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彼は王子様になれない  作者: カキノキ
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いっしょの人 その4



お茶をお代わりしサンドイッチやお菓子を食べ比べながら、この世界はビジューエル王国を舞台にした『乙女ゲーム』の世界によく似てること。平民の主人公が王立学園に入学し、攻略対象者達5人(あと1人いる隠しキャラは学園外が主に舞台だったのよ)と、恋愛模様を繰り広げる事になること。その中で通称“レオルート”と言われる攻略対象者“レオン・ダイアモンド”のストーリーの中で婚約者候補の悪役令嬢として、“ローゼマリー・クリスタル”が出てきて断罪される事を伝えた。



「RPG系では無かったか…」


「残念ながら?」


でも、そんな世界観だからシャワーだってお風呂だってあるし、トイレは水洗なんじゃないかな。やっぱ人間一度経験した便利さを捨てれないものなのよ。冒険物で厳しい旅を満喫してるキャラでも、お風呂は絶対最初に作るなり探すもの。



「ゲームで“ローゼマリー”の処遇って、どうなるの。修道院に追放?それとも国外追放?まさかと思うけど死刑なんてないよね…」


うあぁー、これ言いたくない。

私の所為じゃないのに、怒られるのは私って理不尽じゃない?でもレオン殿下は私の事で怒ってくれてるんだから、私の所為になるのかしら?どう言うべきかしら。

マイルドにやんわり表現すべきなのは確かよね。


「あ~、死亡です。事故で死んじゃいます」


全然、マイルドじゃないよね?!

でもお隠れになったとか、儚くなったとか。色々言い方変えても一緒じゃない。遠くに行ったんだよ?なんて行ったら、絶対レオン殿下は何処か突っ込んでくるもの。この短時間でも学習した。最低限の情報のみ開示し、やり過ごすのよ!


「事故って、追放先に行く途中に死亡するとか?」


「いえ、卒業パーティーの会場で、ですね」


「…どうしてそんな所で事故なんて起こるの?それ、本当に事故?…ローゼマリー嬢、君の知ってる事をキチンと教えてくれないかな?」


問いかけになってるけど、副音声で吐けって聞こえたよ?!

意思が弱いと笑って頂いて結構です。覚えている限りの卒業パーティーでの流れとか、ローゼマリーの自爆的最後とか吐きましたよ。

厳しい注文を受け止め受け流し最後は謝る、そんな会社スキルをここでも使うのね。



「はぁ…“レオン”がそこまで追い詰めるのか」


「いえ、あれは本当に間違いなく不幸な事故ですよ?」


「分かった。今後、君は刃物は一切禁止で」


「無茶言わないで下さい。ナイフ無かったら食事出来ませんよ」


「仕方ないね。早急に箸文化を紹介すべきだな」


このままレオン殿下を野放しにした場合、クリスタル公爵家だけ箸で食事を取るようになってしまう気配を濃厚に感じさせるわ。箸だってピンヒールだって何だって凶器になれるんですよ?と説得するべきかしら。



「それで6人いる攻略対象の中で、ローゼマリー嬢の“押し”は誰なの?」


「え、そこをお聞きになるんですか?もっと国に関する内容が在るのかとか、貴族の重要そうな話を思い出すように…」


「……」


すみませんが、無言笑顔の圧力は止めて下さい。さっきの尋問が尾を引いてるのです。


「殿下、あの…憧れと実際は違うわけでして」


「うん、そうだね。誤魔化すって事は俺じゃないんだ」


「し、仕方ないじゃないですか。“レオルート”は王道過ぎるんですもの!」


「…チッ、シナリオライターめ。捻れよ。だから安直に最後に断罪なんてなるんだよ…」


いや~王道って、そういうものだし?それが楽しみと言うか。

こう…虐げられてきたヒロインが報われるというか、幸せになるのに障害だったヤツが膝を突いてガックリが、一種の様式美って事でね。

それよりも…レオン殿下ってば…。


「お口が悪くなってますよ…」


私も令嬢なんて欠片もない酷い事になってますが、舌打ちはマズイです。


「ごめん、君に好かれてないと思うとちょっとね」


「人気投票は1位でしたから!!」


「前世のモテナイ人生からしたら、まさに夢のようだね。でも俺は不特定多数の女の子より、今、君に、もてたい!」


「光栄です…」


「しっかり分かって下さい」


レオン殿下が荒ぶっておられる。

ぷりぷり怒れるショタ、かわいいけど怖い。

ここが室内だったら正座してたわ…。何か話題の変換を。そうだ!


