立つ前に断つべし その2
説明回です。
なんだかイイ話でこのまま終わってしまいそうだったけど、残念ながらコレからが本番なのよね。
全員で置かれているソファに座って落ち着いた所で、改めてレオン殿下が黒竜との契約について陛下方に話された。
かなりの衝撃だろうな~とは思ってたんだけど、それを知った陛下と宰相様、お父様、全員魂飛ばしたよ…。
そうか……そこまでですか。
こちらとしては凄いとは思うんだけど、前世の記憶があるからか、いまひとつ凄さの実感が湧かないと言うか。きっと黒竜が親しみやすかったからかな。
あと、アニメや漫画で助けた強キャラが仲間になるなんて、定番な展開だから?竜って、非日常すぎて現実感薄れるわ。
逆に国王とか、この執務室に集まっている人達なんか一国を動かす訳で。凄い!って、なるのだけど…その人達が、そこまで驚くのだから、やっぱりとんでもない事態なんだよね。
ああ~レオ様のバカ。
結局、まとめて全員に説明する方が早いからって、話し合いも無しに、そのまま執務室まで来ちゃったのよ。
「ロゼに納得してもらえる理由だから。信じて」
そんな事言われたらさ、何も言えないでしょうが。
本当に信じてますからね、レオ様!
「レオン殿下…恐れながら契約内容の変更は可能でしょうか?出来るなら変更を求めます」
額を抑えながらエリック様が言われるのと一緒に、お父様も眉間を揉みながら、無言で首を振ってる。
うん、頭痛いんだよね。分かります。
陛下は…あれ?意外と冷静な感じ。落ち着いたから?
「竜との契約など英雄に匹敵する出来事です。ローゼマリー嬢を大切にされているのは、分かっていますよ。なら竜の力を殿下の為に使われる様にすれば、宜しいことでしょう?何故、わざとローゼマリー嬢を巻き込む形にしているのですか?」
「エリックの申すとおりですな。殿下の為になるよう、されるのが良いかと」
「これは十分俺の為ですよ、義父上」
「…まだ、婚約もしておりませんが…」
「申し訳ない、心が急いてしまって」
ちょっとレオ様もお父様も、変な所で対抗心出さないで。
話が進まないから。
というか、レオ様の上機嫌が止まらない。ひとり満面の笑みだもの。
「なにしろロゼに良い返事を貰いましたから浮かれてしまって。このまま神殿に駆け込んで、一気に婚約してしまいたいくらいなのです」
「レオンよ…浮かれているのは分かるが、ジャスパーを余り苛めてやるな」
「申し訳ありません」
てへっ、やっちゃった!みたいな顔で、こっち見ないで~可愛いから!
いかんよ、ローゼマリー。しっかりしなさい。
「レオ様、私もお聞きしたいですわ」
「分かったよ。ロゼは召還契約がどういうものか、もう習った?」
「いえ、詳しくは。幻獣や魔獣と魔力を媒介し、意思疎通を可能にする。そして双方の同意の上での契約がなる…くらいです」
「うん、そのとおり。それで“双方の同意”って言うのが、すごく曖昧なんだよね。もちろん契約出来る魔法の才能も必要なんだけど。はっきり言ってしまったら、力ずくでも相手を納得させたら良いんだ」
「それは…」
『ゲーム』で黒竜が縛られた隷属する呪術と同じじゃないの?
強ばった私の顔を見て思ってた事が分かったのか、レオン殿下が違うと言う。
「この場合はテイマーなんだよ。別の国や地域だと彼らは“使役獣”と呼ばれる。魔獣を養殖して、人に慣れさせた個体との契約は広く使われてるんだ」
「主に輸送運搬関連が、多いですね。馬よりも何倍も力が強いもの、足の速いものが多いですから。ただし性格や繁殖が中々難しいですから、我が国では軍の足として使っておりますよ」
エリック様も参加して教えて下さるとは。豪華な家庭教師ね。
「冒険者でテイマーしてる人は、魔獣に勝利して契約してる事が多いみたい。野生の方が戦う意思が強いから、共に戦うには良いんだろうね。もちろん勝っても、駄目な場合もあるけど」
ポ○モンと一緒と、囁かれた。
あ~勝ったら認める。嫌だったら、ボールから飛び出しちゃうと。
「そんな訳で、力が弱い魔獣だと服従状態になるから、ほぼ全面的に契約者の意思に従って働く事になる」
「なるほど。ですが幻獣や、それこそ竜などは、どうなりますの?」
思いっきり強いですが?
