立つ前に断つべし その1
国王様を始め、宰相様、そして私の父であるクリスタル公爵に、時間を取ってもらえるように知らせを出したら、早速時間を取ってくださいました。
社長室ならぬ、国王様の執務室に呼び出しっすよ~。まじか。
こんな子供を呼んじゃって、良い所なんだろうか?まぁ、内容的には相応しい場所ですかね…。フットワーク軽いお兄さん方だわ。
変?不敬?あえて彼ら3人を心の中で、お兄さん達と呼んでます。
だって彼らは出会った当初、今でもギリ、アラサーだから。
前世と親が近いって、結構…精神に来ます。だ、大丈夫、人は人だし…!
なんと3人とも同じ年なの。
あの強面のお父様でさえ30半ばにも到達してないと知った…思い出した時は、本当に驚いた。彫りが深いと言え、老けすぎじゃない?
余裕で40越えてそうだったのに。
お父様の10歳の肖像画があるんだけど、兄ちゃんに似た無表情系、線の細い美少年なんだよ?なのに20代になって、がっつり強面に変貌してた…何があったんだろう…。まぁ、クリスタル公爵家って、歴代当主の肖像画を見るとね、全員強面で大柄なの。顔は整ってるのよ?ただ、こう…押し出しが強すぎると言うか。遺伝子って不思議だな~。
お父様が王立学園を卒業してすぐに、結婚したから一足早くお兄様くらいの年の子持ちだけど、国王様や、宰相様はバラバラの年に結婚してるんだよ。でもレオン様始め私も含めて、宰相様の子供も同じ年になるって…これも乙女ゲー効果かなぁ。
集まったお三方にレオン殿下から、まず黒竜と会った事や私と正式に婚約へ進みたいとの話をしてくれた。
「…ですので、私との婚約を正式に結びたく。本来は王である父上と、彼女の父であるクリスタル公爵に、まず許可を取るべきだと分っておりますが、少し事情がありまして。こうして宰相閣下も含め、報告させて頂きに参りました」
「それはめでたい知らせだ。喜んで婚約の許可をしよう。ローゼマリー、これからもレオンの事、よろしく頼む。良かったな、レオン。あぁ、この面々だ。気軽にしてよいぞ」
ビジューエル王国の国王、フィリップ・ダイアモンド陛下。いわずと知れたレオン殿下のお父様。黄金の髪、銀に金の光が散る瞳は王家の直系の証。
若いのに貫禄というか、座ってるだけで雰囲気あるわ。
この方のような方を美丈夫って言うんだろうな。
シャープな輪郭に通った鼻筋、唇は少し薄めなのに、切れ長な目が少し垂れてるせいか笑うと一気に親しみを出すのよね。
笑いかけられると、滲む男の色気が~。子供には眼に毒と言うか…素敵です!
いや~視線1つで酔えるわ。いつお会いしても、ほんと魅せる方。さすが王様。
「レオン殿下、ローゼマリー嬢、お祝い申し上げます。お2人をもっと幼い頃より見ている分、とても感慨深いですね」
そして宰相であらせられる、エリック・アメジスト様。微笑んで祝いを述べてくださる姿は、まさに華。美しい藤色の髪は背中まで流され、白皙の顔にアメジストの瞳が本当の宝石みたい。ご先祖にエルフの血が入ったというエリック様は、耳こそエルフのように尖ってないけど、典雅な美貌の持ち主。
やり手の宰相なのに、まとう雰囲気も優美で、文官の制服さえエリック様の為に作られた服のよう。きっとTシャツ、ジーパンでも上品に着こなしてしまうんだろうな。
…ヤバイ、着せたい。陛下と一緒に着て欲しい!お二方とも違うタイプの美形なんだもの。今のようなかっちりした重厚な衣装も良いけど、あえてシンプルに素材の良さを見たいっ。自分の妄想が止まりません!
「父上、アメジスト公爵、ありがとうございます。お言葉に甘えて楽にさせてもらいます。俺も本当に嬉しくて。急いで知らせにきたんですよ」
「陛下、アメジスト公爵様。祝いのお言葉、感謝いたします。至らぬところが多いですが、今後もよろしくお願いいたしますわ」
「…………」
挨拶しながら、つい素敵なお二方にどんなシャツを着せるか?ストレッチタイプなチノパンもイイ…撮影会求む~!なんて妄想してたら。
ほわぁー、お父様の顔が“なまはげ”に、なっとる…。本当に子供だと泣く怖さだよ?
お、お父様~勝手して怒ってる?
