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彼は王子様になれない  作者: カキノキ
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立つ前に断つべし その4



【ビジューエル王国は豊かな国土に、さまざまな種族が共存している国です。貴族でも平民でも、それは変わりなく、互いを隣人として生活を営んでいます。他の国では迫害され奴隷とされる種族であっても、法を守り義務を果たすなら、王の庇護の元、民として生きていける国。虐げられる者達は希望と憧憬を持って、この国を語るのです】



それが教師から習ったビジューエル王国の話なんだけどね~。

子供の私が出かけられる範囲で知っている場所、屋敷や城では確かに人だけじゃなくて、色んな種族の亜人が働いてるけど、色々盛ってるんだろうな…とか思ってた訳ですよ。

対外用の宣伝文句みたいに綺麗過ぎるなって。

きっと裏にうす暗い何かあるんじゃない?と思ってました。

心の荒んだヤツで申し訳ない。


推測は間違っては無かったよね。

だけどその裏がさ…王族の病みならぬ性癖による物だなんて、誰が考える?



綺麗ごとだけで、国は作られて無いと思ってたけど。

コレはひどいと思うの。

実は自分の嫁(婿)が理由で、国がこんな感じになりました!なんて暴露は、要らなかったな。憧れも尊敬も吹っ飛ぶよ…。


「愛する者や、その者が大事とする物を守らずして、国ひとつ守れるか」


あ、はい。陛下の仰るとおりだと思います。

ただ大概の人はそれを実行出来ないと思うのよ…。

ダイアモンド家はしちゃうのね。

あとですね、ふんぞり返ってソファで長いおみ足を組んでる姿は、王様より俺様ホストみたくなってますよ?それでもカッコイイのが、悔しいな!


なになに?

王家に嫁いでくるのは人族か、魔力の関係で王族より高い魔力を持った種族が望まれる。確かに、さっき教えてもらった話から考えたら、そうなるよね。

一応、後継の事も考えてるのか。



ただ外交に行って、相手に惚れちゃった王族が王位継承権を放棄して、さっさと王家から出て行ったとか。逆に使節で来た種族に惚れたとか。

兄弟間で王位の押し付け合いもありーので、その部族を足がかりに、似た種族を取り込んで併合。合わせて土地が広がって、人族より強い兵力でまた国土が広がり、現在にいたると…。


また人族の貴族に嫁いでも、子孫達に流れる血がそうさせるのか、他種族と結婚するのをためらわないと…。

おかげで古い高位貴族ほど、他種族に対して寛容だとか…。

なんてアクティブな血だよ。もう呪われてるじゃない?


しかし、それで上手く行ってるのが怖すぎるわ。


「ロゼも正式に婚約したら、妃教育で王族の歴史を習うから。今回は一足先に始めちゃった感じだね」


「そうですね…」


隠された歴史をロマンだ、心躍らせる謎だよね。みたいに思ってたけど、違った。

現実は無情だわ。

正直は美徳と言うけどさ、少しオブラートに包む優しさが欲しかったな。


あと陛下が反対もせず黙ってたのは、私の事に関してレオン殿下が引くことが無いって分かってたからなのか…。

なんて困った人達だ。エリック様が疲れるのも分かるわ。




「ともかく、この契約はロゼが居てこそ成り立つものです」


「ローゼマリー嬢と離されないために、そこまでされますか…」


「えぇ。俺は国の安定を望みます。それがロゼの為になりますからね。あと彼女を害そうとする輩が出てこないよう、手を打つのは当然でしょ」


「…レオンも王家の者だからな。仕方なかろう」


「ありがとうございます、父上」


わぁ~許されてると言うか、諦められてる。


「あの竜は俺と意気投合したから、契約しただけなんです。今回の事は彼の意思があったからです」


「確かに巨大な力を持つ竜が神器なしで契約など、向こうが受け入れなければ到底出来ませんでしょうな」


「そうなのです、()…クリスタル公爵。彼は俺のロゼを思う気持ちを分かってくれる、素晴らしい友なのです」


レオ様、お父様を刺激しないであげて。やっと顔が落ち着いたから。


「ですから彼を軍事的にどうこう出来ませんので悪しからず。ここに居られる方なら、もちろんお分かりでしょうが。あぁ、ロゼの安全を盾にするなら、彼が動く前に、まず俺が動きますので大丈夫」


動きますのところで、潰しますって…聞こえた。

レオ様の感じをみてると全然、大丈夫じゃないよね。

お父様達がチベットスナギツネになってるもの…。

懐かしいなぁ、ググったの思い出すわ。

あの何とも言えない表情。

デフォルト顔なのに疲れ具合と悟り具合のミックスさが絶妙だった。



まぁ、私も分かったよ。

竜なんて誰もが欲しがる力は、私を介さないと制御できないと示したいわけね。

本当は違っても。


レオン殿下と黒竜の、あの仲良さは嘘じゃないもの。

けれど契約してなくても、竜と懇意にしている。それだけで相当影響は大きい。

もしかして仲良くしてるなら…って、考える人が出てくる。

だから曖昧なものだと駄目なんだ。


契約という見える形にする事で、彼ら(竜とサラさん)との繋がり(友情)を守れる。

それも凄く限定的で、契約者でも自由にならないという縛りを見せる。

王家だけじゃなく、クリスタル家も懐柔しないと駄目って厳しいわ。

他国もレオン殿下だけなら、嫁入りでなんとか出来ると考えても、条件が私じゃね。

大体「守る」って、範囲広いと思うのよ。

生命はもちろん、体に心や行動。解釈次第ではいくらでも広く出来る。

守る=傷つけない図式にして、この機会に側妃制度も無くしたいのか。


「……ゼ」


側妃…かぁ。

他国の姫だと向こうが王妃で、私がそうなるんだろうな。

レオ様が誰か別の人と…なんて考えると嫌だ。悲しいし苦しい。


恋愛物で片思いや浮気、報われ無い思いを読むたび、そんなもの捨てて新しい人見つけなよ。凄くイイ子なんだから、縋り付かなくてもイイじゃん。

作者様、どうか彼女に幸せを~なんて思って読んでたんだけど。

駄目だよ。


「ロ……?」


やっと分かったよ。

そんな簡単に動かしたり、捨てられるものじゃないんだ。

苦しくて切なくなるのに胸の奥に居座ってる。勝手に湧いてるんだもの。


「………って」


やだな、痛くて仕方ない。

想像するだけで、こんなに不安になるのに。

恋する人達は勇気あるよ。

私は…


「ロゼってば!」


「ふぁっ?!」


「大丈夫?さっきから声かけてたんだよ?」


「気付かず申し訳ありませんわ」


「それは良いんだけど。凄く悲しそうな顔してたんだよ。どうしたの?」


うわートリップし過ぎた。皆さんの心配そうな視線が居たたまれない。


「考えすぎて、少し意識が散漫になってましたの。大丈夫ですわ」


「…うん、分かった」


いやいや、ホントに何してるんだ。

こんな話し合いの席でトリップするなんて、余裕か?

気を引き締めて、これからの事を聞かないと。


そんな風に気合いを入れてる姿を、レオン殿下がじっと見つめていたのを私は気付かなかった。




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