「同じ契約でも、サモナーになる。呼び出すのも大変だけど魔力や好物を渡して、必要な力を貸して欲しいと頼む形になるから、向こうが相手を選ぶ形になる。でも上手くいけば自分の実力以上の強いものと契約出来る」
「こちらは本当に契約者の資質に左右されますね。精霊や、妖精などは特にその傾向が強いですから。種族によっても変わりますよ。エルフは風の精霊に好かれやすいですし、ドワーフは土の精霊です」
「アメジスト公爵は風の精霊と契約してるよね?」
おぉ~エルフの血が入ってるからって事かな。
「はい、お陰で情報を集める時にとても便利ですね。緑豊かな田舎では赤ん坊が生まれると、妖精達が興味を持って近づいてくる事もあります。彼らは純粋な者が好きですから。ただ、あまりに資質のある子供が、好かれ過ぎて妖精に攫われる悲劇もあります」
ちょっとエリック様。さりげに爽やかなお顔で黒い事言い出したよ。
本当は怖いファンタジーみたいになってきたし。
「さて、今回の事。竜だけどね…正直言って在りえない」
「えぇ、まったく殿下の仰るとおりですよ。ですから…」
「アメジスト公爵、分かっていますよね。通常の契約では竜を縛れない。過去あった竜との契約は、討伐しようとしたけど神器を通じて、偶然契約出来たんですよね」
「神器ってなんですの?」
「勇者の剣だよ」
「伝説の失われた秘宝です」
「…」
危なっ、吹きそうだったわ。
頭に通販で売られていたと言う、有名RPGの“勇者の剣”が浮かんで消えない!
後でレオ様に詳しく聞こう。
「こちらの事を聞くなど、あいまいな条件なんて絶対に無理です。あの条件を付けたからこそ出来た。あと俺を守るにした場合、王族である事を理由に国の為なんて勝手な事を言って、竜を使わせたがる輩が出てくるでしょうね。また婚約が国外から殺到すると思いませんか?今でもロゼが居るのに、どうかと言ってくるのに。妻になれば竜を利用できるかもしれないと、安易に考える者が増えるのでは?」
「それは…」
「言いたくないですけど、竜を崇めている聖ドラグナ王国なんか必ず縁組を強行しようとする。というか、いい加減あの古い法を無くしましょうよ。どうせ使わないんだから」
「古い法律?」
「ああ、王は側妃を持てるってヤツがあるんだよ」
「古王国時代のものだ、当時はまだ治癒魔法や医術にしても未発達でな。寿命が短かったり戦乱の世だったり。そのため複数の妻を娶り、後継を作りやすくする法が出来たのだ。ただ1度も使われていないが」
陛下まで参戦。ありがとうございます。
そうか…知らなかったよ。陛下も王妃様だけだし、考えてもみなかった。
1度も使われてないと言っても、あるなら…もしかして使われるかもしれないんだ。
「きっと、王家に嫁がせたい者がゴリ押ししたんですよ。ダイアモンド家が複数の妻なんてありえない」
力強く言い切るレオン殿下が眩しい。嫌な気分が簡単に飛んじゃったよ。
でも“ダイアモンド家”だと無いって言い切るのは何故ですかね?
「あの、どうしてかお聞きしても?女の身から言いたくはありませんが、王家ともなれば跡継ぎの事もございますし、殿方はその…美しい方々を侍らすのは夢では?」
「マリー…一体どこの誰から、そんなろくでもない無い意見を聞いた?」
ひゃあーー!お父様から怒りのオーラが上がってる!
違います、違いますから。
レオ様じゃないから、本人がありえないって言ってるじゃん。睨んじゃ駄目―!
「本ですわ!この前、物語で後宮の話が出てくるものを読みましたの!決して、どなたかの意見ではありません!」
「ふぅ……そうだな。つい頭に血が上ってしまったが、うむ、殿下に限ってあるまい」
「当然、俺はロゼ一筋なんだから」
お互い、そうだよな。理解したぜ!みたいにレオン殿下とお父様が、無言で頷きあってる。
男の友情か何か分からないけど、戦争は無事回避されたようで何よりです。