殿下と私2人子供が居るので、通常に戻ってくれないかな~。怖いよー。
「…ジャスパーよ、顔が一段と怖くなっておるぞ」
「まさに狂相というべき有様ですね。可愛い娘が嫁に行くのに、男親として思う所があるのは分りますが…」
「……娘がいないくせに、知ったような口をきくな」
「確かに我が家は、まだ息子のグレアム1人しかいませんがね。すでに候補ですが、ローゼマリー嬢は皆が認める婚約者だったのですよ?3年間も。それが正式に決まっただけでしょう。どうしてそのように衝撃を受けているのす。今更ですね」
「…お前は、ひと言言えば、倍言い返すのを止めろ」
「お互い、長い付き合いなのです。ジャスパーこそ、いい加減理解するべきです。無駄に厳つい顔をしてるだけでなく、頭まで固まったのですか。そんな事だから最近仕事が遅いのでは?あなたの堅実な仕事ぶりは確かに賞賛すべきですが、固定化しまうと…」
あら~、説教が始まっちゃったよ。
お父様ってば、どうしてグレアム様に負けると分かっていてからむかね。
仕事ならともかく、こんな事で氷の宰相様に口で勝てるわけないじゃん。タダでさえ無口なのに。
まぁエリック様も見かけが優美なのに、毒舌なのもあるんだろうけど、性格Sな人なんだよね。仕事に関しても容赦ないというか、鬼畜らしい…。
おかげで仕事も精神も鍛えられ、美しいエリック様に冷たい視線で見下されるのを喜んじゃう、新しい扉を開いた官吏の方が増えてるとか(レオン殿下談)…ブラックとはまた違った、怖い職場だわ。きっと影でファンクラブ出来てる。
「クリスタル公爵には急すぎる話と思っています。きちんと後日正式に屋敷に伺って、ご家族の皆様にもご挨拶します。どうか俺に娘さんを下さい!」
最敬礼してお父様に頭を下げるレオン殿下。
とうとうしちゃいましたか…。
ここ感動する所なんだろうけど、ワクワクして「俺、公爵に『娘さんを下さい!』って言うんだ~。好きな人の親に言いに行くのは緊張するけど、憧れだよね」と、上機嫌な姿を知ってるとね?
それに本当は畳にちゃぶ台で、三つ指付いてお願いしたいんだけど、無理だし…とも、言ってたのよね…。まさかお父様にちゃぶ台返しをさせたいの?
レオ様、誠意を見せるのにシチュエーションは、そんな盛る必要ないですよ?
とにかく気合いが入っていたレオ様の姿を思い出すと、嬉しい前に微笑ましい。
可愛いわ~。こっちも気をつけないと頬が緩むわ。
気概はともかく、王族が頭を深く下げる姿に、さすがのお父様も慌てたみたい。
「レオン殿下、臣下にそのように簡単に頭を下げてはなりません」
「簡単ではないよ。公爵の大切なご令嬢を貰うわけだから」
「よろしいのです!…殿下。私とて分っておりました」
レオン殿下に頭を上げさせるお父様が、言葉をかみ締めるように話し出す。
「出会われた時からです。ローゼマリーに対し、真摯に向き合っておられた。レオン殿下と会って、娘は変わっていきました」
確かに…そう見えるよね。
記憶を思い出したの、レオン殿下に会ってだもの。
「我が家に笑顔が増えました。総て殿下のお陰でございます。貴方ほど娘を大切にして下さる方は居りません。どうぞ娘を…マリーをよろしくお願い致します」
「お父様…」
鬼の目に涙。男泣きと言うか、涙をこらえたお父様に言葉が出なくなる。
私が“ローゼマリー”として生き始めて、厳しいようで実は黙って見守ってくれていたんだよね。兄ちゃんもそれほど喋らないけど、親子(父と兄)揃って後ろで応援してくれているって、分ったのは何時だったかな。
最初、家族としてやって行けないかも…そう前世の記憶があるだけに思っていたのに、和気藹々仲良し家族とは言えないけど、確かに家族としての絆が出来ていた。
大げさに褒めもしない、けれど静かに見てくれているのが分かる優しさ。受け止めてくれる安心感。それをこのお父様は与えてくれていたのよね。
「…私、ほんの子供ですわ。まだまだ結婚など遠い出来事です。お父様のお傍に居る時間は、たっぷりございます。それに例え嫁ごうとも、私がお父様の子供である事は変わりません。それは私の喜びで、幸せです」
うん、当初なぜ“ローゼマリー”?!マジか~なんて、思ってたのに、今はこの人達の子供で、本当に良かったと思ってるよ。
お父様もお母様も、兄ちゃんも、大好きだ。
「ぐぅっ…!マリー…」
励ますつもりが、余計に顔がくしゃって…。
もう~私まで泣きたくなるじゃない…。
大きくて分厚いお父様の手を握る。いつも私はこの手に守られてる。
エリック様が「仕方ない人ですねぇ…」と、言いながらポンポン、お父様の肩を叩いて励まして下さるし、陛下はニヤニヤされてるし…。
お父様って、意外と皆に愛されてるのよね。
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