いっしょの人 その3
本日2話目です。
ついレオン殿下と異世界すげー!で盛り上がってたら、ゲームの事を持ち出されました。そう言えば、言ってましたね。スルーされてるのかと思ってたら、人が気の緩んだ時に聞いてくるとは卑怯なり。楽しく喋って居たんだから忘れようよ…。
「ごめんね、俺としてもせっかく転生者同士で楽しく話してるのは分かってるんだけど。ただ君は『断罪される』って言ってたでしょう?自分の今の状況を考えて、勝手に悪役令嬢だって、思い込んでしまってるのだったら…まぁ良くはないけど良いんだ。それは違うって、君は素敵な女の子だって、俺が言い続ければ良い」
「言い続けるって」
妄想女子でも良いって駄目じゃん!と言いたいんですけど、真剣モードの殿下がキラキラしてる~。駄目だ、また顔赤くなってる。
「でも、違うんだよね?喋っていれば君はしっかり周りを判断できる人だって分かるよ。何か確かな事があって、そう言ってると思ったんだ。なら、それは聞くべきだと思った」
「…私は殿下に対し、そのような発言をしたと覚えておりますわ。ですが私は私自身として、これから生きていこうと思ってます。それだけでも私が知っている事柄と離れておりますし…」
こんな言い方じゃ、“ローゼマリー”に何かあるって分かるか…。
でもね、ここが私の知ってるゲームと凄く近い世界であっても、ゲームとは別物だよね。
攻略対象者の殿下も悪役たる私も前世持ち。口調だってゲームのレオン殿下は自身を私って言ってたのよ?俺じゃないもの。
ゲームの事は用心するけど、“レオルート”を言う意味ある?
「そう…じゃあ、俺がローゼマリー嬢を婚約者にするのは何も問題ないし、喜んでなってくれるよね?」
「それは…父が決める事で…」
それでもゲームは用心して行こうと思ってるのに、わざわざ婚約者候補になりたくないよ。お友達で良いじゃん。
「まだ分かってないかな。君に一目惚れしたって言ったよね。これから本当に好きになってもらおうと思ってはいるけど、俺の事は、まぁこうやって喋れるし、嫌いではない…よね?」
「それは、嫌いではないですよ?えぇ、その、仲良くしたい…と思ってるし。あの、じっと見ないで下さい…」
「ああ、良かった。なら婚約者になってから、ゆっくり口説くほうが良いと思わない?」
いや、思わない!私の心臓的にもの凄く負担がかかるから!!自分で仲良くしたいなんて言っちゃて。今、見詰められてるのでも相当な負担がかかってるから、体温上昇が凄いの。と言うか、ゆっくりって言った時、ヤバイ感じしたよ!?
「もしかして前世で好きなヤツが居て、忘れられないとか?」
「いいえ、まったく居りません!お一人様の寂しいオタクでした!!」
綺麗な笑顔で圧かけてない?
なんか、追い詰められてる感が半端ないんですが…。
「ふーん、そうなんだ…。俺も結構漫画とか読んでたなぁ」
レオン殿下が読んでいたという秘宝を探す漫画やバスケ漫画、アニメ化したラノベ話を楽しそうに話すのに、ほっとする。アレが面白かったと喋られる笑顔は自然でふんわりする。せっかくの笑顔なら、こういうのが目にも心にも絶対良いわ…。
「…でアニメは、これから盛り上がるって所を無理やりまとめた感で終わったでしょう?原作続いてるから仕方ないけど、こっちじゃ分からないから残念だよね」
「私も好きでしたよ!もう一回アニメ化して欲しかったです」
「うん、じゃあそれは後で話そうね。で、ゲームは何が好き?」
「ゲームですか…えーっと、そうですねぇ…」
「あぁ、ゲームなのか。この世界は『ゲーム』の世界であってる?」
「え、何で…」
「そんなびっくりしないで。でも、そんな顔もすごく可愛い」
「からかわないで下さいよ?!」
「君を褒めてる時は、常に本気なんだけどね。ローゼマリー嬢は顔に凄く出るから分かりやすいよ?それに自分で『悪役令嬢』って言っちゃってるんだから、ラノベか漫画か、まぁゲームかなって。話を振ったら分かりやすくゲームで動揺しちゃうし、ゲーム世界に転生かなと。で、どんなのかな?」
こいつ、何が何でも人から情報聞き出そうとしてやがる…。
「さっき言ったとおり、その…」
「俺達の中身が変わってるから、ゲームどおりにはならない?」
「はい、私はそう思っております」
「でも俺と仲良くしたいけど婚約は嫌だって言うのは、そのゲームが関係してるんじゃないの?俺は嫌だよ。似ているだけで気持ちを否定されるの。それに『断罪』なんて、君の身に良くない事が起こるんだよね。君が用心するように俺だってそれを聞いて、何もしないなんてありえない」
「……どうして、そんなに私の事を思ってくれるんですか?たった2回しか会った事ない人間ですよ?殿下にとって赤の他人じゃないですか…一目ぼれなんて言われますけど、最初にお会いした時なんて、酷い顔みせて泣きまくるし…」
自分で言っていて、ホント可愛くないわ。ぐずぐず重いし!
ここで素直にありがとうございます、嬉しいですって頼れたら、楽になるだろうな~とは思う。
ただ前世で、いい歳まで一人で生きてたから簡単に頼るって事が出来ないのよ。家族仲が希薄だったから、甘えるなんて良く分からない。
勤めて初めて出来た彼モドキは、2度遊びに行って仕事に必死になってる間に自然消滅。「地味で面白くない。女として駄目」って言われたのを聞いちゃったのよね。本当の事でも他人から言われると傷ついた。
それからは、ずっと仕事。働いている間はそこに居場所があるもの。自分の価値の無さは、誰よりも分かっているから。誰かに簡単に頼るなんて怖くて出来ないよ。
「…君が君だから?」
「ねぇ下を向かずにこっちを向いて」と、そっと顔を上げさせられる。
「ありふれてるけど、本当にそれだけなんだよ。もっと上手な言葉があれば良いんだけど。君が信じて心を預けてくれるような、そんな言葉。感激して、素敵!レオン大好きって!言ってくれそうな言葉でも良いね」
「なんですか…それは…」
呆れるやら可笑しいやらで、クスッて、笑ってしまう。レオン殿下も笑ってる。気を使ってくれてるんだろうな…。なんだか優しい気持ちになるから困るわ。
「でも俺には無理だ。だから時間が欲しい。積み重ねる事で信じてもらう為の時間。時間をかければ総て分かるなんて言わないよ。かっこ悪い所も見せるだろうし、でも少しは見えてくるものがあると思う。その為に俺との時間が欲しいんだ」
「…公爵令嬢という価値しかないですよ、私」
「それ十分、狙われるから。他のヤツにその価値だけで君に近づいて欲しくない」
ああ、もうなんでレオン殿下がそんなに拘るか分からない!
確かにローゼマリーは、キツイ顔だけど整ってる。でもこれから会う令嬢の中にでも美人で素敵な人も居るだろうし。ヒロインなんて性格も応援したくなるような子だし、顔も飛びぬけて愛らしいのよ。小動物系、まさに守ってあげたくなる。
ゲームしながら、それぞれの攻略対象者と上手くいって欲しいなって思ってたのよ。分身でもしてくれたら全員が救われるのに~なんて。
なのにね…なんだか負けた気分だわ。
とりあえずゲームはゲームでも、『乙女ゲーム』ですって告白しますか。