「もてないとか言われてますが、今の殿下はお優しいですし、前世も女の子に優しくて好かれてそうですよ?」


うん、気遣いできるし自分はもてないとか言って、実は…な感じがする。


「ふ~…あの世の中、情報社会だよ?イケメンに限るって言っても、酷すぎる性格はもてないなんて、どんな野郎でも知ってるんだ。性格の良い清潔感あふれるイケメンが多数発生する中で、多少優しくたって平凡かつ頭の悪い男なんてね…塵に等しい存在なんだよ…?」


あかん~、マジレスきた!思いっきり間違ったー!レオン殿下の表情と眼が死んでるよ!再度、話題の転換を大至急で!!


「あの!ちなみに殿下って、前世はお幾つだったのでしようか?」


「…ん?18だよ」


「え…」


めっちゃ年下~~~?!

レオン殿下をショックから立ち直らせようと思ったら、私に被弾した!


「…どうしたの?」


未成年に対する条例って?淫行罪になるんじゃ?もの凄くググりたい。


「いや、あのお若いな~って…」


「今は同じ年なんだから、若いも何もないと思うよ」


「そうかもしれませんが、精神的にですね…なんというか、まずいというか」


「君が前世は成人してたって事?女性に年齢聞かないけど。俺だって高校卒業したら就職しようと思ってたんだから、社会的に成人に近いよ」


「はい…お気遣い頂きまして感謝いたします…」


ただ、それだと私の精神年齢が成長してないという残念なお知らせになるような?実際、レオン殿下の方がしっかりしてるよね…。


「まぁ冗談はここまでにしようか」


「え、冗談だったんですか!?」


むっちゃ気を使ったのに!さらりとそんな事言うの?


「半分は本気。ただゲームの“レオン”に対して…まぁ色々思う事があって…。ねぇ、ゲームの“ローゼマリー”が断罪されるのは“レオン”の話だけ?他のルートでは大丈夫なの?共通の敵みたいになってるとかない?公爵家は一体どうしてるのか出てきた?」


「私が出てくるのは“レオルート”のみです。他の攻略対象ルートはまったく出てきませんね。公爵家の動きはゲームでは出てきてません。その、“ローゼマリー”って、本当に酷い性格で、皆に嫌われてまして見捨てられてたんじゃないかなぁ…なんて?あははっ」


私が前世を思い出した時に見た屋敷の雰囲気は、酷いものだったもの。

“ローゼマリー”はよくあの中で平気だったね?!て、言いたくなる所。

その空気の原因が本人なんだから、気にならなかったのかも知れないけど。

子供の頃からこれなら、そのまま変わらず10年経ったら?勘当や幽閉になっていなかっただけで、もう見捨てられてるんじゃないかな?


「………」


「あの…」


なんだかレオン殿下が辛そうな顔で黙っちゃたわ。大丈夫?


「はぁ~~、ごめん!俺が悪い。君にそんな諦めたみたいな顔で笑わせた」


「いえ、全然、殿下に謝って頂く事ではないですよ?!思い出したら“ローゼマリー”って、ほんとに、こう…人を人と思ってないというか。天上天我唯我独尊?あ、本当は良い意味らしいですけど」


「あ、分かった、第六天魔王な感じ?」


「はい~、黄金どくろで乾杯しちゃいそうな勢いを感じさせる子ですね」


うん、ヒロインの頭骸骨片手に羽根つき扇子持って、高笑いつきで小指立ててワイン上げてるわ…。


「それは強烈だね…思い出した後、親とか周りは大丈夫だった?」


「そうですね…まぁ、今は大丈夫かな?って事で」


周りの使用人さんが少しだけ、スポイト水一滴分くらい雰囲気柔らかくなって来たのよ。これも辛抱強く辞めずに、辞めれなかったのもありそうだけど…居てくれてたからだよね。ホントに申し訳ないけど、ありがたいわ。


「うん、そうか~、凄いよ。頑張ったんだね…」



えらいえらい…って、ナデポならぬナデナデ硬直は、どうしたら良いんですかね?





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