こうして崩壊が始まった その3
黒竜と娘さんはゲームの中で間違いなく、ダントツ悲しいキャラ達だった。
分っていても、助けられない焦燥感。
画面中のそこにいても助けられないけど、誰か助けてあげてよ~!って、ゲームしながら思っていた訳ですが…。
うん、助けてくれたのです。
ええ、分かりますね。レオン殿下です。
それ、助けようぜ!と、さっくり助けてしまったのである…。
もちろん竜も女性も。
1人と一匹は、今は別の田舎で元気に暮らしているし。
過激な仕事で名を売り、力をつけていた闇ギルドは、潰れた。
まぁ、国が追っていた組織でもあったみたい。
その闇ギルドに関連して、いくつかの貴族家が色々処分されたのよね…。
「良かったね、あれ、嬉しくなかった?」
「いえ、凄く、えぇ!それはもうっ、大変喜ばしく嬉しいのですが…」
出会ってから、3年。幼児から少年にとなったレオン殿下。
それはもう凛々しい。ふくふくと愛らしかったのが、背が伸びて、闊達さと聡明さを合わせたハイブリッド美少年となっておられる。おかげで城では、年齢問わず女性の皆様から感嘆のため息と、将来はどれほど美麗な青年になるか、それはもう熱い視線を受けてます。
爽やかツーブロックの髪は、今日も整った顔を引き立ているわね。
そのお顔が、しゅん…としながら、私に聞いてくる訳ですが…。
うん…すっごく嬉しいよ?!
悲しい最後を遂げた2人、じゃない、1人と一匹が目の前で笑ってるのだから。
えーっと、本物…?
竜、でかい、顔怖い。娘さん、はつらつ、笑顔可愛い…画面よりずっと。
驚きで、カタコトなるわ!
なんだか、あの彼らの死を悼んだ思いはどうしたら?ってくらい軽―くね。
悲劇は起こることなく、終わっていたのです。
えぇ~!?ホントにいつの間に何があったの?
知らないうちに総て終わっていて「ロゼ、ほら紹介するよ」と、彼と彼女に会わされた私の驚きよ!
びっくり企画なの?……戸惑うほうが、断然大きいのですよ。
「レオ様…?一体、どうやって」
「ロゼのおかげだね」
そんなわけ無いでしょ?!どこが?私が分らないのに、おかげも無いよね?
贅沢かも知れないけど、説明してくれないと素直に喜べないのよ~!
「戸惑うロゼも、可愛いなぁ」
「褒めて下さるのは、とても嬉しいのですが…」
この方、なぜこれで和んでいられるのですかね…。
現在、レオン殿下にご招待頂いて王家所有の別荘、いわゆる夏の離宮にお邪魔してる。先々代皇太后様が愛してらしたというここは、白壁に青いタイルがはめ込まれた目に涼しく美しい離宮なのよ。モロッコにある有名建築を彷彿とさせるモザイクの繊細さに「世界遺産ですよ~!」なんて、はしゃいでたんだけど。国外の建築家をわざわざ呼んで作られた、この国では珍しい建築物で、マジで歴史的にも貴重な建物だった。
今回、どうして夏のシーズンでもなく離れたこの場所に呼ばれたのか、理由が分ったよ。離宮という事で広い庭は整えられてるんだけど、自然を多く取り入れた森のような場所が、黒竜をこっそり隠しておくのに、丁度良かったんだろうなぁ。
あ、呼び名は婚約者候補になってから変えたの。
互いが特別な存在として、殿下は私を“ロゼ”と、レオン殿下は“レオ様”です。
まぁ、そのままよね。
そこが少し殿下にとっては不満だったらしく、もっと特別感を出すために、署名を『薔薇』と『獅子』にしようかと言われたので、速攻、全力を持って阻止したよ!
2人で花札か何かになりそうだよ?お陰で、家族は皆私を“マリー”と呼びます。
ただ公式の時は、“レオン殿下”と呼ぶよ。公私は分ける!
まだ子供でもレオン殿下の優秀さは広まっていたから、隣にいる私も注目の的なのよね…。
公私の区別もつかない、殿下に相応しくない令嬢と思われたくないもの。
偉そうな事言っても、うっかり気を抜くと“レオ様”呼びしそうで、心の中では未だ殿下呼びなのだけどね…。
現実逃避してる間に、竜に見下ろされてるわ。わぁ~立派なお口。
恐竜映画だと、ここでパクッて食べられるのよね…。
「ほほう、この女子がレオンの良き人か?」
「そうだよ、すっごく可愛いでしょう!彼女がローゼマリーだよ」
「確かになかなかだが、我が愛しのサラの幼き頃も負けてはおらんぞ!」
「ちょっと竜さん!王子様と姫様に何、言ってるのよ?!私の子供の頃が、こんな可愛いわけないじゃない!あの、姫様?ホントに助けて下さって、ありがとうございます」
「いえ、私が助けた訳でなく、レオン殿下がされた事ですので感謝は殿下に」
「王子様から聞いてます。私たちの村を助けるように言って下さったのが、姫様だって。おかげで私たちの村も、竜さんも悪い組織に狙われずに済んだんだって」
一応ね、ゲーム各ルートを覚えている総てを書き出し、レオン殿下にレポート提出したのよ。その後の添削が尋問のよ…大変細かく尋ねられて、記憶を搾り出しました。もう一回知恵熱で、ぶっ倒れるかと思ったよ。
もうずいぶん前のゲームだったから、本当に苦労したわ…。
つい買ったまま出来なかった事も思い出して、殿下に愚痴ったり、慰められたり。
ぐずぐず愚痴を吐くような私に、根気強く付き合ってくれたのよね~。
ごめんよ…レオ様。
まぁ、その愚痴に竜と娘さんの話もあったのよ。
いや…だって覚えてたらね、言いたくなると思わない?
