飾り付けられてる絵画や置物を眺めて歩くのは凄く楽しい。
今日も図書室を目指して歩いてたら、珍しい人が歩いてるよ…。
城だからね、警備の問題もあるし勝手に入って来れないから、大抵同じ人が同じ場所を通る訳で、今回のように珍しく初めての誰かと行き当たるって無いのだけど。
身長は同じくらい、つまりは子供。
肩先まで伸ばされた紫の髪は毛先に行くほど、色が薄くなって綺麗なグラデーションになってる。ふんわりとした髪の毛先は緩やかに波打っていて、後ろから見るだけでも優雅に見える。
(おぉー、これは“紫の上”こと、グレアム様じゃないですか?!)
ゲームが出た当時、ネットで“ムラサキの人”とか呼ばれたんだけど、「それは不味いよw」「バラじゃないし宝石だしw」とか言われて、“紫の君”に落ち着いたんだよね。
それがファンサイトの二次創作で、グレアム(紫の上)×ヒロイン(光る君)なんて逆源氏物語調の話が出て、いつのまにか広がり“紫の上”になってしまわれたお人である。
どんな話かというと、容貌や貴族として完璧とも言われるグレアム(紫の上)は、ヒロイン(光る君)に一番愛されている。けれど彼女は、周りの攻略対象達にも愛されている。魅力的な他の男達に渡したくないのに、身分の違いから彼女と正式に夫婦になれない。互いに愛し合っているのに、どうして自分だけの人じゃないの?…その苦しみにのたうつ様を描ききった作品で、萌えました。
えぇ、読みましたよ?ちなみにR18でしたが、何か?
作者さんはグレアムのバッドルートで、あっさり身分の所為で別れるのが、納得いかない!足掻け、悩め!との熱い思いに駆られて、書かれたらしい。
まぁ、気持ちは分かる。
『ゲーム』のグレアムは凄く甘いんだけど、容赦なく切るときは切る人だったものね。何時の世でも萌えは自家発電から始まるのだね。
もう読めないのは凄く残念だけど、遠くから改めて感謝を捧げておきましょう。
そんな“紫の上”こと、グレアム様だけど。
ゲームではもちろん青年だったけど、今は子供。
後姿だけど、貴公子って感じがする!
歩いてる姿も可愛いぞ!顔がニヨニヨしちゃうわ。
声、かけて良いかな?
この方向に歩いてるんだから、目的地は一緒みたいだし、ご挨拶して良いかな。
挨拶くらいはした方が良いと思うの。
今までゲームの登場人物で会ったのは、レオン殿下だけだったからね。
有名人だよ!凄い。わくわくする。
よし、ご挨拶するぞ!
なら心持ち早足で、そうそう、あくまで品良く行かないとね。
ささっと追いつ……追い…追いつけ、ない!
おーい!
絶対、あの子分かって、さり気にペース上げてるよね?!
だってグレアム様付きの侍従さんも、こっちに気付いてるもの。
すごく申し訳なさそうな顔してチラチラ見てるし!
これ。声かけるなって事だよね。
行き先が別なら良いんだよ?
でもさ、同じなわけですよ。ここで無視とかは不味いしなぁ。
仕方ない。
距離を開けて、気付かなかった事にしようかな。
……ん?
こっちがペース落としたら、向こうも落とした?
いやいや、まだ分からない。
…うん、落としてる。
(ねぇ、あの方、歩く速さを緩められてるわよね?)
(さようですね)
クリスタル家から付いて来てくれてる侍女さん(勤続ン十年のベテラン。この人に聞けば、大抵の事は分かってしまう。名前はシリーさん)に、確認してみても、やっぱりそうだよね~と、なったんだけど。
2人して、頭に?飛ばすしかない。
何してるの?早く歩こうよ。
これ以上になったら、牛歩戦術になるじゃないか。
もうお花摘みに行くべき?
付かず離れず、そのまま距離を縮める事も無く。
結局、図書室の重厚な扉の前まで来てしまったよ。
そして扉を開ける時に、振り向いたグレアム様が言った言葉は。
「あれ、人が居たんですね。僕、気付きませんでした」
うそつけーーーー!
読んで頂き、ありがとうございます!
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