こうして崩壊が始まった その6
自分で口下手だ…とは、思ってたんだけどね。
まさか妄想を溢れんばかりに垂れ流していたくせに、現実で1度もだよ?!
たった、ひと言の“好き”さえ、言ってないって!マジですか…。
おまけに告白してくれてから、どれだけ待たせてるの…。
これ、振られても文句言えないわよ?
まさか『悪役令嬢』って、こういう事なの?ショック大きいわ。
「レオ様…」
抱きしめていた体を離して、レオ様を見る。
ああ、やっぱり綺麗。幸せだって、華咲く笑顔。ちくしょー、見るだけで分るよ。
この笑顔を待たせてたの?なんて事してるのよ…。
バチン!
「ロゼ?!なにしてるの!」
何って、両手で頬を挟んだだけです、力いっぱいね!
思ったより痛い~。
「えぇ、なんで?…涙目だし赤くなってるよ?」
「大丈夫ですわ、気合いを入れただけです」
「…そう…ただ頬が痛そうだ」
そっと、レオ様が“治癒”をかけてくれる。さすが、全属性持ち。
「ありがとうございます」
今回の失態は、いつも甘えていたツケが回ってきたと言えるわ。
そう、私は何がしたかったの?レオ様を大事にしたいと思ってたのよね?
恋する乙女モード?に、なってたのかも知れないけど、駄目すぎる!!
確かに初めて好きになってもらって、失敗したくない。怖いと思ってた。
今だって、嫌われたくない。
自分の気持ちが、すいぶん重いって分かって、加減が分らないもの。
好きになった分、もっと怖いよ。
でも、それ以上に勇気をもらった。
あったかくて幸せで、前を向きたくなる気持ち。頑張ろうと思えるの。
だからレオ様を好きになって、ずっと見せてくれている好意に、こちらの気持ちも返したいと思ったのよ。なのに…なのに、忘れてたなんて…ありえなぃ~っ!
ローゼマリー・クリスタルよ!ここは、女を見せるべき時でしょう!
「レオン・ダイアモンド様、私は貴方が大好きです」
「…!」
「お慕いしております。長い間お待たせしてしまって、申し訳ございません。本当は出会って少しして、もう貴方の事が好きだったのです」
「ロゼ…」
「貴方のまっすぐなお気持ちに甘えて、私はそれに浸るばかり。ですが、これからは違います。レオ様が下さる気持ちに負けない物が、私の胸の内にある事…それをお伝えしますわ」
そうなのよ。させてくれない…じゃないの。すれば良いのよ。
私は私らしく、したい事をする。凄く簡単な事だった。それで彼を幸せにする。
決心した。うん、凄く気持ちが落ち着いたわ。
「…今回勝手にしたこと、もう怒ってないの?」
竜の事に関しては、後で交渉する。納得してないからね!他の事は…。
「仕方ありませんわ。確かに切っ掛けは私かもしれませんが、文官の皆様や視察の為の人員など、大掛かりに人を動かしておられるのですもの。王子として話してはいけない事が、あったのではありませんか?ならお聞きしませんし、怒れません。ただ、心配はさせて頂きたいのです」
いや~恐るべしは、乙女モードか恋モードか分らないけど、私の浮かれた頭よね。
ビンタで、目が覚めたぜ…。
レオ様は王子として数年とは言え、国の人材を動かしてるのよ。
転生者の私やレオ様ならともかく、『ゲーム』の情報なんて不確かなモノで動かせないでしょうよ。
何かがあって既に、国が調べていた?それで『ゲーム』の中に、それに重なるものがあったから便乗した?まぁ黒竜とサラさんに会わせてくれたって事は、ある程度区切りなり終わったんだろうな。
「はぁ…なんで気付くかな…」
「ふふっ…優秀なレオン殿下と一緒に城にて、お勉強させて頂いてるのですよ?少しは物事を考えるようにならなければ、一流の教師の方々が泣かれますわ」
「そうだね、君は守られてるだけの人じゃなくて、頑張りやで聡明な人なんだ。ごめんね、詳細はちょっと…。でも今回の闇ギルドの事で、いくつかの貴族が降格や当主が代わると思う」
ひえぇ~、マジか?何やったのよ…その家。
まさかと思うけど『ゲーム』で他国に通じてたとか、もうこの頃からじゃ…。
いや、知りたくない。私は何も知りません!きっと表向きの理由“闇ギルドに係わった件”で、処分されるんだろうし。
『ゲーム』は本人しか知らない事や色んな物事の裏側が出てくるけど、攻略対象に関して話を進める為に必要なモノだけだもんね…。それも特に影響受けた事とか、ヒロインと係わる小さな出来事とか、全部が出てくるわけじゃない。
攻略対象の1人、宰相の息子“グレアム・アメジスト”。彼のルートなんか、特にそういう感じだったよね。宰相様が忙しさに体を壊しかけて、彼が政務を手伝う形になるのだけど、手伝ったそれについて出てこないもの…。
あの常に余裕を持ってそうな宰相様が、体壊すほどの事って、何?今回のギルドも理由に入ってるんだろうけど、それだけじゃないよね…『ゲーム』で知ってたら、もっと役に立てたかなぁ。
「忙しくなられますの?」
「うん、俺だけじゃなくロゼもね」
「まぁ、私もですか?何か出来まして?」
あら、また自分だけでしちゃうと思ったのに…出来る事があるなら喜んでするよ!頑張るよ?
「それはもう頑張ってもらわないと、なんと言っても主役だから」
「主役ですか?」
「ロゼが大好きって…言ってくれた。これからも、なんだよね?俺との婚約の返事、くれたと思って良い?」
「あ!」
そうでした。そっちも待って貰ってたよ!これもキチンとお伝えしなければ。
「レオ様、どうか私と結婚して下さいませ。これからも貴方のお傍で生きたいのです。至らぬところがあると思いますが、共に過ごす事をお許し下さいませんか?」
「……」
あ…れ、先走り過ぎた…?決心を述べてみたんだけど。どうしよう。駄目?
花束持って膝つくとかする?あ、指輪?!
「ふ、くくっ…参った…。先、越された。悔しいけど、かっこ良かった。…危なくお婿に貰って下さいって、言いたくなったよ」
「えーっと、それは少し不味いですわね。レオ様を連れて逃げる、もしくは養うにしても、総て準備不足ですわ」
まだ、私たちは8歳だからね。知恵も力もこれから付けて、一緒に生きましょう。
「貰ってくれるんだ?」
「はい、一生大切にしますわ」
「そっか…これはもう幸せになるしかないなぁ。一緒に幸せになってね?」
「えぇ、頑張りましょう!」
「どうか、これからもよろしくお願いします。大好きだ、ロゼ」
「こちらこそ。私も大好きですよ、レオ様!」
改めて言うと照れくさいけど、嬉しいなぁ。
ほっこりしながら、やっと私はレオ様と両思いになったのだ。
黒竜の事で話し合うはずが、急遽婚約の話も合わせて、国王様や父に報告する事になった。すまないね、思い立ったが吉日とも言うしね。
やっと両思い。レオは待てる子です。