ほんの少しだけ奇跡を願うと言うか、悲しい事が起きて欲しくないなって。
見てるだけの決して手の届かない世界じゃなくて、手に届く同じ世界に居るわけよ。
願うだけ、言うだけなら無料ってやつです。
実際問題、この世界もこの国だって広くて、名前も場所も分らない1つの小さな村なんて探し出せるわけが無い。助けられないかなぁ…。
そんな事をつらつら話して…
「ロゼ…方法を考えてみるから悲しまないで。何とかするから」
「レオ様…」
「うん、助けようね!で、君の好きなその竜や女性に会おう」
話してた!全然びっくりじゃないわ…ごめんなさい、レオ様。
で、マジで何とかしちゃったんですね。そっちが驚きだけどね?!
あっさり助けたみたいに娘さんが言ってるけど、良く彼らが住んでる村とか山を特定できたなぁ。
私の話を聞いた殿下は、不作だったという所に目をつけたらしい。
あと市場に竜関係が流れているかどうか。
税関係で当然、城にはそれらの情報が全国から集まってくる訳ですよ。
そして竜が隠れ住めるくらいの山や、深い森。そんな場所に近い村を同時に探す。
これも軍事上、正確な地図を持っているのは国、つまり王家なわけで。
それらの資料を使って整頓し、零細な村と山がセットになっている場所を人海戦術で探していったそう。
「それって、思いっきり権力乱用じゃ…大丈夫なのですか?」
「ゲームだと闇ギルドが竜を手に入れていたら犯罪が増加、国に対し騒乱を起こすんだよね?だったら国家案件なんだから全然、私的でもない。乱用じゃないよ。幸いまだみたいだったから、良かったよ」
ちゃんと書類の仕分けとか確かめ算とか手伝だったし、今後の税収に対する資料として有効活用するし…と仰いますが…知ってる。それ建て前ってヤツですよね。
私が愚痴ってからずっと殿下は、そんな事してくれてたんだ…。
ただ、それだけでは、とてもじゃないけど選択肢が広すぎる。
前世に比べて自然は豊かだし、ホントに小さな村が各地に点在してるわけだしね。
あとはどの闇ギルドか目星をつけたそう。
金を貸す者が組織の末端だったという所(娘さんを売ろうとしてたものね)、資金力がある凶悪な仕事をするギルド。色々条件を絞り込んで、見当をつけたらしい。
闇ギルド同士抗争はするけど、それなりに縄張りを決めているらしい。だから場所の絞り込みに役に立ったみたい。
そしてこの年、ある地方が不作に。
「候補地がいくつかあったんだけど、『ゲーム』の起こった事から考えて、時間的におそらく今回の不作だろうと思ってね。これでかなり絞れた。ホントは不作とか起きない事が一番良かったんだけど」
「そうですわよね…それでも凄いですわ」
最終的にレオン殿下が候補地を回って、“調査”をかけ、黒竜を見つけたらしい。「出かけてくるよ!お土産待っていてね」って、視察に行ったのは知ってましたが、それか!
つまり本当のお土産は、彼らですか…。
「今更なのですが、ありがとうございます、レオ様。私は言うだけで何もしないで…本当に感謝いたします。お二方に会わせて頂いて嬉しいです!」
「俺も、君が喜んでくれるのが一番嬉しい」
レオ様の笑顔、好きだなぁ。見ると幸せになるのよね。私も喜ばせたいなぁ。
「良きかな、良きかな」
「…!」
「あ~邪魔しないで欲しいな。ロゼのこんな溶けた可愛い笑顔、レアなのに」
「おぉ、すまないな。だが惚れた女子の愛らしい姿は独り占めした方が良くないか?」
「確かにそうだね!」
竜と殿下は何言ってるのかな!?娘さんも「お2人とも仲良いんですね~」って、うわ~恥ずかしい。
すっかりレオン殿下の笑顔にやられてたよ…。
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息ぬき、暇つぶしにでもなれば…( ^-^)_旦""




